女優の竹内結子さんが亡くなったというニュースが9月27日に報じられました。自死とされています。著名な芸能人の自死が相次いだことで、テレビ、新聞、ネットのニュースのどれを見ても、「自死」を見聞きしてしまう機会が増えています。

自死報道について、WHOのガイドラインに従い、記事末尾に「いのちの相談」などの連絡先を掲載する媒体が出てきました。

しかし、それだけでよいのでしょうか。自死遺族支援弁護団の甲斐田沙織弁護士は「誠実そうに見える報道が不誠実なこともある」といいます。

●自死報道を繰り返すメディア

竹内さんのニュースは9月28日の朝の情報番組でも軒並み報じられ、今(9月28日午前11時30分)でもヤフーニュースのアクセスランキングは、ほとんど竹内さん関連の記事で埋め尽くされています。

このように過熱しやすい報道において、メディアを牽制するような動きもあります。

厚労省は竹内さんの件が報じられたのと同じ9月27日、メディア向けリリースを出して、注意を呼びかけました。なお、俳優の藤木孝さん、女優の芦名星さんが同月に亡くなったときも同様の対応がなされています。

センセーショナルな自死の報道によって、「後追い」のリスクが高まることを懸念し、そのうえで、「自殺報道ガイドライン」(WHOによる『自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識 2017年版』)にもとづく、報道のありかたを示しています。

ガイドラインが例示するのは、自死関連報道において、メディアが「やるべきでないこと」「やるべきこと」です。以下に一部を紹介します。

・やるべきでないこと 「自殺の手段、現場や場所について、詳しく伝えないこと」「センセーショナルな見出しを使わないこと」

・やるべきこと 「支援策や相談先について、正しい情報を提供すること」 「日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること」 「自殺と自殺対策についての正しい情報を報道すること」

報道の方針は各媒体の自由で、ガイドラインの遵守の状況は、項目ごとに異なるようです。

たとえば、「女優・竹内結子さん死去…所属事務所『驚きと悲しみで呆然』」と題した読売新聞オンラインの記事(2020年9月27日付)では、「こころの健康相談統一ダイヤル」の連絡先を紹介しながらも、記事中では手段や自死したとされる場所を示しています。

また、「センセーショナルな見出し」の線引きは難しいですが、記事末尾に「日本いのちの電話連盟」の連絡先を示しつつ、自死したとされる場所を記載し、「芸能界に広がる自殺症候群」とタイトルを打った記事もありました。

スポーツ新聞でも、「竹内結子さん自殺か 芸能界死の連鎖のなぜ」(2020年9月29日付、東京スポーツ)など、1面で大々的に扱っています。ちなみに、東京スポーツでは、1面に相談ダイヤルの案内も載せていますし、2面ではガイドラインのことも触れてはいます。●プリキュアを見て知った自死の速報

自死遺族支援弁護団の甲斐田弁護士が竹内さんのニュースを知ったのは、27日早朝でした。

「小学校低学年の娘と一緒にプリキュアを見ていたとき、テロップに速報が流れて、竹内さんの件を知り、驚きました。『自殺とみられる』と書かれてあって、内容まで出すのか」と二度驚き、「子どもがまだ漢字が読めなくてよかった」と感じたといいます。

「公開したくないと考えるご遺族もいらっしゃるでしょうに、誰が決めてテレビ速報を出しているのでしょう。80年代にアイドルの岡田有希子さんが亡くなられて、後追いが起こりました。それからやっと、こうして報道のガイドラインなどが知られ、整備されるようになり、以前よりも自死の報道は抑制的になりましたが、それでも不十分です」

では、メディアはどのような報道を目指すべきなのでしょうか。

甲斐田弁護士は上述したガイドラインの「やるべき」「やるべきでない」の徹底を第一にあげます。

「自死の理由は複合的です。これが理由だと決め打ちするような短絡的な報道を避けてほしい。無遠慮に詳細に報じ、末尾に相談窓口の電話番号だけ載せておけばいい、というやり方が誠実か。誠実に見えて、不誠実であることもあると思います。

いのちの電話も一生懸命に頑張っていますが、マンパワー不足で10回連絡してもつながりにくいこともあるとききます。記事で紹介されることで、余計につながりにくくなっていることでしょう。

相談先は、悩んでいるかたにとって文字通りの命綱です。命綱を掴みたい人が掴めるようにしなければいけません。しかし相談機関や、自死遺族支援の団体には、政府からの予算は不十分です」●いのちの電話を「報道の免罪符」にするべきではない

報道機関の誠実さとはなんでしょうか。

「そうですね。社会には責任があると思います。悩んでいるかたから相談されて、受け止めて、助けてもらえる機関につながる体制を作る責任です。その責任を果たせるよう助けるのがメディアに求められる姿勢ではないでしょうか。

重ねて言いますが、いのちの電話の連絡先を記事文末に添え物のように記せばいいものではありません」

【取材協力弁護士】
甲斐田 沙織(かいだ・さおり)弁護士
自死遺族支援弁護団所属、神奈川県弁護士会所属、日本労働弁護団常任幹事。
事務所名:古淵法律事務所
事務所URL:http://www.kobuchi-law.jp/