かなりユニークな絶版2ドア/3ドアモデルを紹介

 1990年代まで隆盛を誇っていたクルマといえば2ドア/3ドアのモデルが挙げられます。しかし、ミニバンの普及や近年のSUV人気に押され、いまでは激減してしまいました。

かなり個性的なスタイルの2ドア/3ドア車たち

 使い勝手という点で劣勢の2ドア/3ドア車は、日本のみならず世界的にも減少傾向にあり、なかでも比較的小型で安価なモデルは絶滅が危惧されているほどです。

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 そこで、いまでは絶版となった個性的な2ドア/3ドアモデルを、5車種ピックアップして紹介します。

●ホンダ「アコード エアロデッキ」

新時代のハッチバックと銘打って開発された「アコード エアロデッキ」

 ホンダは1972年に発売した初代「シビック」の大ヒットを受け、さらにラインナップの拡充を図り、1976年にはシビックよりも上級車の初代「アコード」が登場しました。

 初代アコードのボディタイプは当初、3ドアハッチバッククーペのみでしたが、後に4ドアセダンが追加され、ハッチバックとセダンの2タイプがスタンダードになります。

 そして、1985年に発売された3代目では一般的なハッチバックが廃止され、代わりにステーションワゴンをイメージさせる2ドアモデルの「アコードエアロデッキ」をラインナップ。

 リトラクタブルヘッドライトを採用したスポーティなフロントフェイスに、フロントからリアエンドへ続くロングルーフのキャビンは、それまでの国産車とは一線を画す美しいフォルムを実現していました。

 欧州では2ドア車をベースに、ステーションワゴンのボディを架装する「シューティングブレーク」というジャンルが古くからありましたが、アコード エアロデッキはまさにシューティングブレークそのものといっていいスタイリングでした。

 しかし、1989年に4代目へフルモデルチェンジすると、4ドアセダン、2ドアクーペ、5ドアステーションワゴンというラインナップに改められ、ユニークなエアロデッキは1代限りで消滅してしまいました。

●トヨタ「セラ」

まさにバブルという時代が生んだといえる「セラ」

 1987年開催の第27回東京モーターショーに出展されたコンセプトカーを、ほぼそのまま市販化したモデルが、1990年にデビューしたトヨタ「セラ」です。

 セラは同社のコンパクトカー「スターレット」と主要なコンポーネンツを共有するモデルで、最大の特徴はガルウイングドア(現在では「バタフライドア」と呼称)を採用したこと。

 ガルウイングドアの採用についての必然性はまったく無く、デザインを重視した結果の産物であり、まさにバブル景気という背景から実現したといえます。

 キャビンはフロントからリアに至るまで大きなガラス面で構成され、発売から30年を経たいまも斬新かつスタイリッシュな印象です。

 ただし、当時のガラスはUVカットやIRカット機能は採用されておらず、コンパクトカーとしては珍しく全車オートエアコンが標準装備する対策が取られていましたが、夏場の直射日光はかなり厳しかったようで、上部のガラスを覆うサンシェードが設定されていました。

 発売時の価格は160万円(東京価格、消費税含まず、5速MT)からと安価に設定されたことから、これほど特異なモデルながら販売台数は1万5000台ほどと、意外とヒットしたといえます。

●日産「エクサ」

斬新なアイデアが満載だった「エクサ」(画像は「キャノピー」)

 1978年に発売された日産初代「パルサー」は、新しい時代の幕開けにふさわしいファミリーカーというコンセプトで開発されました。

 そして、1982年に登場した2代目パルサーでは、スポーティな2ドアノッチバッククーペの「パルサーエクサ」が加わり、クーペは1986年のフルモデルチェンジと同時に日産「エクサ」に改名され、独立した車種として展開。

 ノッチバックからハッチバックへと改められたエクサでユニークだったのが、リアハッチの形状を2タイプ設定していたことで、ひとつは「クーペ」で、もうひとつはステーションワゴンのようなスタイリングの「キャノピー」をラインナップ。

 どちらのタイプもリアハッチを取り外せる構造で、リアシート上部をオープンにすることができ、フロントはTバールーフを採用していたので、開放感のあるオープンエアドライブが楽しめました。

 また、リアハッチを取り外しても簡易的な「キャンバスハッチ」をオプション設定しており、外出先での耐候性も考慮されていましたが、そもそも巨大なリアハッチを置いておく場所をどうするか、という問題もあったようです。

 なお、日本仕様のエクサではクーペとキャノピーでリアハッチの互換性がなく、お互いに載せ替えることが出来ないように設計されていましたが、北米仕様では載せ替えが可能で、異なるボディタイプが1台で実現できました。

海外にもあったユニークすぎるクーペとは!?

●ルノー「ウインド」

スタイルだけでなくルーフの開閉ギミックがユニークな「ウインド」

 ルノーはFFコンパクトカーの2代目「トゥインゴ」をベースした派生モデルとして、オープン2シーターモデルの「ウインド」を2010年に発売。日本にも2011年に正規輸入されました。

 外観は全体的に丸みを帯びた独特なフォルムが印象的ですが、特徴的だったのがルーフの開閉機構です。

 ルーフ自体はメタルトップになっており、一般的なクーペカブリオレのように屋根が折り畳まれつつトランクルームに格納される構造ではなく、ウインドの場合はトランクリッドが後方に向かって開くと、ルーフが電動で180度ほど回転して格納されるというものでした。

 このギミックは高価で複雑な機構を必要とせず、トランクの容量も影響が少ないというアイデアから採用されたと考えられ、日本での価格も255万円(消費税込)からと比較的安価に設定されていました。

 しかし、日本仕様は左ハンドルの5速MTのみだったことから、販売的には成功したとはいえず、発売からわずか2年で販売を終了。本国でも2013年に一代限りで消滅しています。

●ミニ「ミニクーペ」

特異なデザインすぎて人気はイマイチだった「ミニクーペ」

 1959年に誕生したBMC「ミニ」は、コンパクトカーの概念を変え、世界中のメーカーに影響を与えた不朽の名作です。

 しかし、英国ローバーグループの経営悪化により、ミニは2000年に生産を終了。その後2001年に、ローバーグループを買収したBMWから「ニューミニ」が発売されました。

 ニューミニはオールドミニをオマージュしたデザインと、まるでゴーカートのようなシャープな走りを継承したことで、世界的に大ヒットを記録し、2006年に登場した2代目では、レギュラーモデルである3ドアハッチバック以外にも、さまざまなボディタイプを展開することで、多様化するニーズに対応。

 オープンモデルの「コンバーチブル」、ステーションワゴンの「クラブマン」、SUVタイプ「クロスオーバー」に加え、2011年には5番目のモデル、「クーペ」が登場しました。

 クーペのボディは3ドアハッチバックをベースに、キャビン部分を一新。リアセクションはなだらかに傾斜するクーペスタイルとなり、全高が低く抑えられたルーフに合わせてフロントウインドウの角度を寝かせるなど、かなり凝ったつくりになっています。

 内装は基本的に3ドアハッチバックと同様の意匠ですが2シーター化されており、後部座席部分はすべて荷室です。

 グレードは「クーパー」、「クーパーS」、チューニングモデルの「JCW(ジョン・クーパー・ワークス)」が設定され、クーペらしくスポーティさを強調。

 ミニクーペはクイックなハンドリングとハイパワーなエンジンを搭載したFFスポーツカーという位置付けでしたが、人気となることはなく、3代目には継承されませんでした。

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 2020年11月に、スバル新型「BRZ」(北米仕様)が発表され、大いに話題となりました。2021年の秋には発売を予定し、おそらく同時期にトヨタ「86」も新型が登場すると目されています。

 しかし、このクラスの2ドアクーペは風前の灯という状況で、今後も車種が増えることは期待できません。

 日本よりもクーペの需要が高かったアメリカでも、比較的安価なモデルといえばBRZ/86以外では、いまやホンダ「シビッククーペ」くらいという状況です。

 時代によってユーザーニーズが変化することは避けられないため、安価な2ドアクーペの激減はある意味仕方のないことなのかもしれません。