ーパーエース・西田有志 
がむしゃらバレーボールLIFE (16)

 バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第16回は、10月17日に開幕したV.LEAGUEの戦いについて聞いた。


ジェイテクトでリーグ連覇を目指す西田

 10月17日のリーグ開幕戦で、ジェイテクトSTINGSは東レアローズ相手に3−1と勝利。新型コロナウイルスの影響で、入国が遅れた外国人選手をお互いに欠く中、ジェイテクトのエース・西田有志は両チーム最多の39得点を挙げて勝利に貢献した。

 試合後、勝利者インタビューに指名された西田は、その日が誕生日だった主将の本間隆太に向けて「ハッピーバースデー」を歌い、会場を盛り上げた。勝利者インタビューで歌を歌った選手は、筆者が取材をしてきた中では初めてだ。

 しかし翌日は同じ東レ相手にフルセットでの辛勝。翌週の10月23日の試合では、いまだ勝ち星がないVC長野相手にもフルセットに持ち込まれるなど、少し苦しいスタートになった。

 23日のVC長野との試合から、チームに新加入したリオ五輪金メダリスト、ブラジル代表のフェリペ・フォンテレスも出場したが、本調子とは言えなかった。早くから外国人選手が合流したチームに比べると、チーム状態の上げ方が難しい部分もあったのかもしれない。

 また、昨シーズンに初のリーグ優勝を果たしたジェイテクトが、「王者」として臨む初めてのシーズンでもある。西田自身やチームメイトに硬さがあったのだろうか。

「それは感じられません。昨年がどうだったという意識はプレーする上でマイナスにしかならないので、誰ひとり、そういうことは考えていないと思います。優勝したのは去年で、今年は今年。今シーズンをどう戦うのか、各チームに対してどんな対策を練っていくのかということに集中しています」(西田)

 昨シーズンの初優勝には、今年6月に退団した外国人選手のマテイ・カジースキの活躍も大きかった。新加入したフェリペの印象について、西田は次のように語る。

「彼自身、だんだんコンディションが上がってきていると言っていますし、チームに与える影響力も大きいです。強いブラジルで培ってきた気持ちの熱さ、勢いを保持しながらの丁寧なプレー、ボールや得点への執着心......。チームが大切にしないといけないことを体現してくれている。何より、彼はオリンピックで優勝しているので、その経験から学ぶべきこともたくさんあると思います」

 コロナ禍で外国人選手の合流時期に差が出たこと、観客数が制限(各会場の入場者数はキャパシティーの50%以下)されたこともそうだが、V1男子とV2男子の一部で、週末に行なわれる2試合が同一カードになったことも昨シーズンまでと異なる点だ。

 それについて西田は、何試合か消化したあとに「『難しい』というのが率直な気持ちです。同じチームが相手でも、1日目と翌日では"別のチーム"になっているので、対策の仕方も変わります。ただ、うまくいかなかった点を修正することもできると思います。それがチームの伸び代であり、課題ですね!」と語った。

 結果だけを見れば、V1男子で1日目と2日目で勝敗が変わったのは、11月15日時点では3カードのみだった。そのうちのひとつが、11月14日、15日に行なわれたジェイテクトvsサントリーサンバーズ戦だ。

 両日ともフルセットの大接戦になり、14日はサントリーが、ロシア代表のドミトリー・ムセルスキーと日本代表の主将を務める柳田将洋の奮闘で先制。しかし15日は、西田が64打数33得点、ブロック4得点、サービスエース3本を決める大車輪の働きで接戦をモノにした。

 西田は14日の敗戦後、「チームがバレー以外のところでブレがある」と唇を噛んだ。翌日の試合後の会見には姿を現さなかったが、セッターの久保山尚が「課題をある程度は修正できたと思う」と、"ブレ"の具体的な内容を避けつつコメント。長いシーズンの中で2連戦の戦い方も変わっていくだろう。

 久保山はさらに、今シーズンの西田についてこう話している。

「自粛期間中に西田はかなりトレーニングをしてパワーをつけたんですが、それをコントロールしきれずに力んでしまう場面もあるように見えますね。彼はたくさん(スパイクを)打ってリズムを掴んでいくタイプなので、早い段階からトスを回してエンジンをかけてあげられるよう気をつけています。パワーをコントロールできるようになったら、昨シーズン以上の成長を見せてくれると思いますよ」

 打数が多くなることに関しては、西田の状態を心配するファンもいるかもしれない。

 10月31日と11月1日のパナソニックパンサーズ戦で、西田はベンチから外れた。高橋慎治監督によると「右膝の違和感」ということで、そこまで大きなケガではなく本人は出場するつもりだったようだが、チームがストップをかけた。結果は、昨シーズンの優勝を最後まで争った相手にセットカウント1−3、0−3と連敗した。

 翌週の大分三好戦では、11月7日はベンチには入ったものの出場せず(チームは3−0で勝利)。翌日は大分三好に第1セットを取られたあとに途中交代で出場し、49打点24得点と大奮闘してフルセットの試合を勝ち切った。

 打数の多さについて問うと、西田は「試合で疲労は残らないタイプなので。痛みもまったくないです」と笑顔を見せた。ただ、ほとんどゲーム練習をしていない状態での投入だっただけに、「(ケガした箇所を)気にしてしまうところはありました。気にしてかばってしまうと、別の個所を痛めてしまうことがあるので反省しないといけない」と気を引き締めた。

 日本代表では軽いケガで出場を回避したこともあったが、Vリーグで試合に出ないことは今回が初めて。プレーできないもどかしさはあったようだが、「リーグはまだ長く続きますし、焦りはありませんでした」と振り返る。冷静に、コートの外から見たチームは西田の目にどう映ったのか。

「チーム自体の動きはそんなに悪くなかったです。でも、『そんなに悪くなかった』ということは、『100%ではなかった』ということ。どれだけのクオリティーを求めるかが重要だと思います」


出場しなかった試合も、チームメイトとしっかりコミュニケーションを取った

 西田はまだ20歳だが、チームを背負うエースとして勝利をもたらすために、チームメイトには自分の意思をはっきり伝えてコミュニケーションを取っているという。

「『やるべきことをやって先に行くのはいい』けど、『やれてないのに先に行くことはできない』と何度も話しています。(連敗明けの)大分三好との2試合は勝ててよかったですけど、日曜日の試合は落としてはいけないボールを落としてしまっていた。それが前日に勝った緩みなのか、疲労からなのかはわからないけど、口にしてしまったら言い訳になる。そこにプライドを持つことが、リーグを戦っていく上でもっとも大事だと思います」

 ケガ明けに髪が銀色に変わったことについては、「心機一転とか、そういうことではないんですけど(笑)」と少し照れつつも、"変化"についての考えを口にした。

「目立つことをすれば注目もされるので、自分にプレッシャーを与える効果はあるかと思います。バレーのシステムなどもそうですけど、同じようなことを繰り返すだけだと周囲から遅れていってしまう。髪の色はそんなに重要じゃなくて、そういう意識を忘れないことですかね」 現在ジェイテクトは、7勝3敗(18ポイント)で5位。今後について、西田は「パーフェクトに近い試合を繰り返していかないと勝ち続けられない」と力強く述べた。リーグはまだ折り返し地点に差しかかったばかり。西田もチームもまだまだ進化を見せてくれるはずだ。

(第17回につづく)