働く堅実女子のためのビジネスで役立つマナー、今週は坂本あみさん(仮名・広告会社勤務・36歳)からの質問です。
「仕事量が多いと文句を言ったり、疲れたと言ってダラダラと作業をするだけでなく、注意をするとふてくされて態度がさらに悪くなる部下がいます。
こちらも忙しいときには目に余ると思いながら放っておいているのですが、さすがにちょっと許せない部分があって、本人を呼び出し、話をしました。そしたら、その会話を彼女は録音していて、パワハラだとして人事部に渡したのです。結果、私は厳重注意をうけることになりました。
多少感情的になっていたかもしれませんが、内容としては“勤務時間内は給与をもらっている社員としてきちんと仕事をしなさい ”ということで、会社に不利益をもたらす内容ではなく、むしろ貢献しているといっていいと思います。なのに、 私が悪いみたいに扱われて不快です。こんな理解のない会社、辞めてやろうかとすら思ってしまいました。どうしたらいいのでしょうか」
立場に差がある人間関係は、どんどん難しくなっていっている感があります。職場で指導する身になっていく30代の働く女性にとって、部下から、そして会社からパワハラ容疑をかけられるというのは不本意であるとともに、他人事ではないでしょう。このようなとき、どうすればいいのか、鈴木真理子さんに聞いてみましょう。
些細なこともパワハラの俎上にのせられる社会に
これまで、労働者の権利が曖昧で、ひどい扱いを受けながら働くということが日常化しているしている場が多くあったことは事実です。それによって心の病気になったり、働きすぎて命を落とすという悲しいことも少なくありませんでした。パワハラの公的な定義が生まれ、認識が高まったことで、多少なりとも労働者の環境が向上したというメリットは大きいはずです。
ただ一方で、相談者さんのように上の立場となった人たちから、「ダメな部下をただ注意しただけなのにひどい」「会社の利益向上のために貢献しているのに」「上に立つ人間はおとなしくしてなくちゃいけないの?」といった不満や戸惑いが噴出しているという状況も否めません。「弱いものにやさしく」という社会の正しさが、「強いものを糾弾する」という流れを生んでいるということはあるでしょう。
理不尽だとしても、いったんは受け止めるのが正解
パワハラの定義は、厚生労働省のサイトの「 職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント) 」に明記されています。また、 令和元年6月5日に「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等」の労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました。それにより、
職場におけるパワハラ防止のために対策することは、事業主の義務とされています。つまり法律に則っているわけです。
職場におけるパワハラの3要素は、「優越的な関係を背景とした言動」「業務上の必要かつ範囲を超えた言動」「労働者の就業環境が害される」です。相談者さんご本人が「多少感情的になった」と話されていることから、自覚があると考えると、会社が「優越的な関係を背景とした言動」と「業務上の必要かつ範囲を超えた言動」と判断して 「労働者の就業環境が害される」 という範疇だと認めざるを得なかったであろうと思います。
それでも厳重注意だけ、配置転換や降格なしという処分となったのは、穏便に済ませてくれたというだけでなく、相談者さんの立場も理解しているうえでだと思いますよ。それだけ、優秀なのだと思います。「こんな会社なんて」などと思わずに、今回の反省を今後の部下育成にどうぞ役立ててください。
また、告発した部下とギクシャクしないよう、冷静で平等な態度をとるよう心掛けてみてください。ムカつくところもあると思いますから、ストレスが溜まってしまうかもしれません。でもここは、あなたの将来のキャリアのためだと思ってぜひとも乗り越えてもらいたいところです。
優秀な人ほど、ダメな部下の態度が目に余るものかもしれません。
■プロフィール女子マナーの賢人 鈴木真理子
三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。
(株)ヴィタミンMサイトhttp://www.vitaminm.jp/
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