コロナ禍で人と会ってコミュニケーションが取りづらいという声をよく聞きます。その影響なのかキャリアコンサルタントとして支援をする中で、「オンラインサロンに入会している学生・社会人でによく会うようになりました。

私もあるオンラインサロンに入会しています。新しいアイデアに触れたり、自分の知らなかった考え方を知ったりと、同じく起業している人たちと出会える場として有意義だと感じています。

ただ、このオンラインサロンが、時にキャリアにとって非常に危険な落とし穴となることもあるのも事実です。(文:キャリアコンサルタント 坂元俊介)

「自分はあの有名なサロンに所属しているから特別なんだ」という意識

オンラインサロンを運営し、何千、何万人の会員を集めているサロンオーナーは卓越したビジネスパーソンです。しかし、なぜか“そのサロンメンバーであるだけの人”が「自分は特別だと思い込んでいるケースを目にします。

就活支援の際に頑張ったことを必ず聞くのですが、「オンラインサロンメンバーとの交流」「サロンメンバーでのイベントの話す人がいます。

確かに、そのイベント自体は非常に面白いのですが、当の本人が何をしたかというと、「ただ参加しただけで特に何もしていない」ということも。

そう指摘すると「自分はあの有名なサロンに所属しているから特別なんだとあまり聞き入れて貰えず、案の定、どこも受かっていなかったりします。

周囲に促されて起業 → なんの成果も出せずに半年で廃業

所属するオンラインサロンによるかもしれませんが、「副業や起業が正義」という空気感がどこかあるように思います。そういった空気感に押され、本来であれば不向きな人が起業をして、大きな失敗をしてしまうケースがあります。

ある大学3年生の学生が、オンラインサロンで出会った人たちと起業の話になり、起業のアイデアを話したら「今すぐ起業すべきだ!」「普通に学生をやって就職するなんて勿体ない!」と絶賛。起業を勧められ、そのままの勢いで起業をしました。

ただこの学生は、周りが頑張っているなら頑張れるというタイプで、自律した努力が必要な起業に全く向いていませんでした。起業資金を親から借金したものの、たった半年で何の成果も残すことなく廃業してしまいました。

「勤め先はそもそも競業規定にひっかかる副業ってOKなのですか?」

「オンラインサロンが思わぬ事態を引き起こしかけた」という社会人からの相談もありました。

以前、「人材系企業に勤めているが、人材コンサルを副業にしたいという相談を受けたことがあります。
今の会社で培ったノウハウがあるため、それを副業にしたら良いとオンラインのメンバーに教えてもらったとのこと。

すでに副業の準備を始めており、お客さん候補もすでに何社かあるようで、「どんなコンサルティングをしているのか「価格帯はどれぐらいが妥当か」「お客さんとはどういう関わり方がいいのか」などの質問を受けていました。

しかし、途中で気になり、「勤め先はそもそも競業規定(競業避止義務)にひっかかる副業ってOKなのですか?」と聞きました。すると「競業規定? 初めて聞いたという感じで、そもそも副業は会社に申請しないといけないことも知らない様子でした。

すぐに会社に確認を取ってもらうと、当たり前ですが、競業避止義務に違反する副業にあたり、申請許可はおりなかったそうです。もし会社に何も言わず安易に始めていたら、懲戒解雇の可能性もあったでしょう。

オンラインサロンで出会う人たちは、向上心もあり、有能な方も多く、刺激的です。しかし彼らは“責任をもったアドバイス”をしている訳ではありません。

サロン独特の空気感に酔い、他人からのアドバイスを鵜呑みにし過ぎると、思わぬ落とし穴にハマることがあります。流されすぎず、正しくオンラインサロンを使いながら、有意義なキャリアを築いてほしいと思います。

【坂元 俊介】株式会社STORY CAREER代表取締役/キャリアコンサルタント・採用人事コンサルタント

同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化の際に、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなうSTORY CAREER事業部の責任者を兼任。2020年4月、STORY CAREER事業部の拡大に、同事業部を分社化、株式会社STORY CAREERの代表取締役に就任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。