Netflixのドラマ『ザ・クラウン』でも描かれそうな事件が、実際に起きていたことが明らかになった。バッキンガム宮殿で働いていたスタッフが、ほかの職員の所有物や宮殿内のショップで販売されている商品など数多くの品を盗み出し、ネットオークションサイトで売却していたという。

ウェストミンスター治安判事裁判所で開かれた裁判で有罪を認めたのは、バッキンガム宮殿の配膳係として働いていたノース・ヨークシャー州スカーバラ出身のアダモ・カント被告(37)。

カント被告は裁判で、2019年11月11日から2020年8月7日までに起きた3件の盗難事件について有罪を認めている。『BBC』によると、被告には後日、ロンドンのサザーク刑事法院で判決が言い渡される予定。

裁判で明らかにされたのは、被告がおよそ9カ月の間に、宮殿内のギフトショップからだけでも77点という驚くべき数の品々を盗んでいたということ。新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けるなか、被告はもともと立ち入りを許されていなかったエリアにも、侵入することができたという。

被告が宮殿の職員たちのロッカーやクイーンズ・ギャラリー・ショップ、エリザベス女王の次男アンドルー王子用の倉庫などから盗んだ“相当の数”の品々には、職員に授与されていた勲章や、ウィリアム王子とキャサリン妃のサイン入りの写真、ドナルド・トランプ米大統領が国賓としてイギリスを公式訪問した時に開かれた晩さん会のフォトアルバム(1500ポンド、約21万円相当)なども含まれていたそう。

さらに被告は、盗み出したそれらの品々を実際の価値を大幅に下回る値段で売却していた。サイモン・モーガン検事によれば、これらの品の価値は、およそ1万〜10万ポンド(140万〜1400万円)。だが、被告が犯行を繰り返して手にしたのは、合計7741ポンド(約108万円)だったという。

カント被告は裁判で、王室のスタッフのなかでも最上級のポジションに就くトニー・ジョンストン=バート元海軍中将に授与された「バス勲章コンパニオン」を盗み、オンラインで350ポンド(約4万9000円)で売っていたことを認めている。

ジョンストン=バート海軍中将が発表した声明によると、勲章が紛失していることに彼が気付いたのは、毎年恒例のエリザベス女王の公式誕生日のイベント「トゥルーピング・ザ・カラー」が行われた時。その後、宮殿のほかのスタッフから、勲章がネットオークション・サイトに出品されていたことを聞いていたという。

被告はまた、リチャード・サイクス元陸軍少将のロッカーにあった「ロイヤル・ヴィクトリア勲章コマンダー」も盗んでいた。

カント被告は現在、条件付きで保釈中。有罪が確定すれば、実刑判決を受ける可能性がある。判決の内容とともに、不当な価格で売却された盗品が王室や持ち主たちの手元にきちんと戻るのかも、気になるところ。

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