見かけるけど、よく知らないスイッチたちの意味は?

 毎日のように自分のクルマを使っていても、使うスイッチは限られており、むしろ使わないスイッチの方が多いかと思います。

 スイッチには、時計や距離計のリセットボタンのようにその計器の隣にあり、マークがなくても分かるものもあります。しかし、多くのスイッチにはスイッチを押した際の動作イメージが思い浮かぶようなマークが描かれています。

クルマにはさまざまなスイッチがある(写真はホンダ先代「フィット」のスイッチ類)

【画像】押したい! 超高級車「センチュリー」専用のスイッチを見る(12枚)

 現在発売しているクルマでよく見かけるスイッチのなかで、普段押す機会がないスイッチの一例としては、「横滑り防止装置(ESC)」のスイッチがあります。クルマが滑っているような絵柄で“OFF”と記載されていることが多いです。

 ESC(エレクトロニック、スタビリティ、コントロール)は、新型生産車については2012年10月1月(軽自動車は2014年10月1日)から、継続生産車については2014年10月1日(軽自動車は2018年2月24日)から義務化されています。

「ESC」は、急なハンドル操作や滑りやすい路面で旋回するときにエンジン出力やブレーキ圧を制御して横滑りを抑え、クルマを安定させるシステムです。

 悪路のぬかるみや雪道にハマってしまった際には、エンジン出力が上がらず脱出しにくいことからOFFにする必要が発生する場合があり、そのためにスイッチが備わっています。しかし、基本的に、安全装備機能のため、常にONにしておきます。

 この「ESC」の名称は、自動車メーカー各社によって異なります。

 トヨタは「VSC(ビークルスタビリティコントロール)」、日産は「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」、マツダは「DSC(ダイナミックスタビリティコントロールシステム)」というように、各社によって名称がバラバラです。

 さらに、日産の「VDC」にはトラクションコントロール機能が含まれているといった機能差もあり、ユーザーへの理解度が低いことが要因かもしれません。

 また、装着モデルが増えてきているのが、「車線逸脱警報」のスイッチです。このスイッチにはクルマが道路の白線からはみ出している絵柄が特徴です。一般的には「レーンキープアシストシステム」と呼ばれています。

 自動車メーカーにより性能は異なりますが、基本的には道路上の白線や黄線を超えそうな場合に警報音やハンドル支援を行うものです。前走車に自動で追従するシステム「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」と一緒に機能することもあります。

 警報音がうるさい、ハンドルの介入が入り運転しづらいなど、気になる人がOFFにするために存在しているスイッチになります。

 このスイッチも自動車メーカーによって名称はバラバラで、トヨタ(レクサス)は「LDA(レーンディパーチャーアラート)」スイッチ、ホンダは「路外逸脱抑制」スイッチ、マツダは「LDWS(レーンデパーチャーワーニングシステム)」スイッチと呼ばれています。

 最新のモデルでは、安全運転支援システムとして、車線逸脱警報のみならず、日産の「プロパイロット2.0」やスバルの「アイサイトX」では、ハンズオフ(ステアリングから手を離しても作動する)機能を搭載したモデルもあります。

 このようなモデルでは、スイッチの絵柄や操作方法はそれぞれ異なっています。

 最近採用が広がっているのが、天井部に設置されている「SOS」ボタンです。

 このボタンは、運転中に急病に襲われたり、事故で負傷した際にオペレーターへ通報することができる緊急通報ボタンです。

 緊急事態が発生したときに冷静に携帯電話で連絡すればよいものですが、いざというときは現在地の把握が難しかったり、負傷していてスムーズに対応が難しかったりすることもあります。

 そのようなとき、SOSボタンを押すだけで緊急通報することができるということは心強いです。さらに、事故でエアバッグが展開したことを検知すると、ボタンを押さなくても自動でオペレーターへ通報し、警察や消防へ連携してくれます。

 SOSボタンは、ヘルプネットというサービスがおこなっており、トヨタ(レクサス)、ホンダ、日産、マツダが参画しています。トヨタは「ヘルプネット」、日産は「SOSコール」、ホンダは「緊急通報」、マツダは「エマージェンシーコール」と呼ばれています。

 また、あわせて交通事故発生時の車両のデータを国内の事故データ約280万件をベースとしたアルゴリズムに基づき自動で分析、死亡重症確率を推定し、ドクターヘリやドクターカーの早期出動判断につなげる救急自動通報システム「D-Call Net」も2018年6月より全国運用が開始されています。

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 紹介したスイッチはどれも、メーカーや車種、機能により細かく名称が違います。ユーザーにとってわかりづらく、正しい理解を妨げる要因ですが、なぜ名称がバラバラなのでしょうか。

 国内自動車メーカーの広報は、「2016年12月に国土交通省は、衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全自動車(ASV)装置について、共通定義や名称を統一するという通達を出しています。

 名称がバラバラな理由には、法整備されたタイミングや各社の機能内容があり、商標登録上の問題も多いです。なかなか難しい問題だと思います」と話します。

これまで当たり前にあったスイッチがなくなる例も

 クルマが進化し、これまであったスイッチがなくなっている例もあります。

トヨタ「ヤリス」

 例えば、トヨタ「ヤリス」ではヘッドライトオフのスイッチがなくなりました。これは、オートライトの義務化が、新型車では2020年4月以降、継続生産車では2021年10月以降適用されることなったためです。

 ヤリスの場合は、ランプスイッチがAUTOになっていることが標準状態となっており、周囲の明るさに合わせヘッドライト・スモールランプのON/OFFが自動的に切り替えられます。

 そして、スイッチ上側にひねるとヘッドランプ・スモールランプを点灯、下側にひねると、スモールライトを点灯するようになっています。

 しかし、スモールライトとヘッドライトをすべて消したい場合もまれにありますので、そのような場合は、スイッチを下側に1秒以上ひねり続けると消灯することができるようになっています。

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 テスラ「タイプ3」などは、スイッチ類の多くをタッチパネルディスプレーに集約し、ヘッドライトやワイパー、サイドミラーの調整など、これまでのクルマには当たり前のようにあった操作専用のスイッチが排除されています。

 このようなモデルが増えていくと今後のモデルは、ほとんど使わないOFFスイッチなどはなくなり、タッチパネルディスプレー必要な際に呼び出して使うようになるのかもしれません。