スーパーエース・西田有志 
がむしゃらバレーボールLIFE 特別編

 7月20日、『週刊少年ジャンプ』の人気バレー漫画『ハイキュー!!』が約8年半の連載に幕を閉じた。

 作品の舞台は、かつての高校バレーの名門・宮城県立烏野高校。主人公の日向翔陽(ひなた・しょうよう)が同校に入学すると、排球部には中学時代の最後の公式戦で惨敗した相手チームのセッター、影山飛雄(かげやま・とびお)の姿があった。2人はことあるごとに反発し合うが、日向の驚異的な身体能力と、影山の正確無比なトスが融合して超高速のコンビプレーが生まれる。ふたりが個性的なチームメイトたちと共に全国の頂点を目指すという物語だ。

 同作は現役のバレー選手にもファンが多く、日本代表の若きエース・西田有志(20歳、ジェイテクトSTINGS)もそのひとりだ。2014年から始まったアニメを見たのをきっかけに、作品に「どっぷりハマった」という。

 10月26日発売の『週刊少年ジャンプ』では、西田が作品の魅力を語るインタビューを掲載。今回、そこでは収まりきらなかった"『ハイキュー!!』愛"を、特別にスポルティーバからお届けする。


ハイキュー!!』の魅力を語った西田選手。両脇は作中に登場するVリーグ2チームのユニフォーム(撮影場所:有明アリーナ)

――西田選手が思う『ハイキュー!!』の魅力はどこにありますか?

「とにかくリアルすぎるんですよ。僕は烏野高校の(東峰)旭や田中(龍之介)などアタッカー陣の目線で読むことが多いんですが、ブロックが強力な相手にスパイクが決まらない、サーブが入らない、レシーブも乱れちゃうといった状況は、何度経験してきたかわかりません。その苦しさを知っているので、アタッカーたちが苦境を乗り越えるシーンでは胸が熱くなります」

――西田選手は、そうなった時にどう対応するんですか?

「自分の気持ちを楽にする方法をいろいろ考えてきました。『俺はできる』と思うことも大事ですけど、『今日はこれができない』と諦めることも必要です。例えば、今日はスパイクでブロックを抜けないとなったら、ブロックアウトを狙うことに切り替えるといったように。それはプライドを捨てるわけではありません。逆に自信を保ったままじゃないと、素早く考えを切り替えることはできないので」

――苦しい時に、烏野高校のキャプテン・澤村大地のような、性格もプレーも安定した選手がいると心強いでしょうね。

「そうですね。時にはふざけながら、バレーでは冷静な分析をしてチームを乗せていく。僕が所属しているチームのキャプテンの本間(隆太)選手もそうなんですけど、すごくプレーしやすいです。作中はどうしても日向や影山(飛雄)といった天才たちが目立ちますが、大地もかなり能力が高い選手ですよ。リベロ並の守備力があって、自分でも決められる。まあ、それを言い出したら、烏野のメンバーは全員えげつないですけどね(笑)」

――『ハイキュー!!』は各選手に必殺技がありますが、ミドルブロッカー・日向と、セッター・影山がやる「変人速攻」も実際にあるんですか?

「あの2人がやるように、目をつぶるアタッカーにトスを合わせることは無理ですけど(笑)、マイナステンポ(トスが上がる前に、アタッカーがジャンプしようとしている状態)の速攻は世界の主流です。あと、練習のシーンも『これ、やったなぁ』というものばかり。烏野高校の月島(蛍)が、合同合宿で音駒高校のクロ(黒尾鉄朗)や梟谷高校の木兎(光太郎)といった上級生にいろいろ教わる場面などは、『オレも先輩にたくさん教わったな』と懐かしくなるんです」


主人公の日向・影山による「変人速攻」。どんどん進化を遂げていく必殺技だ (c)古舘春一/集英社

――西田選手のことを、日向に似ていると思うファンも多いようですね。

「海外の選手からも『You are Hinata』と言われることもあります。日向は身長が低く(162.8cm)てジャンプ力がすごいので、そこを重ねているんでしょうね。僕も男子バレーの中では高くない(186cm)ですから。実際は、日向とはポジションが違うので、左利きという意味でも白鳥沢高校のエース・ウシワカ(牛島若利)に近いんじゃないかな。でも、性格としては木兎のようにどんどん盛り上げていくタイプですし......あらゆるキャラクターがミックスされた感じですね(笑)」

――ものすごいジャンプ力がある西田選手ならば、日向や、"小さな巨人"鴎台高校の星海光来(169.2cm)の「ドンジャンプ(足の母指球に体重を乗せて高く跳ぶこと)」の感覚もわかるんじゃないですか?

「いつもと違う感覚で高く跳べることがあって、それを『ドン』という音で表現しているのはしっくりきます。そういった感覚を言葉で説明するのは大変ですけど、自分の頭の中だけでも整理できていないと、セッターとの息が合わなかった時や、プレーが崩れた時などに素早く立て直すのが難しくなります。それを確かめるためにも、日向のような反復練習はとても大切です」


Vリーグで別チームになった影山(左)と日向(右) (c)古舘春一/集英社

――『ハイキュー!!』ではVリーグ編も描かれていますが、現役のVリーガーとしてどう感じましたか?

「ライバル校にいた選手たちがチームメイトになっていたり、『この選手もVリーガーになったのか』というのが楽しかったですね。あと、かつてのチームメイトや戦った相手がバレーを離れて、会場に観に来ているのもグッときました。ああいう絆もいいですよね。意外なつながりができていたりしましたし」

――田中と美人マネージャーの清水潔子が結婚していたり。

「あれは『潔子さん? 嘘でしょ⁉』って思いましたよ(笑)。でも、稲荷崎高校との試合で田中が超インナーのスパイクを決めて1セットを取った時に、潔子さんが小さくガッツポーズするじゃないですか。そこで、田中を好きなのかな、となんとなく感じたことはあったんですけど......。それ以外は、田中は相手にされていない感じだったので、まさかでした」

――すごく細かいところまで読んでいますね(笑)。

「それくらい細かいところまで読み込みたくなる漫画です。選手も夢中にさせてくれる作品を描いてくれた、作者の古舘春一先生にはどれだけ感謝しても足りません。『ハイキュー!!』を通してバレーファンになった方も、僕たちが戦うVリーグの試合を見ながら、『あ、これはあのシーンと近いかも』といった感じで楽しんでもらえたら嬉しいです。応援よろしくお願いします!」