ネット上には様々な記事が溢れている。サッカーを含むスポーツの世界も例外ではない。そうした混沌の中に巻き込まれがちになるのは、読み進めていくべき道筋が提示されていないことと大きな関係がある。ごった煮のような状態になっている記事の塊が、アトランダムに次から次へと現れる。

 その内容を理解しようと思えば、こっちの記事をまず読んでからの方がいいと言いたくなることがよくある。雑誌には、作り手(編集者)が読者に対してサービス精神を発揮する余地が残されているが、残念ながらその雑誌の時代は終わろうとしている。

 話はゴルフの話に移る。全米オープンゴルフ。松山英樹は3日目を終えてイーブンパー。首位と5打差の4位タイで最終日を迎えることになった。アンダーパーがわずか3人しかいないことでも分かるように、難コースだ。5打差は可能性を十分に抱かせる射程距離に値した。

 何と言っても全米オープンである。テニスでは先日、大坂なおみが優勝。4大メジャートーナメントで3勝目を挙げた。ゴルフのメジャートーナメントでは1977年の全米女子プロで樋口久子さんが、昨年の全英女子オープンで渋野日向子がそれぞれ優勝を飾っているが、男子はテニスもゴルフも優勝者はまだいない(2014年の全米オープンで錦織圭が決勝まで進んでいるが)。

 ところが、全米オープン最終日を前に、松山英樹の優勝を願う記事やニュースを、あまり目にすることがなかった。事の重大さに対応できていないという感じだった。前景気を変に煽るのもよくないが、これは煽らなすぎ。バランスを欠いた状態にあった。

 結局、松山英樹は最終日、78を叩き17位に沈んだ。世の中の後押しがなかったからーーとは、見当外れではない解釈かもしれない。

 開幕したスペインリーグでは、ビジャレアルの久保建英が注目を集めている。9月19日のエイバル戦では後半40分、右ウイングとして交代出場。1度、タッチライン際で巧みなステップを踏みながら相手を抜き去り、さらにゴールラインを深々とえぐりながら、チャンスを拡大させる好プレーを披露した。

 さすが久保と言いたいところだが、出場時間は前戦のウエスカ戦(13分+ロスタイム)より少ない、5分+ロスタイム。監督(ウナイ・エメリ)との相性はどうなのかとか、気になる点なきにしもあらずと言う感じで、次のバルサ戦(9月26日)に向け、手放しで喜べる状態にない。

 いま讃えるならば、久保と言うより、岡崎慎司(ウエスカ)と乾貴士(エイバル)だろうか。久保が19歳であるのに対し、岡崎は34歳で乾は32歳だ。こう言ってはなんだが、かなりのベテランだ。すでに日本代表を勇退した状態にあるアタッカー2人が、欧州リーグランキング1位のスペインで活躍する姿は、感激を誘う。

 しかも岡崎は、開幕して2試合連続スタメンフル出場だ。2試合で180分間フルにピッチに立っている。メンバー交代枠5人制で行われているにもかかわらず、センターフォワードが最後までピッチに立つ姿は、このご時世、かなり珍しい。というか貴重だ。監督からの信頼が厚い、欠かせない選手であることが一目瞭然となる事象である。点を決めたわけでもなければ、圧倒的な個人技、あるいは特筆に値するプレーを見せたわけではないが、ニュースとしての価値は高い。

 岡崎のこれまでの道のりを振り返ればなおさらだ。彼が久保と同じ19歳の頃、お世辞にも巧い選手には見えなかった。日本代表のユニフォームを着る姿も、欧州でプレーする姿もまったく想像できなかった。ブンデスリーガ、プレミアで活躍した後、スペインの2部にやってきたわけだが、その翌シーズン1部に昇格し、スタメン出場を続けるとは……。これまた完全に想像の域を超えている。いまだ失速感ゼロ。ここまで、いい意味でこちらの予想を裏切る選手も珍しい。