高速道路のでは「渋滞ウォッチャー」が存在する!?

 高速道路を走行しているとしばしば見かける電光掲示板。この先のICへの所要時間や、安全運転を促すメッセージなどが表示されることが多いですが、渋滞発生時には「この先渋滞〇〇km」といったようにそのおおよその距離を示すことがあります。
 
 ドライバーにとって有益な情報ですが、そもそもどうやって距離を調べているのでしょうか。

よく見かける「ここから渋滞●●km」。どのようにして渋滞情報を収集しているのか。

 NEXCO東日本によると、高速道路における渋滞とは「時速40km以下で低速走行あるいは停止発進を繰り返す車列が1km以上かつ15分以上継続した状態」を指すとしています。つまり、この状態であるかどうかを検知して渋滞情報に反映させています。

【画像】まじで渋滞は勘弁…。 ハマった時のポイントを見る!(12枚)

 では、どのようにしてこれを検知しているのでしょうか。NEXCO東日本の担当者は次のように話します。

「高速道路には『トラフィックカウンター』と呼ばれる計測器が埋め込まれています。

 トラフィックカウンターは概ね2km間隔で配置されており、通過するクルマの台数、大型車、小型車の判別、速度などを計測し、クルマの速度から高速道路が渋滞しているかどうかを判別しています。

 トラフィックカウンターは、高速道路の本線上空に設置されている機械で、しばしばオービスと間違われることもあるほか、道路の下に埋め込まれている場合もあります。

 このトラフィックカウンターの設置されている場所を通過した台数の状況によって、渋滞を検知しているようです。

 さらに、一部の高速道路ではCCTVカメラによるチェックもおこなっており、トラフィックカウンターと同様に、道路管制センターへと情報が送信される仕組みとなっています。

 一方、すべての渋滞情報をトラフィックカウンターやCCTVカメラだけで判断しているわけではないといい、前出の担当者は次のように補足します。

「トラフィックカウンターは、すべての道路に2km間隔で埋め込まれているわけではありません。

 そこで、高速道路を巡回している交通管理隊や、料金所の係員などが渋滞を確認して、道路管制センターに連絡をしています」

 つまり、機械と人のハイブリッド方式で渋滞をチェックしているといえます。これらの情報はすべて道路管制センターへと集められ、各電光掲示板へと1分間隔というほぼリアルタイムで配信されています。

Googleマップの渋滞情報はどのような仕組み?

 最近では、スマートフォンのナビアプリを使用してドライブする人も増えてきました。

 運転中にスマートフォンを使用しないように注意する必要はありますが、手軽にかつ無料で使えるナビという点で非常に便利なものといえます。

 ナビアプリの代表格である「Google Map」ですが、正確な渋滞情報の表示があることも人気の理由のひとつです。では、このGoogle Mapの渋滞情報はどのように調査しているのでしょうか。

 Google Mapに詳しい業界関係者は次のように話します。

「Google検索を筆頭に、Googleは自社サービスがどのようにデータを集計しているのかを原則として公開していません。

 Google Mapの渋滞情報についても同様ですが、その元となるデータ自体は『プローブ情報』と呼ばれる、各Google Mapをインストールしているスマートフォンから匿名のGPSデータとして自動的に取得しています。

 例えば、高速道路上にあるスマートフォンの移動速度が、10km/hならば渋滞であると認識されます。

 当然、1台だけのデータで判断しているわけではなく、近隣にある複数のスマートフォンからのデータを統合して判断しているようです。

 また、クルマとバイクを判別する機能もあるとされており、渋滞のなかでバイクが通常のスピードですり抜けをしても、渋滞情報には影響がないといわれています」

近隣のGPS情報を収集しているため、Googleマップの渋滞情報は精度が高い?

 こうしたプローブ情報を用いた渋滞の判断は、ホンダの「インターナビ」などでもおこなわれています。

 当然、データが多ければ多いほど渋滞情報は正確となるため、世界でもっともインストール数の多いアプリのひとつであるGoogle Mapの精度は、ライバルに比べて相当なものです。

 しかし、この仕組みを逆手にとったある実験が最近話題になりました。

 ドイツにある現代アーティストは、Google Mapをインストールした99台のスマートフォンを手押しクルマに載せ、道路をゆっくりと歩くことで、Google Map上に人為的に渋滞を引き起こしたのです。

 当然、実際に渋滞は発生していませんが、Google Map上では渋滞が発生しているため、現実のクルマにも影響を与えることが可能ということを示しました。

 これはあくまで現代アートとしておこなわれたもので、現実社会への影響はほとんどなかったようです。

 また、少数のクルマが通常のスピードで走行するだけで、Google Map上でも渋滞は消滅したことから、あらためてGoogle Mapの精度が明らかになりました。

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 普段、何気なく見ている渋滞情報ですが、その背景にはさまざまな最新技術があります。

 ちなみに、Google Mapで位置情報の自動送信をおこないたくない人は、アプリの設定で変更することができます。