中古車オークションによって相場の基準が定まっている

 クルマに限らず、中古品を探す場合、掘り出し物はないかな? と期待しつつ、あれこれ探すことは多い。実際、掘り出し物があるかどうかとなると、クルマの場合は基本的にはないと思っていい。1980年代前半あたりまではあるにはあったが、なくなった一番の理由は中古車専門雑誌が発刊されて、相場が明確になったから。

 それまでは買い取る側が、それまでの経験や扱った物件のデータを元に買い取り価格を決め、さらに販売価格を決めていたのが、グレード、年式、走行距離、装備で、明確化されてしまったというわけだ。

 ちなみに相場が確立するまでは、地域によっても価格の差があったので、買い取ったものをわざわざ運んで利ざやを稼ぐ業者もいたほどだ。

 さらに中古車オークションが開催されるようになって、ますますこの傾向は強まり、基本的には掘り出し物というのは出てくる可能性は非常に低くなってしまった。つまり中古車の価格というのは、販売利益や納車までの費用を乗せるにしても、オークションを基準に決まっていると言ってよく、それを無視して安く売るというのは、よほどのお人好しかボランティア精神あふれる人ということになろう。もちろんそんな人はいない。自分のところで売れないにしても、オークションに出してしまえばいいだけだ。

 しかし、中古車を探していると、相場より安い物件に遭遇することがある。「中古車に掘り出し物なし」と言われても、実車を見ると、それほど悪くなさそうだし、目の前に安い価格を見せられると人間というのは迷いが生じてしまうもの。結局手を出して、痛い目に遭うのだが、実際はどうして相場よりも安くなっているのか?

安いものを選ぶ際はしっかり説明を受けて納得してから購入すべき

 修復歴ありかなしかというのは、知識があまりない人でもこだわる部分だ。指導もあって、ごまかして売ることは減ってきたし、よく聞く「ちゃんと直っていれば、安く買えるので問題なし」というのはあって、これ自体は正しい。

 ただ、ちゃんと直っているかというのは、客側にはわからないし、売る側もわかっていないかもしれない。わかっていてもウソをついているかもしれないというのも客としてはわかるわけもない。じつはオークションでの出品データには修復歴あり、というのは明記されるが、それがチャンと直っているかどうかなどの表記はない。

 今まで取材したなかではちゃんとした業者だと「オークションで落として、実車が来てひどかったら、自分のところでは売らず、オークションに再度流す」という対応しているところが多い。損をしたとしても仕方がないとも言うが、そのまま黙って店頭で売ってしまうとしたら……。

 さらに機関部の程度が悪すぎることもある。そもそもオークションでの査定時にはエンジンはかけるとしても走ってチェックすることはないので、実際の走りはどうなっているかわからない。実際に出品されている会場に行けば目で見てチェックできるものの、同じく走ることはできないし、最近は遠方の会場でもネットで参加できるのでなおさらだ。修復歴ありと同じで、実車を見てみたらダメだったというのもありうるが、その場しのぎでなんとなく調子がいいようには見せられる。

 と、疑いだせばキリがないし、とりあえず安い物はとことんまで説明を受けて、走行距離はかさんでいるけど、メンテはしっかりとされているなど、納得してからでないと買わないほうがいい。プロにかかれば素人をだますのは朝飯前。結局は店選びで、最近は中古車雑誌が行なうとてもシビアな鑑定付きというのも増えているので、少々高くてもそういうものを選んだほうがあとあと泣かなくて済む。

 今回は安い掘り出し物はないという点でまとめてみたが、「中古車に掘り出し物はなし」「こんなもんですよ、は信じない」を肝に命じて、限られた予算でできるだけいいものを探してほしい。