精密なフィギュアで知られる、玩具メーカー「キタンクラブ」(株式会社奇譚クラブ)。累計1000万個以上を売り上げた大ヒット商品「コップのフチ子」やネコ用のかぶりものなど、17シリーズ約100カテゴリーものデザインやカラーを展開し、1000種はあるであろうガチャガチャトイ(カプセルトイ)を開発している。

【写真】ヒット作&失敗作を紹介!人気の「おにぎりん具」の誕生秘話も

計り知れないほどの商品の中にはヒット作はもちろん、「こんなものまで!?」という失敗作もあるはず。商品開発の裏側やなぜヒットしたのか(または失敗したのか)、最近の傾向や今後の目標などを広報担当者に聞いてみた。

■意見が飛び交う会議で生み出されるシュールな商品たち

まずは、株式会社奇譚クラブ・広報の斎藤さんに、商品開発の裏側や秘話を聞いてみた。

「キタンクラブは月に1回、スタッフなら誰でも参加できる企画会議を行っています。ほぼすべての商品はこの企画会議で決まります。A4用紙に簡単な企画をまとめ、みんなに見せてプレゼンするのですが、早いものは見せてすぐに決定します。逆に見せてからみんなの反応に時間がかかるものは、社内の企画会議を通らなかったり、通ってもあまり売れなかったりすることが多い印象です」

傾向としては、笑いが上がったりウケた企画ほど数秒で決まるという。即興的に人の心を掴む大喜利のような現場で、シュールで突飛な商品が生み出されているようだ。

■【ヒット作1】ネコが腰かけているというヘンなシチュエーションが映える

ヒット商品の中からイチオシを4種選りすぐってもらい、ヒットの理由も教えてもらった。

まず1つ目は「座る猫」。フィギュアのクオリティが高いためか、ネコが座っているというおかしなシチュエーションでも、不思議ときっちり成立している。

「もともと人気のあった『動物系フィギュア』に『SNS映え要素』をプラスした部分がウケてヒットしたんだと思います」

■【ヒット作2】発売まで5年かかったおにぎりの具材指輪

2つ目は、おにぎりの具材を指輪のモチーフにした「おにぎりん具」と「おにぎりん具2」。

「企画立ち上げから発売まで5年かかりました。発売すれば絶対にお客さまに喜んでもらえる自信がありましたが、開発費がとても高く販売価格が300円以上になることが確定。カプセルトイは200〜300円が主流なため、販売価格をどうするかがなかなか決まりませんでした。

企画会議の場で『絶対話題になるしおもしろいから赤字になっても発売しちゃおう!』ということになり、赤字覚悟で300円という価格設定にしました。最初の受注は期待していたほどの注文が集まらず大幅赤字に。しかし発売するとSNSを中心に話題となり、売り切れ店が続出!すぐに追加生産が決定し、その赤字を帳消しすることができました」

「カプセルトイといえばプラスチック製の丸いケースの中にフィギュアなどが入っているおもちゃですが、おにぎりん具は『おにぎり』がカプセルトイマシンから直接コロンと出てくる姿が『かわいい!』と大変好評で、その見た目のインパクトから話題になりました。また『おにぎり』は、日本国民全員が知っている『認知度100%のキャラクター』なので、老若男女すべての層が楽しめるのもヒットの要因の一つかと思います」

鮭や梅といった親しみのある具材がカラフルな指輪になっているので、つい欲しくなるのもうなずける(!?)。

■【ヒット作3】ネコのかぶり心地にもこだわった本格派

そして3つ目は、ネコ用のかぶりもの「かわいい かわいい ねこうさぎちゃん」。ネコを飼っているネコ好きスタッフが集結し、ネコの負担にならないよう安全性を一番に心がけ、修正や試着テストを繰り返して完成させた自信作だ。

「ねこのかぶりものシリーズは、これまで第31弾をリリースし、シリーズ累計約550万個を突破しています。ただでさえかわいいネコちゃんが『うさぎ』や『フルーツ』、『さかな』などに大変身。特に『ねこうさぎちゃん』は人気が高く、かぶればピンと立った長いうさ耳がとにかくキュートで、写真を撮ってSNSに投稿するお客さまが多いことがヒットに繋がったのだと思います。またカプセルトイでのネコ用コスチュームは、通常にくらべ価格がリーズナブルなのも、ヒットの理由として大きかったかもしれません」

■【ヒット作4】独特のデフォルメ感とリアルな繊細さが絶妙

4つ目は、お尻の下の見えない部分も徹底して作り込み、キタンクラブらしさを追求した「RBEN STUDIO アニマルフィギュアマスコット」。

「SNSで作品を見付けてお声がけした台湾の造形作家、RBEN STUDIO(リーベンスタジオ)さん。『ぽっちゃり』『でっぷり』とした独特のデフォルメ感と、細かくリアルに表現された皮膚や鱗の絶妙なアンバランスさが『かわいい!』に繋がり、ご好評頂いております」

■【失敗作1】マニアック過ぎるキモカワが伝わらないネコ

続いては、あまり公表したくない失敗作を3つ教えてくれた。

1つ目は、水色の目が不思議感を漂わすネコのフィギュア「中国的可愛的猫」。

「中国工場から素材のサンプルとして送られてきたネコのフィギュアがおもしろかったので、そのままカプセル商品として販売しました。いわゆる『キモカワイイ』がウリの商品でしたが、なかなかその魅力が伝わらずヒットには繋がりませんでした。ただ、ごく一部のユーザーからは今でも評価の高い商品のひとつです」

■【失敗作2】花粉症のユーザーから嫌われた精巧過ぎる商品

失敗作の2つ目は、花粉をモチーフにした「手のひらサイエンス 花粉マスコットストラップ」。

「花粉をモチーフに、化学の勉強でも使えるくらい精巧なものを制作したのですが、逆にそれがいけなかったのか、あまり販売結果には繋がりませんでした。花粉症のユーザーさんに嫌がられたのも一因かもしれませんね」

■【失敗作3】ニッチ過ぎて売れていない「定礎」のフィギュア

失敗作の3つ目は、街中にあるものをミニチュアにしてフィギュア化した「定礎 -マグネット&置物-」。

「商品としては置き型とマグネットの2タイプ用意し、文字の彫り込みや御影石のリアルな彩色などこだわりがギッチリ詰まった商品です。ただニッチな商品過ぎたのか、売り上げはちょっと寂しい結果となりました。ちなみに、定礎に刻まれた日付はキタンクラブの創設年月日になっているものもあります」

■独自の視点とクオリティを武器に海外作家とのコラボも

ヒット作と失敗作を紹介したが、最近の傾向としては「動物系のフィギュアが人気です。猫とカエルのアイテムが特に人気があります」とのこと。

今後の目標を聞くと、「社訓である『LOVE&AWESOME』(愛と感動)をモットーに、自分たちがおもしろいと思うものを作っていきたいです。他社のように有名なキャラクターを使った商品ではなく、キタンクラブ独自の視点から制作した商品にこだわり、特に力を入れているフィギュアの品質を大きな武器に勝負していきたいです。また、日本だけでなく海外での商品展開にも力を入れていきます。台湾のRBEN STUDIOさんのように、SNSであれば国外の作家さんとも交流が持てるので、今後商品の幅が広がっていきそうですね」と語った。

どんなおもしろガチャガチャが飛び出すのか、これからも目が離せない。

取材・文=下八重順子

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