今から13年前、桟橋から浅瀬の海に飛び込んで下半身麻痺となった男性が今月初旬、同じ場所で溺れている男性を救った。この様子は動画に収められ、『RCN Radio』『LADbible』などが伝えて拡散。男性の強さを称える声が多数寄せられている。

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ロシア連邦クラスノダール地方アナパに住むニキータ・ヴァンコフさん(Nikita Vankov、26)は今から13年前、桟橋から海に飛び込んで脊椎を骨折し下半身が麻痺してしまった。しかしそれから必死にリハビリを続けたニキータさんは、欧州の障がい者の競泳大会で活躍したり、ロシアで初めての障がい者ダイバーとして認定されるまでになった。

ニキータさんは自分の経験を語り人々の士気をあげる“モチベーショナル・スピーカー”として講演も行っており、今月6日には13年前に事故があった桟橋に、自身のドキュメンタリーの撮影でやってきた。

その日、黒海を臨む桟橋で車椅子を押してもらっていたニキータさんは、桟橋下の海の中に3人の男性が泳いでいることに気が付いた。よく見ると1人は溺れかけており、その男性を沈ませまいと2人の男性がもがいていた。

水中でのレスキューの仕方を学んだことがあったニキータさんは最初、桟橋の上から2人の男性にアドバイスを送り「泳ぎが得意な人はいないですか?」と叫んで周囲に助けを求めた。「いくら泳ぎが上手くても、下半身麻痺の自分が救助をするのは危険を伴う」と考えてのことだ。

しかし3人は水面から顔を出すのがやっとで、溺れている男性はかなり危険な状態にあった。ニキータさんは「このままでは岸までもたない」と意を決し、シャツを脱ぐと桟橋に腰を下ろしてジャンプした。

この様子は動画に収められており、ニキータさんが腕を大きく回して3人のもとに近づいていくのが見て取れる。そして水面に顔をつけて溺れている男性を抱きかかえると、背後に回って身体を支えたり、水中に潜って男性の身体を押し上げている。

ニキータさんは「溺れている男性は何度も水の中に頭を突っ込んで沈んでしまってね。なんとか呼吸を確保して、岸まで連れて行こうと思って必死だったんだ。そうしたら遠くにボートが見えてね。助けを求めて叫んだよ。そして全員が無事に引き揚げられたんだ」と語ると、こう明かした。

「溺れていた男性は身体が痙攣していたんだ。それにもう1人の男性は脚がつっていたそうだ。あの時思い切って海に飛び込んで本当に良かったよ。」

「それにしても、13年前と同じあの場所で人を助けることになるなんて、思いもしなかったね!」

実は13年前、ニキータさんが桟橋から海に飛び込んだ時は、海底に思いきり頭をぶつけたそうだ。

「誰も自分が飛び込んだところを見た人がいなかったから、海底を15メートルくらい這って岸に向かったんだ。『僕は生きる。僕は生きる』って言い聞かせながらね」とニキータさん。この事故から車椅子に乗れるようになるまで1年半かかったそうで、今も歩くためのリハビリをコツコツと続けているという。

ちなみにこの動画が投稿されたニキータさんのSNSには「救助の様子を見たよ。あなたにとてもインスパイアされた。勇気をありがとう」「心も身体も強い人。まさにアイアンマンだね」といったメッセージが届いている。

画像は『RCN Radio 2020年10月12日付「Héroe que en silla de ruedas: se tiró al mar y salvó a un hombre que se ahogaba」(Captura de pantalla de Instagram Nikvankov)』『Вдохновитель Никита Ванков 2020年8月5日付Instagram「Счастливые моменты」、2020年10月6日付Instagram「Спасение!」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)