7月に3カ月半遅れで開幕した2020年シーズンも、超過密日程をこなしてついに最後の3連戦を迎えた。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて開催地が大幅に変更されたイレギュラーなシーズンは、ここ数戦だけでもニュルブルクリンク、アルガルベ、イモラ、イスタンブールと、馴染みのないサーキットでのグランプリが続いた。


今シーズン最後の3連戦に臨むレッドブル・ホンダ

 そんななかで、第15戦バーレーンGPは久しぶりに迎える"一般的な"グランプリ週末だ。

 サーキットもデータが豊富なら、路面コンディションも気候コンディションもいつもどおりで、レース週末も3日間を通して行なわれる。イレギュラーだらけの2020年シーズンのなかで、9月末の第10戦ロシアGP以来、約2カ月ぶりに迎える普通のグランプリなのだ。

 前戦トルコGPでは、極めて滑りやすい路面、低温、雨で多くのチームが翻弄された。なかでもレッドブル・ホンダは、金曜からいい仕上がりを見せていたにもかかわらず、雨の決勝でいくつものミスを犯して自滅してしまった。

「金曜はよかったし、土曜の途中までは順調だったのに、日曜だけがうまく行かなかった。それにはたくさんの理由があったけど。僕はスピンでフラットスポットを作ってしまったし、路面が乾いていくなかでラインが1本しかなく、抜くこともバトルをすることもできなかった。リアタイヤが他車よりもすぐに終わってしまったし、スリックタイヤに交換できるほど乾きもしなかった」(マックス・フェルスタッペン)

 チームとして多くの反省点が噴出したことは事実だが、それはイレギュラーな環境下での話だ。バーレーンにやってくると、いつもの変わらぬ風景が広がっている。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「寒いヨーロッパからバーレーンに来て、雰囲気は全然違いますし、温かいですし、雨が降ることもない。天候的にも安定した3日間になるでしょうから、新しいシーズンのような気持ちで(前戦の失敗を)引きずらずに淡々と、かつ気合いを入れ直して臨んでいます。技術的には過去のデータをダイレクトにフィードバックできますから、心強いところはあります」

 イレギュラーなグランプリでは、各チームの臨機応変さや対応力が問われてきた。だが、レギュラーのグランプリでは実力のすべてが問われることになる。

「レースを振り返って、どこがうまく行かなかったか、悪かったか、次に向けてどうしようかというのは、当然ながらいろんな領域について毎晩やっています。車体、パワーユニット、車体とパワーユニットの融合した部分、それぞれ細かく話をして改善策や対応策を打っています。

 ただ、前回のトルコGPの場合は極度にグリップの低い路面コンディションでのレースでしたから、残り3連戦の通常のコンディションでのレースに直接生かせるかというと(対策が正しいかどうかの)評価が同じようなコンディションのコースに行かないと見えない部分もあると思います」

 車体面では、前戦トルコGPに投入した小さなアップデートはうまく機能し、マシン挙動を安定させていたとフェルスタッペンは語る。

 極めて滑りやすい特殊なコンディションではそれを十分に評価することができなかった。だが、アレクサンダー・アルボンも同じようにその効果を実感し、フリー走行で好走を見せたのはいい兆候だと言えそうだ。

「速く走るためには、マシンに対する自信が必要だ。とくに限界ギリギリで常に走る時には、挙動が一貫したものであって欲しいし、シーズン開幕当初はリアエンドの難しさに手を焼いた。ただ、そのフィーリングはよくなってきている」(アルボン)

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 フェルスタッペンも、その効果をバーレーンで確認するのが楽しみだと語った。

「ああいうコンディションだったから判断するのは難しいけど、金曜のとてもトリッキーなコンディションでもマシンバランスは満足できる状態だった。トルコに持ち込んだいくつかのパーツはポジティブなフィーリングだったし。

 十分な過去のデータがあるバーレーンで走って、さらに情報を得るのを楽しみにしている。いいアップデートだと自信を持っているよ。今週は走り慣れたサーキットレイアウトだけど、ここはいつもタイヤに厳しいから、いいセットアップを見つけ出すのが重要になるだろうね」

 伝統的に言えば、バーレーン・インターナショナル・サーキットはレッドブルと相性のいいサーキットではない。フェルスタッペンもまだ表彰台に立ったことさえない。

 しかし、ここでしっかりと課題を洗い出し、本当の勝負である2021年に向けて準備を整えるための土台を作ることは極めて重要だと、田辺テクニカルディレクターは語る。

「ここ2戦はあまりいい形で戦えていなかったんですが、中東の景色を見て雰囲気も一変しました。残り3戦、来年に向けて前向きな気持ちで戦って行きたいと思います」

 イレギュラーからレギュラーへ。この最後の3連戦は、レッドブル・ホンダにとって2021年に向けて大きな意味を持つ3連戦となる。