『みんなのうた』への楽曲提供や、スピンオフドラマ『アンサング・シンデレラ』主題歌など、精力的に音楽活動を展開するシンガーソングライター・関取 花さん

彼女の紡ぐ歌詞の魅力、それはシンプルで最小限の言葉を用いながら、日々の暮らしを立体的に描くこと。暮らしの中のふとした気づきや喜怒哀楽の感情を、飾らない最小限のフレーズで淡々と歌いあげています。

11月11日、関取さんのキャリアでは初のエッセイ集『どすこいな日々』が発売されます。過去のブログや連載、寄稿から集められたのは、幼少期の記憶や好きな本など、彼女の身の回りで起こったあらゆるエピソードが詰まった「日用品のようなエッセイ集」となっているそう。

もともと文章を書くことに興味があり「学生時代にもエッセイを書くための講義を受け、誰にも見せないエッセイを書いていた」という関取さん。なぜ今のタイミングでそれらをまとめ、出版するに至ったのか。『どすこいな日々』に込めた想いについて、話を聞きました。

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撮影/森カズシゲ  取材・文/高木望

「30歳までに本を一冊作る」と決めた

まずは書籍の形になった『どすこいな日々』を手に取ってみた感想を教えてください。
CDを作る時も然り、手に取れるモノを生み出せた瞬間は、胸がキュッてなりますね。赤ちゃんを見た時みたいな愛おしさがあります。今は本も電子書籍で読めますし、音楽も配信だけのリリースもありますが、モノの手触りや色味は、やっぱりデータ上の作品とは違いますね。
今回収録されているエッセイは2016年頃から現在に至るまでに執筆されていますよね。なぜ、それらを一冊の本にまとめることになったのでしょう?
ここ最近、1〜2年くらいで連載のお仕事やテレビやラジオ番組など、本当にいろいろなお仕事をさせていただきました。音楽だけに活動を絞っていたら見えなかったであろう感情、「私って意外とこれも出来るんだ」「こういうこともやってみたけど、心はすごい嫌がってたな」みたいな、いろいろな気持ちに気づけるようになったんです。

そして、そういった感情に気づけるようになってから「胸を張って自分の棺桶に入れられるものだけを作ろう」とより強く思うようになりました。データって棺桶には入れられないじゃないですか。だからせめて形に残るものは、胸を張って何の後悔もなく、その時の出来る限りの私を詰め込んだものを作ろうって思ったんです。それが今まではCDだったのですが、本という形で、棺桶に入れられるものが増えた感覚です。
棺桶、ですか……?
そんな悲壮感あふれる話じゃないですよ(笑)。 CDも本も「一生に1回しか出せない」「これが最後かもしれない」っていうくらいの気持ちでやらないと、ってことです。恵まれた環境も一生は続かないと思っているので、なるべくみんなが「この人とずっと仕事したい」と言ってくれるようなものを作りたいですね。

私は今年の12月で30歳を迎えるのですが、やっと「自分がどういう人間でありたいか」が腰を据えてわかった気がして。なんとなく「30歳までに本を出したい」という話をマネージャーさんにはしていました。そしたら良いタイミングで晶文社の担当者さんから「日用品のようなエッセイを作れると思うんです、花さんとなら」というご連絡をいただき、今年の始めから準備を進めていました。

自分の価値観が滲み出る「日用品」的なエッセイ

「日用品のようなエッセイ集」というテーマは、日常で得た気づきを歌詞に乗せて歌う関取さんらしいな、とすごく感じました。なぜ「日用品」なのでしょう?
「気合を入れて読まなくていい本にしたい」という思いがありまして。1冊読み切らなくていいし、気が向いたときにお風呂やキッチンで読んでもいい。「手に取った時にふと読みたくなる」ことを心がけたので、それぞれの楽しみ方、捉え方でごゆるりと楽しんでいただけたら嬉しいです。
今回は何作か書き下ろしも収録されていますが、普段エッセイを書くときはどのようにアイデアを思いつくことが多いですか? 『どすこいな日々』にも、幼少期や学生時代の記憶が多々登場しますよね。
割と書きながら思い出すこともありますね。エッセイや新曲のアイデアは1人で考えていると何も浮かばないんですけど、人と話しているといろいろなことが出てくるタイプなんですよね。

最初はぼんやりと「あの頃」っていう大まかな枠組みの話から始めて、「そういえばあそこであんなことしたなあ」とか「小さい頃、ここで自転車の練習していたな」といった、景色に連動した記憶を振り返っていくんです。
ちなみに関取さんが『どすこいな日々』のなかで1番好きなエッセイを一つ挙げるとしたら?
『ガノフ柴田』の話ですね。小学校のクラスメイトである男の子・柴田くんにまつわるお話なのですが……実は、以前ブログのネタがなさすぎて困っていたときに、下書きに「ガノフ柴田」というメモだけが残った下書きが出てきて。なぜそんな言葉が残されていたのかは分からないんですけど、その言葉からどんどん妄想が膨らんでいって書き上げたフィクションでした。

ただ、別に思想やメッセージを込めたつもりはないのに、読み返してみたら「本当に強くてかっこいい人とは」や「普通でいられることの強さ」というメッセージが込められている。生きる上での自分の価値観が滲んでいて、面白いと思いました。

「文章を書いている関取花」は最も素の姿に近い

関取さんは現在マルチな活動をされていながらも、肩書きは常にシンガーソングライターですよね。音楽の活動と文章の活動、テレビ・ラジオでの活動はそれぞれ、ご自身の中でどのような位置付けになっているのでしょう?
主軸はやっぱり音楽です。本もラジオもテレビも全部「関取花という人間にいかに興味を持ってもらうか」なんですよね。人間に興味を持ってもらうことで、自分の歌を知ってくれる人が増えたらいいな、と思っています。

ただ人前に出る時じゃない私に限りなく近いのは「文章を書いている関取花」かも。活動全体の中でも、最も自分の素に近い感じがしています、実は。例えば音楽の場合、歌詞は文字数も少ないですし、メロディを添えるので、何かを語る上では制限がある。自分の話だけじゃいけないし、いろいろなことを考えながら作ります。でもエッセイは割と無の状態。友達に話すような感覚で書いています。
ちなみにエッセイの中で「関取さんにとって音楽とは?」という質問がすごく困る、というエピソードを書かれていましたが、このエッセイを書かれたのは何年か前ですよね。当時の関取さんは「自分にとって音楽とはうんこである」という結論を出されていましたが……その答えは今でも変わらず、ですか?
そうですね……今でも聞かれたら困る質問ですし、やっぱり「うんこ」という結論が出てきますね(笑)。ただ嫌な意味ではないです。良いインプットをしても必ずしもすぐアウトプットとして形になるわけでもないし、気長に待って、時にはお酒や人の力を借りてやっと出ることもある。そういった考えは割と変わらなくて。要は良いアイデアや楽曲は、出る時は出るし、出ない時は出ないってことです。あまり考え過ぎず、気楽にいたいなという。
逆に、数年前のエッセイと現在のエッセイを比べてみて、ご自身の考え方やテキストを書くスタイルなど、変化を感じることはありましたか?
大元の部分は変わってないんですけど、書くときの肩の力は抜けたかもしれません。ブログは普段から本当に気が向いた時だけ自由に書いているのですが、ここ1〜2年での文章の方が、楽に書いている気がしています。自分の中で情報を精査できるようになってきて「これは言わなくていいな」「これだけは伝えたいな」という取捨選択がすごくクリアになったからかもしれません。
ご自身の中でも、この『どすこいな日々』を10〜20年後に振り返った時「20代ではこんなことを伝えようとしていた」と振り返るきっかけになるかもしれませんね。
確かにそうですよね。私も、人間の感情や考え方は流動的に変化していいことだと思っています。だから、もしかしたら来年「音楽なんてうんこじゃないです」って言ってるかもしれない(笑)。ただ、それを読んでくださった方に対して「今の私はそう思っていないから、最新の私を受け入れて」とはもちろん思わないです。エッセイの中の自分を、その時々で愛せたらいいな、って思います。
最後に、『どすこいな日々』をどういった方に読んでいただきたいか教えてください。
今回の『どすこいな日々』は、自分の主張が全面に出すぎていると、私のことを知らない読者の方の入る隙がないなと思ったので、私のことを知らない人にも「面白そうだな」と興味を持ってもらえそうなエッセイをなるべく選んで入れました。

「手に取った時にふと読みたくなる」ことを心がけたので、それぞれの楽しみ方、捉え方でごゆるりと楽しんでもらいたいです。そこから関取花という人に興味を持ち、音楽を聴いてくださったり、ライブに来ていただいたりするのも嬉しいですけど、少なくとも「買って損したな」って思われなければいいかなと。とりあえず最後まで読もうと思っていただけたら嬉しいです!
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関取 花(せきとり・はな)
1990年生まれ 神奈川県横浜市出身。愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けるソロアーティスト。NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等の多くの夏フェスへの出演、ホールワンマンライブの成功を経て、2019年ユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。

書籍情報

「人生なんてネタ探し」
老若男女に愛されるシンガーソングライター関取花、待望の初エッセイ集!
音楽活動とともにラジオのパーソナリティ、バラエティ番組出演など、幅広く活躍中の関取花の書き手としての魅力が詰まった一冊。幼少期のエピソードから大好きな本について、音楽を生み出す際の苦労などのよもやま話を時に抱腹絶倒、時に哀愁漂わせ、喜怒哀楽たっぷりの文章でつづる。ついつい毎日開きたくなる、日用品のようなエッセイ集。

■著者:関取 花
■単行本:176ページ
■定価:本体1500円+税
■発売日:2020年11月11日発売
■発売:全国書店、ネット書店など

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