【スペイン発コラム】EL初戦にトップ下で初先発、1得点2アシストと躍動

 スペイン1部ビジャレアルは現地時間22日、UEFAヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第1節でホームにスィヴァススポル (トルコ) を迎え、日本代表MF久保建英が今シーズン初めて先発出場した。

 スペイン各紙は試合前、主力に怪我人が出ていること、3週連続で平日半ばにELが開催されるタイトな日程であること、それに伴いリーグ開幕から先発出場し続けている選手たちに休みを与える必要性があることを考慮し、ウナイ・エメリ監督が大幅なローテーションを実施すると予想した。

 迎えた試合当日、エメリ監督は予想通りに18日のリーガ・エスパニョーラ第6節バレンシア戦(2-1)から8選手を入れ替えた。また先発出場の予定だったDFラミロ・フネス・モリが試合直前に膝に問題がありDFラウール・アルビオルと代わったため、実際にはMFマヌエル・トリゲロスとMFサムエル・チュクウェゼ以外の9選手を変更する予定だった。

 久保にとってはビジャレアル加入後、公式戦7試合目にして初の先発出場。エメリ監督がここ3試合で成果を挙げていた4-1-4-1から4-2-3-1にシステムを変更したなか、トップ下でプレーした。

 キックオフ後の激しい雨の中、久保は試合開始から積極的に攻撃に絡み、前半13分、チュクウェゼのシュートが相手GKに弾かれた後、素早く反応して左足で蹴り込み、ビジャレアルでの初ゴールを記録。さらに同20分には左足アウトサイドでの絶妙なパスでFWカルロス・バッカの得点をアシスト、2点のリードを追いつかれた後の後半12分にはCKからDFフアン・フォイスのゴールを演出した。久保はフル出場を果たし、チームも5-3で勝利している。

 1得点2アシストという素晴らしい結果を残し、UEFA公式のEL週間ベストイレブンにも選出された久保は試合後、「誰が試合に出場するかを決定するのは僕ではなく監督。すべての選手がプレーすることを望んでいるし、激しい競争がある。僕は前進することができたので、週末どうなるか様子を見るつもりだ。個人的には満足しているし、これからも前進し続けたい」とリーグ初先発を期待した。

 またエメリ監督は試合後、「我々はタケに任務を与え、彼はそれを見事に遂行してくれた」と明かしていた。

リサラガ記者は課題を指摘 「コンスタントにプレーに関与する必要がある」

 スペイン各紙の久保の評価について、試合翌日のスペイン紙「AS」は2得点のFWパコ・アルカセルと並ぶ最高の3点、スペイン紙「マルカ」は2点(最高3点)をつけた。そしてビジャレアルの地元紙「エル・ペリオディコ・メディテラーネオ」は、「チャンスを逃さず1得点1アシストを記録し非常に力強く試合をスタートしたが、少しずつパフォーマンスが落ちていった」と評し、6点をつけている(最高10点)。

 ビジャレアルを約20年追い続ける「エル・ペリオディコ・メディテラーネオ」紙スポーツ部チーフ、ホセ・ルイス・リサラガ記者に試合後、様々なメディアが大絶賛したこの日の久保のパフォーマンスを振り返ってもらった。

「タケ・クボにとって最も出場時間が長く、成長するために重要な機会となるヨーロッパリーグデビューを果たした試合となった。私は彼がチャンスを生かしてゴールを決めたことをとても気に入っているし、それ以上にバッカのスーパーゴールのアシストがもっと好きだった」と、得点を生み出したプレーを称賛した。

 しかし、「みんながタケのゴールやアシストについて称賛しているが、彼は試合を通じてもっと継続してプレーに参加する必要がある。守備の意識は見えたが、エメリが修正を求めていたように、もっと守備をやらなければいけないし、他の選手が前線で残っている時、守備をするために戻る必要がある。タケはより厳しいものをエメリに求められているんだ。ビジャレアルのレベルはとても高いので、リーグ戦でスタメン入りするためには必死に努力し、コンスタントにプレーに関与する必要がある」と守備面に課題を残していることを指摘した。

「タケは間違いなく素晴らしい才能を備えているし、まだ19歳だが、スペインサッカーや欧州サッカー、そしてビジャレアルの要求度は非常に高い。レアル・マドリード寄りのメディアの、無条件の賛辞に耳を傾ける必要などない。なぜなら、それは選手に害を及ぼすことになるからね」と、一部のメディアが久保のパフォーマンスを誇張して伝えていることを訴えた。

「もしビジャレアルで試合に出場したいなら、もっと継続したプレーを見せる必要があるし、レアル・マドリードでプレーするとなると、言うまでもなくパフォーマンスを遥かに安定させる必要がある。昨日のようなクオリティーのプレーやゴールは、私にとってはそこまで価値がないものだ。なぜなら、あれは副次的なものだからね。タケはもっともっとプレーに参加し、コンスタントに絡む必要がある。繰り返すが、彼はとても若いが、もっと激しくなり、安定したプレーを見せなければいけない」と見解を述べ、断続的ではなく、90分間を通じたクオリティーの向上を求めた。

久保の才能を高く評価しているからこその要求

 辛辣な言葉に聞こえるが、ビジャレアルの番記者を務めるリサラガ記者は、久保の才能を高く評価している1人である。インタビュー後、「これはタケへの批判では全くなく、才能ある若者がステップアップするための要求だよ」と、期待を込めたものであることを強調していた。

 おそらく、わずか1試合の結果で、リーグ暫定2位と十分な結果を残しているエメリ監督が、久保の立場を大きく変えることはないだろう。だが、少なくともスタメン入りに向けて、これまでよりも前進したと思いたい。

 ビジャレアルはこの後も引き続き、来月半ばの代表ウィークまでハードな日程を消化していくことになるため、久保にさらなるチャンスが訪れるのは間違いないだろう。次の試合は25日にアウェーで行われるリーガ第7節カディス戦。久保も語っているように、リーグ戦で初の先発出場を果たせるかどうかに注目が集まる。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)