◆ 直近の2選手はいずれも野手

 今オフも3人の選手がポスティング制度を用いてのMLB移籍を試みた。そのうちのひとり、有原航平投手(日本ハム)は、レンジャーズと2年契約を締結。その一方で、菅野智之投手(巨人)と西川遥輝選手(日本ハム)のふたりは、MLB球団との契約がまとまらず、それぞれのチームに残留することになった。

 ただ、ポスティングが不成立に終わるのはめずしいことではない。今オフ以前にも7名の選手が不成立に終わっている。ポスティングでの移籍が叶わなかった7選手の内訳を見ると、野手では中島宏之(西武/2011年)と菊池涼介(広島/2019年)のふたりがいた。

 中島はヤンキースが交渉権を獲得したものの契約が合意に至らず西武に残留。同シーズンには首位打者をわずか1厘の差で逃したものの、打率.311(499-155)と好成績を残し、ベストナインとゴールデングラブ賞を受賞。2013年シーズン終了後には海外FA権を行使し、アスレチックスへの移籍を果たしている。

 昨オフに挑戦を表明した菊池も契約には至らず、広島と4年契約を締結。MLB移籍を封印して臨んだ昨季は、打率.271(376-102)という打撃成績で、守備では二塁手として史上初となるシーズン守備率10割を達成。8年連続となるゴールデングラブ賞も受賞した。

 十分な実績を引っ提げ、球団の後押しを受けての挑戦ということもあり、残留した両選手ともしっかりと活躍。中島は海外FAでの再挑戦、菊池は複数年契約という道を選んだが、今季中の海外FA権取得が見込まれる西川はどのような決断を下すのか、今秋の去就にも注目が集まりそうだ。

◆ 再挑戦で夢を成就させた大塚と岩隈

 ポスティングが不成立に終わった投手は、大塚晶文(近鉄/2002年)、入来祐作(日本ハム/2005年)、三井浩二(西武/2008年)、岩隈久志(楽天/2010年)、真田裕貴(DeNA/2011年)の5名だ。

 大塚には入札がなく、ポスティングでの移籍が不成立に終わった後、近鉄から中日へと金銭トレードで移籍。リーグが変わっても成績は落ちず、51試合の登板で1勝3敗、17セーブ、防御率2.09と結果を残し、そのオフシーズンに再びポスティング制度を利用し、パドレスへの移籍を果たした。

 入来はポスティングでの移籍が叶わなかったものの、自由契約となってメッツと契約。ただ、残念なことにMLBでの出場はなかった。また、同一年度に2度に渡ってポスティング申請を行った三井は、いずれも入札がなく西武に残留。残留後は中継ぎとしてプレーしたものの、19試合の登板で防御率6.23と結果を残すことができずに自由契約となった。

 岩隈はアスレチックスが入札したものの、条件面で折り合いがつかず楽天に残留。その年は右肩の故障もあり17試合の登板に終わったが、6勝7敗、防御率2.42とまずまずの成績を残し、オフに海外FA権を行使してマリナーズへの移籍を勝ち取った。

 真田はポスティング不成立後に自由契約となり、そのままMLB移籍目指したものの契約を勝ち取ることはできなかった。その後、MLB移籍を諦め、開幕直前の3月になってから巨人と契約。しかし移籍後初登板で一死も奪うことができずに降板し、以降は登板機会すらないままオフには自由契約となり巨人を退団している。

 ポスティング不成立となった翌年もしっかりと結果を残した中島、大塚、岩隈の3選手は、1年遅れでMLB移籍を勝ち取った。菅野はすでに来オフの再挑戦を視野に入れ、巨人と単年契約を結ぶなど背水の覚悟で今季に臨む構え。悲願の日本一を達成し、心置きなく海を渡るのか、こちらも注目だ。

【ポスティング不成立翌年の成績】※日本人選手のみ

▼ 大塚晶文(中日)

※近鉄でポスティング申請、その後トレードで中日に移籍

[2003年]51試(43回) 1勝3敗17S 防御率2.09

▼ 入来祐作(メッツ)

※日本ハムでポスティング申請、その後自由契約でメッツと契約

[2006年]登板なし

▼ 三井浩二(西武)

[2009年]19試(13回) 0勝1敗5H 防御率6.23

▼ 岩隈久志(楽天)

[2011年]17試(119回) 6勝7敗 防御率2.42

▼ 真田裕貴(巨人)

※DeNAでポスティング申請、その後自由契約となり巨人と契約

[2012年]1試(0.0回) 0勝0敗 防御率---

▼ 中島裕之(西武)

[2012年]136試 打率.311(499-155) 本13 打点74

▼ 菊池涼介(広島)

[2020年]106試 打率.271(376-102) 本10 打点41