自動車業界の世界的トレンドは「電動化」!

 自動車業界は100年に一度の大変革期といっているなかで、さらに2020年上半期には世界的に新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でさらなる混乱を来しました。いや、新型コロナウイルスの影響は過去形で表現することはできません、現在進行中の人類の課題です。いずれにせよ特別な事情に右往左往させられた半年となりました。本来であれば、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、そのタイミングに合わせて自動運転の公道デモンストレーションも行なわれていたでしょう。そんな未来を感じることができない上半期となってしまいました。

 というわけで、2020年上半期の自動車ニューストップ5を選ぼうと思って振り返ったのですが、記憶に残るニュースはどれもカテゴリーがバラバラで、順位を付けるのは難しいと感じたのも事実。そして整理してみたところ、うまい具合に月別に分かれていました。せっかくなのでトップ5+1として、上半期の月別トップニュースとして振り返ってみましょう。

1)トヨタのウーブン・シティ構想

 まずは1月。アメリカで開催されたCESでトヨタが発表したコネクティッド・シティ「Woven City」という話題が記憶に残るニュースです。ウーブン・シティと名付けられた実験都市が作られるのは、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本株式会社 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地。その約70.8万m2の範囲において新しい街をつくり、モビリティだけでなく、AIコンシェルジュが生活のすべてをサポートする新しい街づくりを進めるというわけです。

 この一件についてはトヨタがクルマを売るための実験ではなく、業態としてライフサポート企業に変身することを模索する内容といえ、自動車産業にとどまらない企業になろうとしているという点において注目のニュースと言えるでしょう。なお、ウーブン・シティについては、2021年初頭に着工する予定と発表されています。

2)イギリスのエンジン車販売禁止の発表

 自動車業界の世界的トレンドは「電動化」なのは言うまでもありません。気候変動への対策としてCO2排出量を減らすことが求められ、そのためには化石燃料の使用を減らすことが必要となります。とくに欧州では再生可能エネルギーの活用に力を入れていて、太陽光や風力によって発電した電気でクルマを動かすことで、ゼロエミッション化を進めるというのがトレンドになっています。そのため将来的にはエンジン車は消滅するといわれていますが、EUを脱退したイギリスがその流れを先取りする発表をしたのが2月の注目ニュース。

 なんと2035年以降、エンジン車の販売を禁止するという発表をしたのです。具体的に、どのような施策となるのか、まだ具体的に見えてきていない部分も多くありますが、自動車の環境対応というのは政策によって影響を受け、技術が進歩してきたという歴史があります。イギリス政府の判断がどのように影響するのか、また最終的にどんな落としどころに落ち着くのか不明な部分もありますが、エンジン車の未来はないと市場に感じさせるだけの大きなインパクトのある発表だったことには間違いありません。

3)新型コロナウイルスに起因する交通事故の増加

 中国・武漢を起点に新型コロナウイルスの話題が聞こえはじめたのは1月でしたが、日本で本格的に拡大したのは3月。小中学校が休校になり、企業のテレワークも始まりました。公共交通機関による移動を避けるというマインドも強まり、「マイカー回帰」といった言葉を見る機会も増えてきました。また、移動のために二輪の人気も高まっていきました。

 ただし、それはいい話ばかりではありません。急にリターンライダーが増えたせいなのか、二輪死亡事故が激増したのです。それは不慣れなライダーによる事故が増えたという面と、また医療機関のリソースが不足しているという状況が相まったゆえと言われました。じつは二輪だけでなく四輪でも乗車中の事故死者数は前年比で増えていたりにしました。とくに自動二輪(原付除く)の死亡者数は前年比136%と激増しました。逆に自転車乗車中の事故死亡者は減り、歩行者は横ばいでした。

 新型コロナウイルスの影響で交通事故の傾向に変化が生まれたことが明らかになったことは、新しい生活様式におけるモータリゼーションにおける課題となりました。

ドライブレコーダー標準装備の時代に突入!?

4)ホンダとGMのアライアンス強化

 自動車業界の再編につながるニュースとして注目だったのは4月に「GMとホンダが電気自動車の車台を共有する」と発表したことでしょう。この両社、ながらく燃料電池分野において協力してきましたので、電動カテゴリーにおけるアライアンスが一歩進んだといったくらいの認識を受けるかもしれませんが、車台共有をするということはテクノロジー面での共同開発とはフェイズが異なります。GMとホンダに兄弟モデルが存在するということになるからです。

 さらに9月になって、GMとホンダはアメリカ市場においてアライアンスを強化すると発表しています。その発表ではエンジン車においてもパワートレインとプラットフォームを共有することの検討を始めたとなっています。資本提携まで考えるのは時期尚早かもしれませんが、GMとホンダのグローバル販売台数を合計すると約1300万台と世界最大規模になります。業界再編のきっかけが、4月の発表にあったと考えると歴史に残るニュースといえるでしょう。

5)日本メーカーの決算はSUBARU以外すべてマイナス

 新型コロナウイルスの影響が大きく出たのは3月以降ですが、それでも自動車メーカー各社の決算に対して無視できないものなのは言うまでもありません。というわけで、5月に発表された自動車メーカー各社の決算発表は明暗クッキリでした。といいますか、日本の乗用車メーカーでいえばグローバル販売で前年比プラスとなったのは3.3%増のSUBARUだけで、他社はすべてマイナスとなっています。トヨタでさえマイナス0.3%でした。とくに厳しかったのは日産で、販売台数は前年比から10.6%減、当期利益は6712億円の赤字となってしまいました。

 ちなみに、厳しいといいながらトヨタは2兆761億円の当期利益を計上していました。すでに厳しい競争に晒されていた自動車メーカー各社ですが、新型コロナウイルスは生き残りをかける状況を加速させたと感じさせるものでした。

6)ハリアーの「実質ドライブレコーダー」機能搭載

 6月での気になったニュースは、ユーザーレベルでのトレンドを変えそうなものです。それは、実質的なドライブレコーダー機能を新型ハリアーの上級グレードが標準装備してきたことです。

 視界を確保するためのデジタルインナーミラー用のカメラに加えて、フロント用カメラを装着し、それらの映像をメモリカードに記録するという仕組みは、トヨタ自体は「前後方録画機能付きデジタルインナーミラー」と表現するにとどめて、ドライブレコーダー機能とは明記していません。たしかに音声は記録できないなどドライブレコーダーとしてみると不満もありますが、メーカーがこうした機能を標準装備してきたということはサードパーティーやアフターパーツ市場からすると戦々恐々。

 今後、自動運転につながる運転支援システムが充実していくなかで、カメラ系センサーの搭載も増えていくでしょうが、それらにレコーディング機能が備わるようになれば、ドライブレコーダーを後付けで買うという時代は遠からず終わってしまうかもしれません。

 というわけで、2020年上半期1月〜6月の気になったニュースを月ごとにピックアップして整理してみました。もはやアフターコロナで、コロナ以前には戻れないことは間違いなく、自動車業界の変化スピードはますます加速しています。すでに下半期にも大きな動きは見えていますが、自動車趣味を楽しむ環境はこれからどなっていくのでしょうか。