「妻と娘は親戚の家に預かってもらっています。騒動のせいでイタズラ電話が相次いで、気が病んでしまい……」

【写真】堀江氏がフェイスブックに投稿した文書。ホリエモン節全開で、怒りを爆発させている

 広島県尾道市にある餃子店『四一(よんいち)餃子』の店主、川端眞一さん(47)は憔悴(しょうすい)した様子で語る。

餃子店、店長を直撃取材

 同店は現在、インターネット上で大バッシングを受け、いやがらせなどがやまず、休業を余儀なくされている。

 ユーチューバーや不審者が押しかけてくることもあるようで、記者が取材に訪れた際も初めは警戒した様子だった。

 事の発端は、9月22日にホリエモンこと実業家の堀江貴文氏(47)が知人2人を連れて店を訪れたときのこと。

 店のドアには「マスク未着用の方は入店お断りします」と貼り紙がしてあった。

「厨房(ちゅうぼう)で餃子を焼いていたら、マスクをしていない人が来たので“注意して!”と妻に行ってもらいました。貼り紙のことは気にしていないようすでした」(以下、川端さん)

 店頭では堀江氏以外の同行者がマスクをしておらず、妻が「入店できない」と伝えた。

「すると堀江さんは“食べるとき、マスクはずすでしょ”などと反論してきました。そもそもマスクをしていない人は入れないので、話がかみ合わない」

 トラブルを察知した川端さんが駆けつけ「堀江さん?」と声をかけると、堀江氏が「いま、堀江は関係ねえだろ」と怒鳴ったので、“面倒くさいから帰れ”と堀江氏らの入店を拒否した。

「過去にもマスクの着用をめぐってお客さんともめたことがあります。ルールに従わない方は営業妨害と判断して、入店拒否すると決めていました。今回もこれ以上続けると、ほかのお客さんに迷惑がかかってしまうので、“帰れ”と厳しく伝えました」

 直後、堀江氏はフェイスブックで店が特定できる形で「マジやばいコロナ脳。狂ってる」などと誹謗(ひぼう)するような投稿を行った。

 それを見たネットユーザーがイタズラ電話をするように。

「電話は深夜にも及びました。非通知ばかりで、出ても“お前はクズだ”“つぶれろ”と言われる。営業時間内だけで1日100回はかかってきました」

 通常の営業が行えないほどパニックに陥り、10月3日に店は休業となった。

「妻は明るさが取り柄。それが、騒動で落ち込んで一日中寝転がって食欲もないし、げっそりしてしまった。親の気持ちを察してか、娘も様子がおかしい。結局、2人で避難することになりました」

 コロナの影響で春先にはアルバイトが自主的に辞め、川端さんひとりで営業するのは困難なため、再開のめどはたっていないという。

 それでもローンの支払いなどを含め月に40万円の出費が生じるので、先行きは暗い。

「今年はコロナの感染拡大を受けて何度も休業を繰り返してきました。8月にやっと営業を再開し、軌道に乗り安心していた矢先に起きたのが今回の騒動でした」

 コロナに苦しめられてきた経緯があったからこそ、対策への思いは強く、マスク着用のルールにも厳しかった。

「観光地だから、感染者がひとりでも出たら終わりです。ほかのお店にどうこう言うのはおこがましいので、せめてうちだけでも入店時のマスク着用を徹底しようと思いました。それが尾道を守ることにつながるはずだという一心です」

 食事中にはマスクをはずすので、入店時のマスク着用に意味があるのか──というホリエモンの主張もわからないではないが……。

 堀江氏のSNSの投稿を見て、川端さんは反論するブログなどを公開。その書き方が過激で、バッシングを増長させることに。

「何も言わないと僕たちの口のきき方が悪くて物事をこじらせたと世の中に思われてしまう。ただ、僕の文章は感情に任せて書いたので、火に油を注いだなと反省しています」

 そんな川端さんの言い分とはどういうものなのか?

「そもそも、マスクをしていなかったのは堀江さんの同行者だったマネージャーの方でした。彼に話しかけてマスク着用をお願いしていたのに、終始無言だったんです」

 当のマネージャーとは会話にならず、マスクを着用していた堀江氏がひたすら突っかかってきたという。

「高圧的に怒鳴りだしたので、入店を拒否しました。数十秒後に餃子が焦げることが確定している身としては、“食べるときマスクはずすでしょ”と何回も同じことを聞く人に時間をさけません。

 しかも、マスクをするべき人がひと言も何も発しない時点で、解決する意思はないと判断しました。貼り紙をしてルールは伝えてありましたから」

 記者はそのマネージャーにも取材を申し込んだが、条件が折り合わず実現しなかった。

法律的見解は……

 マスクを着用しない客に対して入店拒否することは店の対応として問題はなかったのか。『フロンティア法律事務所』の黒嵜隆弁護士が解説する。

「今回のように、コロナ禍でマスクを着用していない人の入店を断ることは認められると考えます。飲食店の感染防止対策は政府や地方自治体の方針でもあり、入店の際に一律にマスク着用を求めることは感染防止対策として妥当な対応であるからです」

 それでは、堀江氏のフェイスブックでの投稿はどうか。

「刑事上の名誉毀損罪や業務妨害には該当しないと考えます。“まじやばいコロナ脳。狂ってる”といった文言などで、お店の営業を妨害する意図まで認められるかは疑問です。

 ただし、民事上の不法行為として損害賠償請求を受けることはありえます。堀江氏は自身が持つ影響力の大きさから、自分の投稿の結果として、お店がSNS上で攻撃の対象となることを想像することはできたはずだからです」

 堀江氏は10月5日にも、ツイッター上で「俺はムカついたのでマスク原理主義ムカつくーってFB(フェイスブック)に書いただけ」と投稿し、営業妨害を否定している。

 もし民事訴訟を起こして勝つことができても、見合った賠償が得られるとは限らない。結局、立場の弱い側が泣き寝入りする場合が多いという。

「今回の騒動で有名になっただろうと言われるなら迷惑な話です。大事なのは名誉やお金じゃない。私は家族と幸せに過ごしたいだけなんです。お客さんが喜んでくれたらそれでいいんです」

 と、川端さんは妻の回復を待ち、希望を捨てていない。

 自身の影響力を顧みなかった堀江氏にも問題はある。しかし、最も糾弾(きゅうだん)されるべきなのは、イタズラを行った匿名のネットユーザーたちだろう。