コロナ禍で人に会えず孤独や不安を感じている人に、オンラインでも関係性を深められる3つのポイントを紹介します(写真:KEN226/iStock)

日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。

たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。

全メソッドを初公開した『世界最高の話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』は、発売たちまち4万部を突破するベストセラーになっている。コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「現代の伝染病『孤独・孤立』を乗り切る3対策」について解説する。

「精神的な孤独」は多くの疾病の重要因子

コロナ禍で、なかなか人に会えない状態が続いています。そんななか、孤独に悩む人も増えており、ある調査では、20代の3人に1人が「孤独や寂しさ、不安を感じることが増えた」と答えていました。


自殺者も急増しており、CNNなど海外メディアが一斉に「日本ではひと月の自殺者がコロナで1年で亡くなった人数を上回った」と報道する事態となっています。経済的な理由だけではなく、こうした「精神的な孤独・孤立」についても、目を向ける必要があるでしょう。

日本では、「孤独」が「1人」や「自立」と混同され、美化されがちです。しかし、「つながりたいのにつながれない」「頼りになる人がいない」「支えてくれる人がいない」という「孤独」は精神疾患、認知症、心臓病など多くの疾病を招く重要因子と捉えられ、海外では「現代の伝染病」と危惧されています。

イギリスでは「孤独担当大臣」を設け、国を挙げてその対策に取り組むほど。コロナ禍で、世界レベルでその状況は悪化しており、各国で大きな社会問題としてクローズアップされています。

「孤独を覚える人の脳は『飢餓』と同じ状態にある」。先月、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)の脳神経学者が、こんな興味深い研究を発表しました。

孤立状態に置かれた人に、複数の人が一緒に楽しそうに時間を過ごしている写真を見せ、その脳を調べたところ、飢餓状態に置かれた人が、ピザの写真を見たときと同じ特定の脳の部位が活発化したのだそうです。

「『社会的なつながり』は、人間としての根源的なニーズ。『孤立』を余儀なくされた人は、飢えた人が食べ物を渇望するのと同じように、『つながり』を求める」と、この研究者は解説しています。

1人の時間を楽しむ「個独」とは違い、まるで「孤児」のように不安な「絶望的孤独」に恒常的に置かれた場合、人は「精神的な飢餓状態」に陥るというわけです。

「つながること」が難しい時代、社会として抜本的な「孤独対策」に取り組んでいく必要があるわけですが、身近なところで、1人ひとりが実践できる「つながりを作るコミュニケーションの工夫」について、少し紹介しましょう。

ウェブ上では対面より「25%話す量が減る」

最近増えている「ウェブ会議でのやりとり」は、対面と違い、非常に脳に負荷がかかることが知られており、海外でも「Zoom Fatigue(ズーム疲れ)」などと話題になっています。

ソーシャルキュー(社会的合図)」と言われるボディランゲージのサインなどが、オンライン上では読み取りづらいことや、ちょっとした声のずれなどがストレスの原因とされています。画面上の限られた情報量で必死に相手を理解しようとするので、脳が疲弊してしまうというわけです。

対面ではそれほど気にならない間や沈黙も、リモートでは大きな支障になります。ドイツの研究によれば、「たった1.2秒返事が遅れただけ」で、その人に対する好感度が下がったのだそうです。また、顔を出した場合、画面上で「常に見られている」という感覚も、疲弊感につながります。

ウェブ上でのコミュニケーションは、対面に比べて「25%話す量が減る」という調査もあります。

一時盛り上がったオンライン飲みも、「声が重なり、煩わしい」「話したいことが話せない」などの理由で、やめてしまった人も多いのではないでしょうか。オンラインで関係性を深めるのは、やはり容易ではないということです。

リモートが常態化していくなか、無機質になりがちなオンラインでも心のつながりを作っていくにはどうしたらいいでしょうか。

「全身の五感」で感じ取っていた情報を、「目」と「耳」だけで吸収しなければならないオンライン環境でのコミュニケーションは、次の「3つのポイント」に気をつけてみましょう。

「オンラインで関係性を深めるため」の3つのポイント

【1】しっかりと「アイコンタクト」を交わす

対面・非対面にかかわらず、コミュニケーションにおいて、「視線を交わす」というのは大きな役割を果たしています。「見つめ合う人の脳は同期する」ことが研究でわかっており、「目線を合わせること」で心理的距離が縮まるのです。

リモートでしっかりとアイコンタクトを交わすためには、カメラの位置を「自分の目線の高さ」に合わせて、しっかりとカメラを見て話すことが大切です。

注意しなければならないのは、画面上に映る相手の顔とカメラが離れている場合、画面上の相手を見てしまうと、カメラの位置とずれてしまい、あなたが視線をそらしているように見えてしまいます。

パソコンの角度や高さ、相手の顔を映し出す位置などを調整しながら、なるべく視線が合わせられるようにしてみましょう。

ウェブ会議で「顔を見せるべきか、見せないか」というご相談をよく受けるのですが、「時と場合に応じて」とお答えしています。

つねに顔出しということですと疲弊してしまう一方で、顔を見せないままだと、つながりにくいときもあります。目的に応じて、臨機応変に使い分けていく必要があるということです

【2】メールだけで済ませず「声」でもつながる

メールやウェブ会議ばかりが多用されていますが、実は「シンプルな電話での会話のほうが、メールなどと比べて関係性は深まる」という研究結果が明らかになっています。

「迷惑になるのでは」との遠慮から電話をせずに、メールをする人が多い一方で、電話での会話のほうが「関係性が強まった」と感じた人が多かったそうです。これは知らない人同士の会話でも同じ結果でした。

「電話での会話のほうが、ウェブ会議より正確に伝わりやすかった」という調査もあります。事務的な連絡ではウェブ会議やメールで済ませることが便利でも、「目線」や「声」を密に交わすことで、精神的つながりが深まるということなのです。

3つ目は、「オンライン上でのアクションは、リアルよりも『ちょっとオーバー』にすること」です。

【3】アクションは「ちょっとオーバー」に

「オンライン上では表情やジェスチャーなどが見えにくく、相手の反応が読めないのでつらい」という声をよく耳にします。

日本人はそもそも、コミュニケーションのリアクションが控えめなので、オンラインではなおさら、相手が何を考えているのかまったくわからない、と孤独感を感じる人も多いようです。

ウェブ会議では少し大げさなくらいの表情やリアクションを見せてあげることで、相手に安心感を与えることができます。具体的には、「うなずいてあげる」「笑顔を見せる」「手を振る」などが効果的です。「対面の1.5倍増し」ぐらいのオーバーアクションを心がけてみましょう。

顔が暗いと、表情も見えにくくなります。リングライトを用いると、映りが10倍よくなり、見た目が若々しく、エネルギッシュになるだけではなく、豊かな表情で相手にも伝わりやすくなり、一石二鳥です。

「弱いつながり」でも「大きな価値」がある

例年なら、この季節は、友人や家族や親戚と楽しく時間を過ごすはずですが、それもなかなかままならない年の瀬となりそうです。

社会学には、「家族や親友、同じ職場の仲間のような『強いネットワーク』(強い紐帯)よりも、ちょっとした知り合いなどの『弱いネットワーク』(弱い紐帯)が価値ある情報伝達には重要である」という理論があります。

孤独の時代には、そういった「弱いつながり」であっても、自分の存在を認めてくれる人がいてくれるだけで、癒やされる瞬間があるのではないでしょうか。

近くのコーヒーショップの店員や近所の人などとの「小さなつながり」のなかで、「こんにちは」「おいしかったです」「ありがとうございました」「お元気で」「お気をつけて」といった、何気ない短い会話や声掛け、会釈で心が温まることもあります。

「1人でいいよ」ではなく、「あなたは決して1人じゃないよ」。そう声を掛け合える社会であってほしいものです。

「話し方」を変えれば、「人生」が変わる。リモート時代だからこそ、「話し方」が仕事にも人間関係にも、さらに重要になる。私はそう確信しています。