様々な観点からのスコアリングされる自動運転車対応指数

 自動運転車対応指数の世界ランキングで、日本は今年11位となった。昨年の10位から後退してしまった。

 この指数は、世界的な公認会計事務所であり、企業や国・自治体への各種コンサルテーション業務を行っているKPMGが独自の見解で取りまとめているものだ。

 同社が世界各地で展開する拠点が各国や各地域の状況を把握し、分野別でスコアリングし、その合計得点で年間ランキングを公表している。

 今年のランキングトップは、シンガポール。昨年2位から一歩前進した。今年の2位は昨年トップのオランダ。3位は昨年と変わらずノルウェー。以下、アメリカ、フィンランド、スウェーデン、韓国、UAB(アラブ首長国連邦)、デンマークと続き、11位が日本である。

 スコアリングされる分野は4つ。政策や法整備。テクノロジーとイノベーション。インフラ整備。そして、社会需要性だ。

 トップのシンガポールの場合、国の面積が狭いなか、自動運転に対して積極的な法整備を行っていることで、この分野が世界トップ。また、政府の広報活動や大学などとの連携も充実していることから、社会需要性でも世界トップである。

本当に自動運転が必要なのかは今後も議論する必要がある

 一方、日本は、政策・法整備が18位、テクノロジーとイノベーションが3位。インフラが6位。そして社会需要性が18位という厳しい評価で、総合11位の座に甘んじた。

 筆者は、日本を含めて世界各地で自動運転に関係する、産学官の関係者と定常的に意見交換をしている。また、国土交通省と経済産業省が主体で行う自動運転実証試験を長期間行っている福井県永平寺町において、自動運転を含めた交通行政の今後の在り方を議論する永平寺町MaaS会議の取りまとめ役をしている。

 そうした立場から、今回の評価について私的に評価をしてみたい。

 政策・法整備が18位という指摘には大きな疑問を感じる。

 内閣府が関係各省庁や民間企業、さらに大学など教育機関と連携する国家プロジェクト、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)によって、2010年代半ば以降、国内で自動運転を実証するための法整備が一気に進んだからだ。また、都道府県レベルでも、地域の運輸局や警察署が自動運転に対する現実的な理解を示すようになっている。

 テクノロジーとイノベーションに関しては、自動車メーカー各社の個別投資が拡充され、またSIPにおいて高精度三次元地図「ダイナミックマップ」が自動車専用道・全国約3万kmで整備されており、この分野世界3位という評価は妥当だろう。

 インフラについても、EVの充電設備拡充も進み、また路車間通信(V2I)で東京臨海地域の公道、また高速道路での合流での実証が継続されており、世界6位も妥当。

 そして社会需要性の18位については、私的にも評価が難しいところだ。技術があり、法整備が整っても「本当に必要なのか?」という議論は今後も、各地域で地道に進めていく必要があると思う。

 今回のランキング、あくまでも民間企業による独自調査とはいえ、これをきっかけに、自動運転の在り方について、一般ユーザーにも是非、関心を持って頂きたい。

 それは結果的に、皆さんの愛車を含めた「人とクルマ」、「クルマと社会」、そして「人と社会」との関係を考える良き機会なると思う。