タクシーに定期券と回数券、そして時間帯により変動する迎車料金の導入が可能になります。駅やバス停のように区間が定まっていないタクシーに導入する定期券類、どのようなイメージなのでしょうか。

定期券=1か月、3か月とは限らない?

 国土交通省が2020年11月26日(金)、タクシーの「一括定額運賃」および「変動迎車料金」を導入し、11月30日(月)から申請受付を開始すると発表しました。

 このうち「一括定額運賃」とは、「定期券/回数券」と説明されています。どのようなものなのか、国土交通省旅客課に聞きました。

――タクシーの定期券、回数券とはどのようなものでしょうか?

 たとえば自宅から病院までといった区間を定め、それを複数回乗車した際の運賃を先払いすることが可能になります。たとえばその区間の運賃が500円で、10回利用することを想定し、5000円を一括でいただく、といったことが回数券の概念ですが、事業者の判断で一括運賃を割り引くことができます。

 定期券は、期間を定めてその区間を乗り放題にするという考えです。こちらも、一括運賃の割引率や期間は事業者が設定できます。つまり、必ずしも1か月定期や3か月定期といった形にはなりません。


タクシーのイメージ(画像:写真AC)。

――それは紙のチケットなのでしょうか、それともスマートフォンなどを活用したデジタルのものなのでしょうか?

 どちらも想定しており、決まりはありません。まずは紙チケットなどアナログな方法から導入するのでは、と思われますが、いろいろな創意工夫が生まれるでしょう。

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 定期券に期間はない、ということは、1日券のような設定も可能ということになります。国土交通省は効果として、通勤などの継続利用に便利であることのほか、「MaaSにも資する」「他の交通モードとも連携した観光用フリーパス等も推進」といったことを挙げています。

 MaaSは「Mobility as a Service」の略で、様々な移動(モビリティ)を一つのサービスとして捉え、利用者に提供する概念です。様々な交通や観光サービスを連携させたスマートフォンアプリなどもMaaSの一つとみなされており、これにタクシーの定期券(あるいは1日券など)を組みこむといったことも考えられるでしょう。

変動迎車料金とは?

 もう一つの変動迎車料金についても聞きました。

――変動迎車料金とは何でしょうか?

 利用の多い時間帯に迎車料金を高く、閑散時間帯に低くするといったことが可能になります。スマホアプリを通じた配車が普及したこともあり、朝の通勤時間帯や雨の日にタクシーが捕まりづらいといったことが起きています。こうした時間帯に迎車料金を高くすれば、本当に必要な人が利用しやすくなったり、また14時や15時頃といった利用の少ない時間帯に料金を下げることで、利用促進につながったりします。

 なお、こちらもアプリによる配車でも、電話などによる配車でも適用できるものです。

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 2020年現在、新型コロナウイルスの影響で夜の人出が減った一方で、通勤にタクシーを使う人が増えていることが明らかになっています。タクシー業界からはむしろ「朝のほうが忙しい」といった声が聞かれ、そのために運転手のシフトを変える動きも見られます。アプリ配車にも適用されるという変動迎車料金は、そうした状況に何らかの形で影響するかもしれません。

 なお、これら制度は各事業者が国へ申請し、国が審査・認定することで可能になるといいます。審査期間はおおむね1か月とのこと。11月30日(月)に申請の受付を開始し、早ければ1か月程度、つまり年末年始頃から実際のサービスが始まるといいます。