10月15日 、BTS(防弾少年団)が所属するビッグヒットエンターテインメント(以下ビッグヒット)が韓国取引所に上場しました。ビッグヒットの8億2,000万ドル(約863億円)規模のIPOは、韓国においてここ3年のうち最も大きい規模のものとなりました。一方で、上場から数日経った10月20日時点での終値を基準とした時価総額は6兆1769ウォン。15日の終値基準の時価総額と比較すると、2兆5,500億ウォン(2,360億円)以上減少しています。

大幅下落が続いているBTS株(写真はイメージです)。

上場以来、世界中で話題となっている“BTS株”について、詳しく見ていきましょう。

ビッグヒットの株式の基本情報

市場:韓国証券取引所
銘柄名:Big Hit Entertainment(ビッグヒットエンターテインメント)
ティッカー:352820(各株式の銘柄につけられた番号)
公開価格:135,000ウォン
初値:270,000ウォン
日本で取り扱いのある証券会社:SBI証券

ビッグヒットの時価総額は初値で8,800億円

ビッグヒットの株式は15日のIPO後、27万ウォン(約2万5,000円)の初値を付け、時価総額は8,800憶円程度まで膨れあがりました。その後株価を下げたものの、この日のビックヒット株の売買代金は、1995年以降のIPO株の初日売買代金ランキングで歴代1位となりました。

ビッグヒットは社員や幹部にもストックオプションを付与しており、株式を保有することが可能です。この上場は社員にとっても、ビッグヒットで働く大きなインセンティブとなったことでしょう。

当然BTSのメンバーも株式を保有しており、このIPOにより一気に大富豪の仲間入りをしたと言われています。とはいえ、既存の株主は数か月から一年株を売却できない制度「ロックアップ」が適用されます。既存株主がすぐに株式を売却することで起きるである市場の混乱を防ぐ目的があります。

そのため、BTSメンバーや社員たちは、IPOにより資産価値が上昇した株式を引き続き持っているという状態になるでしょう。

ビッグヒットのビジネスモデル

ビッグヒットの主力ビジネスが「BTS」であることは言わずもがなですが、“間接参加型”のビジネスも拡大中。間接参加型のビジネスは、2019年には全体の売り上げの45%にまで達しています。

間接参加型のビジネスの中には、BTSをアニメ化した事業、スターバックスなどとコラボ商品などが含まれています。

この間接参加型のビジネスの中で最も興味深いのが、「weverse」というアプリおよびウェブプラットフォーム。このアプリでは、ビッグヒットのアーティストとビデオミーティングをするなどのコミュニケーションが可能です。

株価にも影響……メンバーの兵役が心配の種に

BTSファンなら、韓国人の男性に義務付けられている兵役について気になっている人もいるでしょう。韓国では18歳以上の男性は2年間の徴兵義務があり、28歳までに入隊することが原則です。

日本でも人気の高い「BIGBANG」も、メンバーの兵役やスキャンダルによって兵役を終えたメンバーもいるのにグループとして目立った活動はまだ見られません。運営やBTSファンにとっても、今後を考えるうえで非常に気になるポイントになるでしょう。

世論調査によれば、BTSの徴兵先延ばしにする法改正について賛成とした人は約6割近くに上ることが分かりました。韓国では、徴兵制度は絶対。かつて徴兵を逃れようとした芸能人がいまだに国に帰れないという状況があるなど、非常に重要な問題なのです。

半数以上の人がBTSの活躍を見て、彼らの徴兵を遅らせることに賛成している現状。どのように判断が下されるのか、注目が集まっています。

世界中で愛されるBTSの今後と、ビッグヒットの株価に注目

誰もが認める世界的なアーティスト、BTS。このようなアーティストを育て、擁する芸能事務所の株式に高値を付けられたことにはなんら不思議はありません。 特に、BTSファン(Army)の方はBTSの株式を持つことで彼らにプラスになるならと、株式を購入したくなる人も多いでしょう。

しかしながら、株式を購入する場合は、収益対比どのくらいの株価がつけられているかを確認することが大切なポイント。株価と会社のビジネスモデル、収益の関係をしっかり把握して購入するか否かをジャッジしていきましょう。

公募価格よりも高い価格で取引された株価は、上場から数日で大幅に下落中。日本のSNSでは「株の払い戻し」という違和感のあるワードもトレンド入りし、メディアも韓国の投資ビギナーの戸惑いについて報じています。一方で公募価格に近付いている状況をみると、一般的な“適正価格”に近付いているともいえるでしょう。

いずれにせよ、韓国取引所に上場しビッグヒットがここまで大きな話題になるのはBTSの人気があってこそ。今後はアーティストとしての活動に加え、所属事務所の株価にも注目していきましょう。

文/山根ゆずか