カナダで昨年、トランスジェンダーの女性が下半身の脱毛を断られてエステサロンを訴えたが、人権裁判所はこの提訴を却下していた。理由は性転換手術を受けておらず男性器をそのまま残していたことにあったのだが、この女性が同様の理由で美人コンテストへの応募を取り消され、今度は運営会社を訴えている。『New Yok Post』『Sick Chirpse』などが伝えた。

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カナダのオンタリオ州に拠点を置く「Canada Galaxy Pageants」は、女性の美を競うコンテストを毎年開催している。コンテストは6歳以上の部門から28歳以上のいくつかの部門に分かれて年齢別に出場者を募集しているが、昨年5月に28歳以上の部門に応募したトランスジェンダーの女性ジェシカ・ヤニフさん(Jessica Yaniv)が選考外にされてしまった。

ジェシカさんの応募書類は一旦受理されたものの、トランスジェンダーであることや女性であるものの性転換手術を受けていなかったことを明らかにしていなかったため、応募を取り消されてしまったのだ。

コンテストの運営側では生物学的な女性以外にも性転換済みのトランスジェンダー女性の応募を受け付けており、昨年にはトランスジェンダーの女性が見事受賞していた。しかしジェシカさんの場合は、女性として生活を送っているものの男性器は残していたため、運営側では公式ホームページに応募資格を「生物学的な女性と完全に性転換が済んでいる女性」と改定したという。

実はジェシカさん、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点とするトランスジェンダー活動家で、地元では名の知れた人物だ。昨年は男性器があるため下半身の脱毛を断られたことを巡ってエステサロンに賠償金の支払いを求めたものの、人権裁判所に訴えを却下されていた。

そのジェシカさんが今度はコンテストへの応募資格を「男性器を持たない女性」と改定されたことで「Canada Galaxy Pageants」を人権侵害だと訴え、「尊厳と感情を傷つけられた」として1万カナダドル(約79万円)の損害賠償を求めた。

この訴えに対して、オンタリオ州人権裁判所は「男性器があるという理由で組織がその人物に対してサービスを拒否することはできない」と裁定する方向でいるようだが、一方でカナダ人の憲法上の自由と公正さを守るために設立された法的組織「ジャスティス・センター(Justice Centre)」では「本件については公聴会なしで全面的に却下するように」と要請している。

またジャスティス・センターは、公式ホームページにジェシカさんの応募が却下される理由について次のように説明した。

「6歳の少女を含むコンテストへの出場者は共用スペースで着替えを行います。出場者のプライバシーの保護、そして快適に過ごしてもらうために、出場者の父親を含む全ての男性はそのスペースに立ち入ることができません。またコンテストでは10歳以上の部門で水着審査もあるため、このようなルールは必須です。」

「さらにコンテストでは、性転換手術済のトランスジェンダーの女性のためにも出場に関する配慮を既に行っております。会場では男性器を持つ人に脱衣中の姿を見られるようなことが無いように、安全な女性専用の場所を設けることは不可欠なのです。」

さらにジャスティス・センターでは、ジェシカさんがエステサロンに賠償金を求めた件を持ち出し「差別防止や是正ではなく個人的な金銭的利益のために中小企業を標的にしている」と指摘した。

なおオンタリオ人権裁判所で行われる本件についての聴聞会日程は、まだ決まっていないとのことだ。

画像は『Sick Chirpse 2020年10月27日付「Trans Activist Jessica Yaniv Is Suing A Women’s Beauty Pageant For Not Allowing Her To Compete」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)