男児偏重主義が根強く残るインド北部ウッタル・プラデーシュ州で今月19日、5人の娘を持つ男が妊娠中の妻のお腹を切り裂いて逮捕された。男の常軌を逸した犯行を『NDTV』などが伝えている。

インド北部ウッタル・プラデーシュ州で19日夜、パナラル(Pannalal)という名の男が、妊娠中の妻(35)のお腹をナイフで切り裂くという事件が発生した。

家族が異常に気付き、女性は同州バレーリー(Bareilly)の病院に搬送されたが重傷で、現在も入院中だ。また胎児の安否や性別などについては、一切公表されていない。

地元警察のプラヴィン・シン・チョーハン巡査長(Pravin Singh Chauhan)は「犯行の動機については捜査中」と述べているが、男の家族は地元メディアに「パナラルは男児を望み、胎児の性別を知りたがっていた。妻のお腹が大きくなるのを待って切り裂いたのだろう。妻は妊娠6〜7か月だった」と明かしている。

なおインドの女性向けニュースサイト『SheThePeople.TV』は、ウッタル・プラデーシュ州で女性が犯罪に巻き込まれるケースがここ数年で急増していることを指摘している。インドの国家犯罪統計局(National Crime Records Bureau)が今年初めに公表したデータによると、同州での女性のレイプ被害は2時間に1件、子供への犯罪は90分に1件発生しているという。

しかしながら夫が妊婦の妻のお腹を切るという異常な犯罪には、「腹を切ってどうするつもりだったんだろう」「赤ちゃんが死んでしまう可能性は考えなかったのか」「病んでいる」「精神鑑定が必要なのでは?」「女性は次こそは男、と思って5人も産んだのだろう」「インドの暗い闇」「女性蔑視」といったコメントがあがっているようだ。

インドでは1994年に性別選択を禁止する法律が制定されているが、女児を違法に人工中絶したり育児放棄するケースが急増しており、背景には「男児は稼ぎ手となるが、女児は結婚の際の多額の持参金(ダウリー)の支払いなどから、家族にとっては負担でしかない」という男児偏重の風潮があるという。それを裏付けるかのように、インド北部ウッタラーカンド州の保健局が2019年に行った調査では、同州132の村で3か月間に誕生した赤ちゃん216人全員が男児だったことが明らかになっている。

科学雑誌『PLOS ONE』に発表された最近の調査では、ウッタル・プラデーシュ州では性別選択(性差別)により2017年から2030年に約200万人の女児が“消失する”と推定している。またインド全体では2017年から2030年に約680万人が、年平均で見ると2017年から2025年までに約46万9千人が、2026年から2030年には約51万9千人の女児が消失するという。

画像は『RT.com 2020年9月20日付「Indian father of 5 girls cuts open pregnant wife’s belly to see if she is having a son」((C)Rampur Police/ FILE PHOTO)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)