日本には無い「プロエース」と「新型ハイエース」
日本において、商用バンといえばトヨタ「ハイエース」や日産「キャラバン」が有名です。
なかでも、ハイエースは新車・中古問わず高い人気を博していますが、現行ハイエース(200系)とは異なるトヨタの商用バンが世界では展開されているのです。
トヨタはこれまでラインナップしてきたバン(ワゴン)タイプには、「タウンエース」「ライトエース」「ハイエース」「グランエース」など、「エース」を名前に組み合わせた車種が多くあります。
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欧州市場向けには、商用バン「プロエース」、乗用バン「プロエースヴァーソ」を販売。
この2台は、プジョーやシトロエンブランドを展開するPSAグループが生産し、トヨタの欧州法人向けに供給しているモデルで、2013年からプロエース、2016年からプロエースヴァーソが同市場に投入されています。
2019年には、プロエースの弟分となる「プロエースシティ/プロエースシティヴァーソ」も登場しました。
2020年11月16日にはプロエースヴァーソのEV仕様となる「プロエースヴァーソ・エレクトリック」を発表し、2021年3月に欧州市場で発売される予定です。
一方で、ハイエースブランドも海外では人気で、とくにアジア圏では日本と同様にハイエースが販売されています。
しかし、2019年2月18日にフィリピンでは日本のハイエース(200系)とは異なる新型ハイエースが世界初公開。新興国を中心とした国・地域に順次投入されています。
さらに、複数の座席、荷室のレイアウトを設定しており、乗合バス用途の「コミューター」では、クラス最大の乗車人数17名仕様が設定されています。バンは世界各国のパレットが搭載可能な荷室を確保しました。
新型ハイエースの開発責任者を務めるチーフエンジニアの石川拓生氏は次のように話しています。
「ハイエースは、1967年に初代を発売して以降、世界約150か国、累計624万台以上が販売されているトヨタの代表的なグローバルカーのひとつです。
長年、高い耐久性と信頼性を強みに、バンやミニバス、プライベートの移動手段として活用され、現在、海外では主にアジア、中東、アフリカ、オセアニア、メキシコ、中南米地域で販売されています。
新型ハイエースでは、”Hiace Pride”をキーワードに掲げ、『持つ、使う、乗ることで安心感・満足感と誇りを感じられるクルマ』をコンセプトに開発しました。
ハイエースは、オーナー、ドライバー、そしてお乗り頂く全ての皆様にとって、かけがえのないパートナーを目指しています」
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このように、欧州では同市場で強みを持つPSAグループと提携する形で、プロエースシリーズを展開。
長年、ハイエースの需要が高いアジアや中南米では新型ハイエースを投入するなど、商用バンジャンルでも地域で異なる戦略をおこなっているようです。
新型ハイエースはなぜ日本で販売されない?
日本では、2019年末に送迎用ニーズに対応するべく「グランエース」が発売されました。
このグランエースは、前述の新型ハイエースをベースとしていますが、商用バンでは現行ハイエース(200系)のままです。なぜ、新型ハイエースは日本に投入されないのでしょうか。
新型ハイエースのボディサイズは、いくつかに分かれており、ロングボディが従来モデルより535mm長い6mに迫ります。
さらに、ショートボディでも従来モデルより570mm長い全長5265mmも拡大。全幅も従来のハイエースのワイドボディに対して70mmも広い1950mmとなっています。
これは海外市場で求められるニーズを反映したものです。そのため、現行ハイエースよりもボディサイズが大きくなるため、商用バンとしての積載性は向上するものの、日本の道路事情に合わなくなることもあり、現行ハイエース(200系)の販売が継続されているのです。
また、トヨタは新型ハイエースの日本発売について、次のように説明しています。
「新型ハイエースは新興国を中心とした国・地域に順次投入していきます。
市場環境が異なる日本においては従来モデルのハイエースを継続していきます」
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このように、日本市場とは異なるグローバル市場では、それぞれに適したモデルが投入され、同じ車名でも中身は別物ということはあります。
トヨタのコンパクトカー「ヤリス」では、2020年に日本や欧州で発売された新型「ヤリス」とは別にアジアでは先代をベースとしたモデルや、北米ではマツダのコンパクトカー「マツダ2」のOEM車として展開されているのです。
ハイエース自体の注目度は高いものの、大きなボディサイズの新型ハイエースが日本に投入される可能性は低いかもしれません。
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