消費者にとって身近な存在のコンビニだが、現場を支える加盟店は多くの負担を強いられている。国内大手3社の加盟店オーナーたちの本音を聞いた(記者撮影)

2020年9月、公正取引委員会はコンビニ本部と加盟店の取引等に関する実態調査の報告書を発表した。公取は本部が加盟店に対し24時間営業を強制すれば、独占禁止法違反になる可能性があるなどの見解を示し、本部への改善を要請した。

昨年2月に大阪府・東大阪のセブン-イレブンが自主的に時短営業をして以降、経済産業省で「新たなコンビニのあり方検討会」が設置されるなど、本部と加盟店との関係について見直す動きが出始めている。こうした流れを受けて、今年9月には国内店舗数で業界4位のミニストップが40年間改正をしてこなかった加盟店契約を一新すると発表した。

消費者にとって身近な存在のコンビニだが、人件費の増加など加盟店は大きな負担を強いられている。本部と加盟店との関係を見直すという、昨今の動きについて加盟店オーナーたちは何を思うのか。セブン、ファミリーマート、ローソンという国内大手3社に加盟するオーナーの本音を聞いた。

問題解決を先延ばしした“しわ寄せ”

――9月に報告書が発表された公正取引委員会の調査では、全国にある5万7524店の加盟店にアンケートを送付し、21%にあたる1万2093店が回答しました。

ファミマ加盟店オーナー(以下、ファミマオーナー):公取の報告書は結構踏み込んでいる印象だった。かつてファミマの本部は、廃棄ロスが多いおでんの販売取り止めなどに難色を示していたが、2019年におでんの販売をやめる店舗が増えたという内容の記事や公取の報告書が出たことで、おでんを販売しないことなどに本部は何も口を出さなくなった。


新たな加盟店契約を発表したミニストップ(記者撮影) ※こちらのフォームではコンビニのフランチャイズ経営に関する情報提供をお待ちしております。

――コンビニ業界の現状をどう見ていますか。

ローソン加盟店オーナー(以下、ローソンオーナー):問題解決を先延ばしにした“しわ寄せ”が来ている。2009年から日本の人口が減って店舗数増加が止まりつつあったが、2011年の東日本大震災を契機にコンビニはライフラインだと思われるようになった。そこで本部は人手不足を認識していたものの、売り上げが上がっているので出店を加速し、結果として店舗は飽和状態になった。

他方、店頭では業務が増えている。メルカリの発送やアマゾンの商品の受け取りなど、時間がかかるレジ業務が増えたが、加盟店の利益は1件あたり1.5円〜数円程度にとどまる。1店舗当たりの売り上げを以前より微減か現状維持にするために業務を継ぎ足した結果、業務量は以前より2〜3割増加した。

セブン加盟店オーナー(以下、セブンオーナー):ローソンやファミマを見ていてエグいと思うのが、加盟店オーナーが複数店舗を経営する際に、従業員の融通が利きやすい既存店に近い場所ではなく、マネジメントが困難な遠い立地に出店させられているケースだ。知り合いのファミマオーナーは、店舗数は私よりも多いにもかかわらず私よりも全然儲かっていない。

セブンは1人のオーナーに滅多に何店舗もやらせない方針で、1店1店採算を出さないといけないが、それでも大量出店の弊害で苦しんでいる人もいる。

本部は人手を割くコストを見ていない

――大手コンビニチェーンでは現在、加盟店の売上高から商品などの仕入れ原価を引いた粗利益を本部と加盟店で分け合っています。その結果、売れ残りの廃棄ロスや人件費といった営業経費の多くは加盟店の負担となります。こうした「コンビニ会計」のあり方をどう見ていますか。

ローソンオーナー:かつては加盟店が本部に支払うロイヤルティー(経営指導料)をもとに本部が商品開発や広告などを行うことで、加盟店が恩恵を受けていた。だが、すでにローソンの知名度は高く、ロイヤルティーが本部の内部留保となっている。一方で、人件費は高騰し、加盟店の利益は減っている。コンビニ会計を改革するだけで、加盟店の利益は月何十万円も増える。

例えば、ローソンでは一部店舗でウーバーイーツに対応しているが、開始当初は売り切れ品を販売しないために販売対象商品200品目の在庫を2時間に1回目視でチェックする必要があった。本部は売り上げにはコミットするが、ロイヤルティーを分けた後の経費は加盟店持ちなので、本部は人手を割くコストを見ていない。 負荷が重いという声が上がり現在では1日3〜4回まで減少したが、目視でのチェックは残っている。

ファミマオーナー:昔はおかしなことはあるけれど儲かっていたからいいやと加盟店は思っていたが、今は人件費の高騰や過剰な出店で儲からなくなり、オーナーが怒り始めている。

――9月にはミニストップが2021年9月から運用開始する新たな契約形式を発表しました。新契約では仕入れ原価に加え、廃棄ロスや人件費、従来は本部負担だった賃料など、店舗運営に必要な経費をすべて差し引いた利益を加盟店と本部で分け合う仕組みです。

ファミマオーナー:あそこまで踏み込んだ内容は、店舗数が少ないミニストップだからできたことだろう。

ローソンオーナー:びっくりした。英断だと思う。ただ人件費をいくらで抑えるよう経費にも口出しすることでオーナーの独立性がなくなり、ただの業務委託か子会社になる可能性がある。

――業界大手が採用する契約では、加盟店で売り上げさえ立てば本部の収入となります。そのため本部が加盟店に対し、商品を多く発注するように強く求めていた、という話も聞きます。

ローソンオーナー:商品発注について本部社員がぐいぐい言ってくるのは、5年くらい前がピークだった。この1年半で大きく変わり、今はだいぶ減っている。しかしこの数年間に入社した本部社員は、売り場作りなどプロセスではなく発注数を見るやり方しかしていないので試行錯誤している印象だ。

また、本部の組織が縦割りで、例えば弁当でも常温とチルドで部署が違うので両方の部署がたくさんの商品を店舗に入れようとするケースもある。

セブン本部が作っていた加盟店のランク表

セブンオーナー:かつては中元や歳暮の商品をどれくらい仕入れたかという加盟店のランク表を本部側が作っていた。それを基に本部社員が、「お宅の店舗は順位が低いので、どんどん商品を発注しましょう」と無理強いをしていたが、本部内でランク表の作成が禁止となり、そういうことができなくなった。良くも悪くもストレスをかけないと加盟店は発注に動かない部分があるが、どうマネジメントするべきかわからない本部社員もいるようだ。

ファミマオーナー:店舗を指導する本部社員も、加盟店オーナーと本部の板挟みとなり大変だ。ノルマがあり、加盟店が発注しないと本部社員が自腹で買わなければいけない。そのため、注文したくなかったおでんを発注したことがある。

おでんはセール中には売れるが、セールが終わると8〜9割を捨てている。廃棄ロスの予算のうち、おでんの分を弁当や総菜の発注に回せば売り上げは上がる。ファミマでは2020年からおでん販売が選択制になったので、おでんをやらないほうが、売り上げが伸びると本部も気づくのではないか。

――加盟店の皆さんはセブン、ファミマ、ローソンの社長をどう評価していますか。

セブンオーナー:セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は大きいビジョンに立っておらず、短期的な加盟店の不満をなくそうとしている。「しんどいけど乗り越えよう」というものはない。

ファミマオーナー:セブンは昔から加盟店に対して高圧的で、頭から押さえ込んでいるから憎まれている印象。永松社長は顔が見えず、何を考えているかわからない。

加盟店からは評価する声も

ファミマオーナー:ファミマの澤田貴司社長は、ただのパフォーマンスという人もいるが、私は心の底から加盟店をよくしていこうと思っている印象を持っている。レジ操作の簡略化や2020年6月から開始した24時間営業の選択制は澤田社長のおかげ。これと言ったものすごい実績はないが、加盟店としては大きな何かより、レジ操作のようにちょっとした気づきを改善して土台を強くするほうがありがたい。高柳浩二会長の印象はまったくない。

セブンオーナー:ファミマはヒット商品がなく、知り合いのファミマオーナーは何人も「伊藤忠の販売店じゃない、ふざけんな」と言っている。

ローソンオーナー:2016年に社長に就任したローソンの竹増貞信社長は、大きなことを言わなくて最初の頃は地味だと思った。だがセルフレジにもなるレジを導入するなど、現場目線が意外とある。4年前よりコンビニの業務が楽になっている。あと、2020年度から本部社員の評価基準として加盟店の利益をKPIにしたのは、ミニストップほどじゃなくても思い切ったことだ。

トータルでは竹増社長に対しプラスの印象を持っているが、コンビニ会計の改善は後回しにしている。デジタル化など改善の小出しはするが、本丸は最後まで引っ張りたいのが見える。

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