500人以上の女性の仕事と恋を幸せに導いてきたキャリアコンサルタント・小川健次が、堅実女子の皆さんの人生を上方修正する、ちょっとしたコツをお教えする連載です。

今回は、ある種の人の「強すぎる地元愛」について。順応性が高いキャリア女性は、夫の地元に移住する人も多いのですが、中には恐怖すら味わう人もいます(もちろん、円満な人もいますが…)。

現在、都内でエステサロンを経営する佐藤冬美さん(仮名・35歳)は、夫・敏行さん(仮名・37歳)の地元(北関東)を脱出して、半年前に都内に戻ってきました。夫と義実家の強い地元愛と、排他的な感情に気付いたからです。

【その1はこちら】

夫と元彼女とのラブラブ写真を見せられる

連日、地元の仲間と飲み歩く夫・敏行さん。その仲間は男女混合で、その中には夫の元彼女・茜さんもいました。

茜さんはタレントを目指したものの鳴かず飛ばずで、今から5年前、当時32歳の時に帰ってきて、地元の居酒屋でアルバイトを始めます。そこに敏行さんが入り浸っているとのことでした。

「当時、私のサロンに来たお客様から、夫・敏行と茜さんの恋の行方のことばかり聞かされていました。“東京の人は気が強いから、茜さんみたいな人のほうがいいんじゃないか”など、妻の私の前で言うんですよ」

娯楽が少ないからかもしれませんが、この三角関係は絶好の話題となり、いつでもどこでも持ちきりに。

お客様からは、「で、冬美ちゃんはどうするの?」 と、興味津々に聞かれるだけでなく、敏行さんと茜さんがいちゃいちゃしている隠し撮り写真まで見せられて、心穏やかではいられません。

ある夜、冬美さんは意を決して、敏行さんに事実の確認をしました。

「私が聞かされている噂は事実なの?」と単刀直入にぶつけたのです。すると、ギクッとした表情を見せた敏行さんは、否定も肯定もせず「今日は疲れているからもう話したくない」と言い、実家に帰ってしまったのです。

その翌日から、敏行さんは家に帰ってこなくなりました。冬美さんが、敏行さんの実家に行くと、義両親が「敏行をそっとしておいてあげて。あなたとはしばらく会わない方がいいと思う」と言うのです。

それから一週間、敏行さんとは一切の連絡が取れません。娘もいるのに、一体どういうつもりなのかと冬美さんは腹立たしささえ感じます。

“冬美、憎し”……地元の仲間たちの共通敵になってしまう

友人のすすめで、着の身着のまま地元を脱出した理由は

そしてある日の夕方、家のチャイムが鳴り、冬美さんが外に出ると、そこには義母と見知らぬ男性が立っていました。義母が男性を弁護士として紹介し、離婚にあたっての協議書を作りたいので、同意のサインをして欲しいと言います。

何を言われているのか、冬美さんにはまったく意味がわかりません。離婚協議書の素案を読むと、冬美さんに不貞行為があり、配偶者と子供への暴力行為などがあったということ。それについての慰謝料を冬美さんは請求されない代わりに、速やかに離婚し、子供を置いて出ていく、という趣旨のことが書かれていたそうです。

もちろん、不貞行為もDVもでっち上げの真っ赤な嘘。そんなものにサインできるわけがありません。とにかくその日は二人に帰ってもらい、冬美さんは、この街での唯一の友人に電話をしました。今起きたことを話し、一体何が起きているのかを確認したのです。

その友人は、30分程度で情報を集めてきてくれました。それによると、義両親は、息子・敏行さんを冬美さんと離婚させて、茜さんと結婚させたいそうです。敏行さんの友人たちの間でも、敏行さんの離婚と茜さんとの再婚は半ば既定路線になっているとのこと。

友人は「とはいえ、不倫の略奪結婚は、印象もよくないので、離婚のすべての原因は冬美さんにあることにして、体よく追い払うために、冬美さんへのハニートラップの準備も整っているみたいだよ」と教えてくれました。

さらに、「冬美さんは、東京もんだから、敏行も敏行の両親も、仲間たちも身内にはしたくないんだと思う」と語っていました。

義両親はあまりよくない仲間ともつながっているので、昼間、たった一人でサロンを経営している冬美さんの身辺の安全が危ない。目的のためなら暴力的手段も辞さないことも考えられます。

冬美さんは、友人のすすめもあり、翌日はサロンを臨時休業にして、荷物をまとめて、子供とともに、東京の実家に逃げ帰ります。最終の東京行の電車に飛び乗ったのです。

そして離婚を決意。東京の弁護士に依頼をして、現在は協議継続中だとのこと。親権についてもめにもめていましたが、茜さんが妊娠したことで、問題が片付きそうでホッとしているようです。

「でも、義両親の息がかかった不動産会社から、エステの物件の違約金500万円を吹っ掛けられたり、夫と仲間たちが娘を連れ去ろうとしたり、いろいろありました。“冬美、憎し”って気持ちが暴走して、変なことになっていたんです。もちろん、違約金はでっち上げで、連れ去りは警察に相談し、弁護士を通じて警告したらなくなりましたけどね。終わってみて考えると、そもそも私は“東京もん”ってことで、かなり警戒されていたようなんです。“東京の人のオクチに合うかしら?”なんて嫌味も言われていましたしね」 

もし、あのまま夫を信じて、地元にいたら、暴力を振るわれて、さまざまなものを奪われている可能性はゼロではなかったと言います。

「人間って、集団の意志を優先する。それは濃い社会になればなるほどそうなんですよね。私は彼らの“共通の敵”になり、“何をしてもいい存在”になった。それに気づいた時は、恐怖でした。周り全員が敵なんですから」

東京に帰ってくれば、人目も多く、防犯カメラもある。事態を俯瞰して解決策を見つけてくれる専門家も多い。

「もう、私は東京から離れません(笑)。最初はいい人だったんですけどね。娘がいれば、私は満足です。今は東京のサロンを軌道に乗せることを目標に、頑張って生きていきます」

夫の地元から、上野駅に到着した時は、ホッとしてへたり込んでしまったという。

■プロフィール

恋愛・キャリアの賢人 小川健次

恋愛カウンセラー/営業・マーケティングコンサルタントとして、年間約500名の女性をカウンセリング。恋愛とキャリアの両立のためのアドバイスが支持される。同時に、中小企業を対象とした営業、マーケティングのコンサルティングを行なう。 株式会社リエゾンジャパン代表取締役、社団法人感覚刺激と脳研究協会理事ほか、多岐にわたる活動をしている。
Blog : https://ogawakenji.com/