新型コロナウイルスの感染拡大で経済状況が厳しさを増す中、勤務時間が決まっていないシフト制で働くパートやアルバイトに支援が十分届いていない実態が明らかになってきた。野村総合研究所のアンケート調査で、本来受け取れる「休業手当」を受け取っていない、と回答した女性が7割超に上っている。生活困窮者も増加しており、制度の周知・延長が課題になっている。

労働基準法では、企業の都合で雇用者を休業させた場合、企業は平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払うことが義務付けられている。この際、国が手当の一定割合を「雇用調整助成金」として補助する仕組みが元々あり、コロナ禍により、その助成率を引き上げるなどの特例措置(最大で大企業75%、中小企業100%)が設けられた。

「コロナ以前と比べてシフトが減少している」25.7%

ただ、制度はあっても企業が申請しないと手当は支給されない。コロナ禍のなかで、そうしたケースも少なくないことから、企業ではなく雇用者自身が申請すれば「休業支援金」を受給できる制度も昨夏、中小企業を対象に新たに設けられた。1日1万1000円を上限に賃金の8割を直接支給する制度で、パートやアルバイトも受給できる。

実際、コロナ禍の影響で、シフトが減少し、生活苦にあえぐ人は増えている。野村総研が2020年12月18〜21日、全国の約5万6000人のパートやアルバイトをしている全国の女性(20〜59歳)にインターネット上で調査をしたところ、厳しい実態が改めて明らかになった。「コロナ以前と比べてシフトが減少している」と回答した人は25.7%と、4人に1人に上った。「まったくシフトに入っていない」、つまり完全な休業状態にある人も4.2%いた。シフトが減少したことで、6割の人が「食費の支出を減らした」、5割強が「暮らし向きが苦しいと感じる」と答えており、状況は厳しさを増している。

休業手当については、シフトが減少したという人の中で「受け取っている」人は24.3%に過ぎず、7割以上の人が「休業手当を受け取ってない」と回答した。休業手当を受け取れることを「知っている」は42.7%と半数にも届かない。

関係者によれば、シフト制で働く場合、元々勤務時間が決まっていないことから、企業側の都合でシフトが減ったのかどうかが分かりにくいという実態がある。このため、企業は自身の責任はないととらえがちで、休業手当の支払いについて雇用者に説明しないケースが多いのだという。

休業支援金「勤め先に申請したと知られることに心理的抵抗があった」人も

休業支援金についてはどうか。アンケート調査によれば、シフトが減少している人のうち、勤務先から休業手当を受け取れない場合、雇用者が自分で休業支援金を申請できることを、「知っている」と回答した人はわずか16.1%だった。申請していない理由では、「自分が申請対象になるか分からなかった」が66.5%と3分の2に達した。また、「勤め先に申請したと知られることに心理的抵抗があった」が13.8%、「勤め先に申請を反対された・申請に協力してくれなかった」も4.3%おり、立場の弱さが申請できない状況を作っていることも明らかになった。

知らない人が多く、受給できる人が少ないのは、企業が従業員を休ませたことを認めないなど申請に協力しないためと思われるが、労組や支援団体は、従業員を休ませたことや、休業手当の不払いを認めて申請書に記入すると、国に労基法違反と指摘されるのではないかと企業が恐れているとみている。

せっかく支援策を作っても、実際に利用されないのは大問題で、「支援策を広く、分かりやすく周知したうえ、相談窓口の設置なども急務」(野村総研)なのはもちろんだが、その制度自体が2月末で期限切れになる。1月21日には非正規雇用で働く人たちなどでつくる労組「首都圏青年ユニオン」が、期間を延長や、休業支援金の対象に大企業も加えることなどを厚生労働省に要請するなど、延長を求める声は強い。

2月7日までとして出された緊急事態宣言だが、早期解除は困難との見方が強まる中、飲食業を中心にそこで働く非正規雇用の人たちの困難も増している。休業手当、休業支援金制度の周知はもちろん、延長、さらに拡充も必要だろう。