グランドスラム3度優勝のアンディ・マレー(イギリス)は、2014年から2016年まで元世界女王アメリー・モレスモー(フランス)をコーチとしていた。そのことはただ彼女の性別ゆえに、メディアやテニス関係者らからそれまでと異なる扱いを受けた、とマレーは感じている。伊ニュースサイトUBI Tennisが伝えた。


現在でも、男子のトップ選手が女性コーチを採用するケースは稀だ。当時、マレーはグランドスラムで2度の優勝と2012年のオリンピックの金メダルへと導いてくれたコーチ、イワン・レンドル(アメリカ)と袂を分かったばかりだった。


「僕が女性コーチの採用を検討していると報道され始めると、他の選手やコーチからメッセージを受け取るようになった。“君がそんなことを言ったなんて信じられないよ。今度は犬を採用することを検討しているとでも言ってみれば”とか」とマレーは語った。


現在33歳のマレーは、今までのコーチの誰よりも、モレスモーはメディアから厳しい扱いを受けていたと感じている。モレスモーがコーチを務めていた間に、マレーは自身初のクレーコート大会での2度の優勝も含め、7大会で優勝を飾っている。しかし、グランドスラムでの優勝はなかった。2人は“双方の合意”のもと、師弟関係を解消した。


「テニスは個人競技だから、それまでは僕が負けたことをコーチのせいと言われたことなどなかった。なのにアメリーがコーチになった途端に、僕の負けは彼女のせいと言われるようになった。彼女がコーチを務めている期間にグランドスラムで優勝できなかったのは僕の後悔の一つさ。多くの人々に、僕がそれを達成できなかったことが失敗と見なされた」


「彼女はただ女性であるというだけの理由で、厳しい目で判断されていたと感じている」とマレーは結論付けた。


だがその経験がモレスモーを男子テニスの世界から遠ざけることにはならなかった。マレーの後、彼女は家庭の事情で今年の10月に辞任するまで、ルカ・プイユ(フランス)のコーチを務めた。またモレスモーは、男子の国別対抗戦「デビスカップ」のフランスチームのキャプテンに選ばれたこともあったが、プイユのコーチとしての仕事を優先してキャプテンの座は辞退している。


ATPによると、年末ランキングトップ20の選手の中で女性を主なコーチとして採用しているのはたった1人。世界12位のデニス・シャポバロフ(カナダ)のコーチは、母テッサさんとミカエル・ユーズニー(ロシア)が務めている。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「バトル・オブ・ブリッツ・チーム・テニス」でのマレー
(Photo by Julian Finney/Getty Images for Battle Of The Brits)