車やバイクで道路を走っていると、よく目に飛び込んでくるのがドライバーへの注意喚起の看板。表現は様々だが、たいていは「この先注意」「事故多発」といったストレートな文言になっている。

だが、北海道の霧立峠(苫前町〜幌加内町)に立てられた看板は一味違う。それがこちらだ。


リアル...(画像は神威バズ@red_bazさん提供)

「病院搬送まで 2時間」

...遠回しな表現だが、言いたいことはわかる。「ここで事故に遭ってもすぐに病院には行けない。だから気をつけろ」と注意喚起しているのだ。看板上部にある心電図らしきイラストも、妙に緊張感を漂わせる。

この看板は2020年9月17日、ツイッターユーザーの神威バズ(@red_baz)さんが、

「交通標語より説得力ある。安全運転しなきゃって思った。幌加内にて。 #北海道ツーリング」

とコメントを付けて投稿。18日夜時点2万件以上リツイートされるほど、話題になっている。

投稿に対し、他のユーザーからは、

「何だこの絶望感...」
「コレは効きますね」
「ここで事故ったら命の保証はないぞ!って感じがありありと感じられる看板。気が引き締まりますねぇ...」

といった声が寄せられている。事故ったらどうなるか...看板のおかげで容易に想像できるため、より安全運転を心がけるきっかけになるのかもしれない。

交通事故の多発をきっかけに...

Jタウンネットが投稿者の神威バズ(@red_baz)さんに話を聞いたところ、看板は20年9月3日、幌加内町の国道239号線上で発見。バイクツーリング中に見かけたといい、

「携帯の電波が圏外の所もあるようなルートなので、リアルに感じて安全運転をしなければと思いました」

と当時を振り返った。

このインパクトある看板は、どのような経緯で誕生したのか――。Jタウンネットは看板を考案したという、荒井建設(北海道旭川市)の大森伸樹さん(42)に設置当時の話を聞くことができた。

荒井建設から提供された資料によれば、看板を霧立峠に設置したのは19年8月。4月、6月、7月と3件立て続けに交通事故(死亡事故含む)が発生したことがきっかけだった。

事故当時、荒井建設は現場付近で工事を進めており、大森さんは現場の所長を務めていた。看板は霧立峠での事故多発を受け、警察署と協力して立てたという。

「警察署の人も悩んでて、じゃあ看板立てていいですかってことで立てました。一度デザインを見せたら、署長も喜んでくれました」(大森さん)

看板は異なるデザインのものを、霧立峠に5つ設置した。文言は大森さんが考え、デザインはデザイナーが担当したそうだ。

「人に興味を与えることができた」

ツイッターで注目を集めた「病院搬送まで 2時間」の看板だが、なぜこの文言にしたのか。大森さんはその理由を次のように話す。

「なんかいいのないかなと思って、病院までどのくらいかかるか聞いたら『2時間』とのことだったので。文言が『事故多発』だと慣れちゃってるかなと思って、2時間かかるかもよってことをお伝えしたかったです」

この辺りでの救助活動には救急車とドクターヘリを使う。場所によっては携帯が圏外になるという理由から、搬送までに時間要するとのことだった。

荒井建設はすでに付近での工事を終え、看板は他の地元企業が引き継いで管理している。大森さんは看板がツイッターで話題になったことについて、

「看板を立てたから事故が減っているかは実際分かりません。ですがツイッターであげるほど人に興味を与えることができたんだと思うと嬉しいです。『気が引き締まる』といった投稿へのコメントを見る限り、効果はあったのかなと思います」

と話した。