終着駅が他路線とつながらない行き止まりの路線、ローカル線の旅などではひとつのハードルにもなりますが、その路線からバスで別の路線へ移動できるケースも。旅の魅力を大きく広げる可能性のある「ワープ」ルートを紹介します。

南アルプス山中の駅から静岡市街へワープ!

 鉄道路線のうち、ほかとつながらず行き止まりとなった路線は、人間の盲腸にたとえて「盲腸線」とも呼ばれますが、その終着駅あるいは途中駅付近からバスが発着し、別の路線に通じているケースがあります。そのようなルートをうまく旅に組み込めば、同じ経路をもう一度辿ることなく別の都市へ直接移動でき、経路の範囲が大きく広がるかもしれません。

 今回は東海・近畿地方の行き止まり路線と、そこから「ワープ」できるようなルートを5つ紹介します。なお、記事内にある情報は、2020年10月現在のものです。

【静岡】大井川鐵道 井川駅(静岡市葵区)

 東海道線の金谷駅を起点に、大井川と並行して北上していく大井川鐵道。途中の千頭からは機関車が客車を牽引する形で、険しい山間部を抜けていき、終点・井川駅に到着します。道中には日本唯一の「アプト式区間」や、国内屈指の秘境駅である奥大井湖上駅や尾盛駅など見所が多数あります。

 金谷駅から井川駅までは65kmあり、全線乗り通すと片道だけで約3時間かかります。南アルプスの山中にある井川駅ですが、元来た経路を再び辿る以外に、静岡駅へ直接抜けるバスルートがあります。

 そのルートは、井川駅から「井川地区自主運行バス」に乗車、いくつかの峠を越えて、横沢バス停で静岡駅行きの静鉄バスに乗り継ぐというものです。チャンスは1日1回で、井川着15時26分の列車から、駅前を15時43分に出発する横沢行きバスに乗ると、横沢での乗り継ぎを経て、静岡駅への到着は18時27分です。


横沢バス停で静岡駅行きのバスに乗り換え(2019年6月、乗りものニュース編集部撮影)。

 なお、「井川地区自主運行バス」はワゴン車で運行され、乗車定員は9名。定員を超えた場合は乗車できず、また井川地区の住民の利用が優先となるので注意してください。

行きとは違うルートで、次の目的地へ

 他の県を走るローカル路線にもそれぞれ、終着駅から別の土地へワープするルートがあります。

【岐阜県】明知鉄道 明智駅(恵那市)

 中央本線の恵那駅を起点に明智駅までを結ぶ明知鉄道は、約25kmの盲腸線です。明智駅から名古屋方面に向かう場合、恵那駅まで引き返すのに比べ、明智駅から瑞浪駅までバスで向かうと距離的にショートカットになります。

 この区間は、東鉄バスの路線が1日に数本運行されており、約40分で駅どうしを結んでいます。


恵那〜明智間25.1kmを結ぶ明知鉄道明知線(2009年9月、恵 知仁撮影)。

【滋賀県】信楽高原鉄道 信楽駅(甲賀市)

 信楽高原鉄道は、JR琵琶湖線(東海道本線)の草津駅から草津線で内陸へ21kmの貴生川駅を起点とし、さらに内陸の信楽駅までを結ぶ、距離14.7kmの路線です。

 終点の信楽駅からは、かつて琵琶湖に近い石山駅方面や、山中を越え奈良県側へ抜ける路線バスが多く運行されていました。しかし、現在は甲賀市コミュニティバスが平日の早朝と夕方に計2往復、京阪石山坂本線の石山寺駅とを結ぶのみです。

 信楽駅から石山駅へ抜けるもう一つのルートが、MIHOミュージアムで乗り継ぐ方法です。甲賀市コミュニティバス「田代・畑・陶芸の森巡回ルート」で「美術館」バス停まで向かい、そこから石山駅行きの帝産バスに乗り換えられます。なお、一部の便はMIHOミュージアム開館日のみ運行となっているため注意が必要です。

ワープマニア向け? な盲腸線脱出ルート

 目的地までつながらなかった路線の終着駅から、本来の目的地まで結ぶバスルートもあります。

【岐阜県】長良川鉄道 郡上八幡駅(郡上市)

 長良川鉄道も大井川鐵道と同じく、川沿いを上流の山間部へ走っていく鉄道です。高山本線の美濃太田駅を起点に、終点の北濃駅までは72.1km、直通列車で約2時間の道のりです。


長良川鉄道の関口駅の入口はコンビニになっている(画像提供:長良川鉄道)。

 現在、終点・北濃駅や美濃白鳥駅から他の地域へ抜けるバス路線はありません。しかし、徒歩移動を伴うものの、越美北線の九頭竜湖駅(福井県大野市)や東海北陸道の「高速ひるがの高原」バス停、高山市荘川地区へ移動することは可能です。ただ、いずれも本数が僅少であり、時間も体力も必要となるため、決しておすすめはしません。

 現実的なワープルートとしては、いったん郡上八幡駅まで戻ったあと、高速バスで高山駅方面へ向かう方法があります。郡上八幡駅から約2kmの距離にある郡上八幡インターの高速バス停に停車し、高山駅へ向かうバスは、複数のバス会社が運行しています。

【三重県】JR名松線 伊勢奥津駅(津市)

 名松線は三重県の松坂と伊勢奥津駅を結ぶ路線ですが、もともとは路線名の通り、名張までつなぐ計画がありました。その連絡をバスが担っています。

 近鉄大阪線の名張駅から、三重交通の17時35分発の「奥津駅前」行きで直行が可能です。反対に伊勢奥津駅からは、11時31分発の津市コミュニティバスで終点・飯垣内(はがいと)まで行くと、名張駅前行きの三重交通バスに乗り換えられます。ただし、津市コミュニティバスは平日のみの運行です。

 なお、平日限定で、峠を約2.5km徒歩移動することにより奈良県側の敷津バス停と三重県側の杉平バス停をうまく乗り継ぐプランもありますが、やはり自己責任でお願いします。