現在、J1で最もチームに決定機をもたらしている選手といえば、誰を想像するだろうか。ヴィッセル神戸のMFアンドレス・イニエスタ、川崎フロンターレのMF大島僚太、ガンバ大阪のFW宇佐美貴史など、おそらく熱心にチェックしているチームによってその回答は変わってくることだろう。

しかし、そんな名手たちが集うJ1の舞台で、最も多くのビッグチャンスクリエイト数を叩き出しているのは前述したような選手たちではない。このスタッツで現在トップに立っているのは柏レイソルに所属するFW江坂任なのだ。

今季の柏ではここまで圧巻のリーグ戦16ゴールを荒稼ぎしているケニア代表FWマイケル・オルンガの活躍が目立っているが、彼の相棒役を務める江坂の活躍も見逃せない。左右両足で遜色ないキック精度を誇る彼から供給される魔法のようなパスは一級品だ。オルンガが得点を量産できるのも、彼の働きによるところが大きいと言えるだろう。

そんな江坂が記録しているビッグチャンスクリエイト数は「9」。出場17試合でこの数字ということは、2試合に1度以上のペースで彼は柏が得点するのが合理的だったシーンを創出しているということになる。なお、同スタッツで2位につける清水エスパルスのMF西澤健太と、名古屋グランパスのFWマテウスはそれぞれ「7」。一人の選手が90分間の中でボールに触れられるシーンは限られてくるだけに、この「2」という差は近そうで遠い数字と言えるかもしれない。

さらに、江坂はキーパス数でもここまで43本と、リーグ屈指の数字を残している。こちらはG大阪の宇佐美が記録している45本に次いで2番目に多い数字だ。上記のビッグチャンスクリエイト数と比較しても、江坂がゴール前でどれほど決定的な仕事をしているかは見て取れるだろう。グラウンダー、浮き玉、そして時にはトリッキーなパスなど、実に多彩な手段で最前線にボールを届けている江坂。ピッチ上での印象そのままに、彼は素晴らしいスタッツを叩き出している。

巧みな足技で相手のプレスを華麗に回避し、使えるスペースを常に有効活用する江坂。まさに10番が似合う選手で、この調子を継続できるのならばいずれは日本代表入りも見えてくることだろう。柏の攻撃を牽引する“知的な司令塔”。これからも江坂が相手陣内で繰り出す巧みなラストパスからは目が離せない。