声優花澤香菜の中国での勢いが目覚ましい。花澤は、『3月のライオン』川本ひなた役や『五等分の花嫁』中野一花役、『〈物語〉シリーズ』千石撫子役などで知られ、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』にも甘露寺蜜璃役で出演している。毎クールのように話題作のメインヒロインを演じ、国内でトップクラスの知名度を誇る花澤だが、中国においても人気が非常に高い存在だ。

 まず中国最大のSNS「Weibo(ウェイボー)」における公式アカウントのフォロワー数は54万人以上。中国の動画サービス「bilibili(ビリビリ)」での公式チャンネルのフォロワー数は133万人を超え、2021年1月10日に初投稿した動画は654万再生を突破した。

 この人気の理由は、花澤の代表曲のひとつ『恋愛サーキュレーション』がショート動画プラットフォーム「TikTok」などを通じて中国で大流行したことが大きい。2019年には自身初の海外公演として広州、上海の2か所でライブを開催。さらに2018年、2019年と2年連続で中国の年越し番組に出演し、俳優ジャッキー・チェンとも共演を果たした。

 昨年3月発売の写真集『How to go?』は重慶で撮りおろしたもので、花澤の活動において中国が重要な場所であることが感じられる。また、2021年1月には、中国の洗剤「arFUM」のCMキャラクターに実写で起用された。

 中国における日本人声優の人気ぶりについて、中国の声優プロダクション日本子会社である「北斗ペンギン」の取締役・カク祥海(「カク」は赤へんにおおざと)氏が解説してくれた。

「日本のアニメやゲームは、中国の1980年代〜2000年代生まれの世代を中心に大人気です。それらの業界を支える声優たちは、洗練されたアフレコ・歌唱技術で、中国でもたくさんのファンを有しています。

 近年、中国でもオリジナルのアニメやゲームの製作が盛んな中で、中国で生まれた作品に日本人声優が関わることが頻繁にあります。『TO BE HERO』、『一人之下』、『羅小黒戦記』といったアニメ、『陰陽師』、『恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜』、『原神』といったゲームなどは、その代表格と言えます。

 また、日本人声優によるイベントも注目されており、花澤さんの他にも水樹奈々さんや宮野真守さんたちがソロコンサートを開催しています。声優さん個人のトークショーなども珍しくありません」(カク氏)

 しかし、カク氏は、声優業界に身を置くビジネスパーソンとして、さらなる一手が必要だと考えている。

「中国で開催されるイベントの多くは、声優さん個人によるものです。しかし、中国で日本の声優が支持される理由の根底には、彼らが出演したコンテンツ自体の人気があります。作品絡みのイベントであれば、ファンが楽しめる内容もさらに増えますし、日本側の優れたイベント企画力も存分に発揮できるのではないでしょうか。

 もちろん、声優さんのソロイベントは比較的スケジュールが調整しやすいというメリットがあります。ですが、中国現地でさらに日本のアニメや声優のファンを増やしていくためには、個人のイベントだけでなく、複数の声優さんが登壇するような作品絡みのイベントを開催していくことが必要です。我々は中国の声優プロダクションとして、アフレコのオファーに加えて、日本の声優ビジネスの中国展開を協力していくことも務めであると感じています」(カク氏)

 花澤をはじめ、日本の声優たちは海の向こうでも大勢のファンを抱えている。作品を通して、声優ごとの「点」の盛り上がりを「線」へと繋げていくことができれば、また日本の声優ビジネスは新たな地平を切り開くのかもしれない。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)