近年、婚活においてオタク的要素が男女ともに強みになってきているそうですが……(写真:akiyoko/iStock)

結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ筆者が、急激に変わっている日本の婚活事情について解説する本連載。今回は、かつては婚活においては「マイナス」と見られていたオタク的要素が近年は婚活男女の強みになってきていることについてです。男女とも趣味や生活を披露する場としてSNSを活用するのは当たり前ですが、婚活時においてはこれが思わぬ「トラブル」になることも……。

この数年で男女とも「オタク」が増加

今、婚活市場でオタクは”穴場”です。ゲーム好き同士、あるいはアニメ好き同士、結婚後も好きなことをしていられるので生活を相手に合わせて変える必要がなく、「お互い好きなことをしよう」と楽しく暮らせると人気なんです。


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ゲームにどっぷりハマっているある男性は、小学生のときに出合ったゲームに感動し、「自分は大人になったらこのゲーム会社に就職する」と決意して頑張り続けて、今、本当にそのゲーム会社で働いています。婚活して自分よりも年収の高い医療従事者の女性と出会い、彼女もゲームが好きということで、交際順調、とても仲良しカップルです。

かつてはゲームオタクやアニメオタクといえば男性が圧倒的に多かったのですが、今は女性のオタクも少しずつ増えてきました。

オタクとまでいかなくても「理解はできる」「許容できる」という人はかなり多い。相談所では、3年ほど前までは趣味の欄に「ゲーム」「アニメ」と書くとお見合いを躊躇する人がいることもわかっていたので書かせないようにしていましたが、今は堂々と「ゲーム」「アニメ」と書く人が増え、むしろ書いたほうがマッチングしやすくなりました。

デートでも、ゲームやアニメが好きな人同士だと会話が弾みます。しかし、ただそれだけではゲーム同好会になってしまって婚活になりません。

実際に「デートで秋葉原に行って1日ずっとゲームをしていた」というカップルがいました。お互い楽しく過ごしたようですが、やはり将来のことや結婚観については話さないと、先に進みません。こういうときに私たちのような結婚相談所が介在すればアドバイスができます。

お金の使いすぎはダメ。ゲームにハマりすぎて分不相応な金額を費やしているようなタイプは結婚生活が破綻します。自分の経済レベルをきちんとわかったうえで「2万円まで」などとお小遣いの範囲で楽しめるのであれば大いに結構です。時間も「1日1時間まで」などと互いに納得できる取り決めをするといいでしょう。

アイドルオタクは趣味の範疇であれば構わないのですが、現実とテレビの世界を混同してしまうのは困りもの。結構多いんです、「ジャニーズのようなイケメンと結婚したい」という女性。そういう女性は生身の男性は男性とは思えない。顔が陶器のようにツルンとしていて、スラッとしていて、中性的な男の子しか男性と認めない。

あるジャニーズファンの30代の女性は、もう5年以上も婚活をしているのですが一向に結婚に結び付きません。どんな男性に会っても「ハゲている」と言うんです。相手の髪型に好みがあるのはわかりますが、その女性の場合、誰に対しても「ハゲている」と言うのです。よくよく聞くと、ビジネスマンのキリッとした短髪で地肌が見えるのが嫌なのだそう。地肌くらい誰でも見えるでしょう……。

さらには「毛深い」ともよく言っています。男性アイドルは脱毛したり、ヒゲの剃り跡が見えないようにドーランを濃く塗ったりしているのですが、その基準からすると一般の男性がみんな毛深く見えるのは当然です。「全身脱毛してもらわないと嫌だ」とも言っています。

容姿さえよければ年収などその他の条件はなんでもいいのかというとそうではないので、婚活はかなり厳しい。初めの2年ほどは「脱ジャニーズしなさい」と何度も説教しましたが、まったく聞かないので諦めました。

ちなみに、アイドルオタクの男性は結婚相談所にお金を使いたくないのか、意外と少ない。少なくとも弊社の相談所には熱狂的に女性アイドルに入れあげている男性はいません。

デートにナチスの軍服を着てきた男性

ただし、趣味が「行きすぎて」交際相手に引かれるケースは少なくありません。

ある40代女性が50代男性とお見合いしたときのことです。男性は「東大大学院卒、一流企業勤務、年収800〜900万円、マンションあり」とかなりの好条件で女性は大喜び。「東大卒なんて会えることもないし、ましてや結婚もできるなんて思ってもみなかった。絶対、結婚する」とルンルンで真剣交際に入ろうと意志を固めました。

ただ1つ難点は、服装がイマイチ。デートのときは毎回、着古したユニクロのデニムとフリースを着てきて、身なりに気を遣っているようにはまったく見えないのだそうです。「きちんとした企業に勤めていてお金もあるはずなのになぜ?」と疑問に思い、普段どんな生活をしているのか気になって、フェイスブックで検索してみたそう。

すると、男性が軍服を着ている写真が出てきました。さらにはマンションのベランダから国旗を出している写真も。デートのときの会話の内容からは、なにか思想がかっているとかそういうことは全然わからなかったようです。ただ女性は「頭がいいから、会話が半分わからない」とは言ってましたが……。女性はびっくりして交際終了にしました。

デートでナチス・ドイツのシンボルである鉤十字が付いた軍服を着てきた30代公務員男性もいました。マニアなのかおしゃれのつもりなのかわかりませんが、コートも持っているそうです。映画かなにかを観てかぶれたのかもしれません。「そんなの着ていって好感を持たれるわけがない。今すぐ捨てて」とやめさせました。

趣味は個人の自由とはいえ、婚活と両立できる趣味とそうでない趣味があります。婚活を成功させたいのであれば、そこは考え直さざるをえません。

インスタで「盛りすぎ」は逆効果

お見合いするときに、人によっては相手のことをSNSで検索します。例えば「○○(地名)で老舗のうなぎ屋を経営」とプロフィールに書かれているとしたら、名前などをかけ合わせて調べればお店が特定できるでしょう。病院やクリニックを経営している人も、名字と住所から「○○区、内科、△△△」などと検索すれば出てくるので、経営規模を調べることができます。 公式ホームページが出てくる分には大いに結構です。

しかし、フェイスブックなど個人のSNSまで検索される可能性もあるので、婚活している人は気をつけたほうがいいですね。自分の趣味嗜好を披露する場として使われやすいSNSですが、必要以上の情報をあえて流す必要はありません。

とくに女性の場合は、インスタグラムで盛りすぎると「華やかすぎて嫌だ」と避けられる傾向にあります。とくにコロナ禍は節約している人のほうが好感を持たれやすい。実際、「こんな時期なのにルイ・ヴィトンを買っている」「結婚したら、ヴィトン何個買うんだろう?」と言われて振られた女性がいます。

実際にデートに行くときも、「ブランドものは持っていってはいけない」と事前に伝えていますし、オンラインお見合いをするときも、「後ろにブランドもののバッグなどが見えないか注意して」「『クローゼットを見せて』と言われることがあるので、ブランドものは隠して」とアドバイスしています。

逆に、「昨日通販で2980円から50%引きになっていたチュニックを買った、とSNSに書いていてかわいいなと思いました」という好感度がアップした女性もいました。

作る料理が豪華すぎて振られた人もいます。毎日毎日、鴨やラムを使った凝った料理の写真をアップしていた男性。「食材がすごすぎる」「毎日、高級食材で料理をしているの?」と、振られてしまいました。派手すぎる料理に相手女性がプレッシャーを感じて「結婚しても、私にはこんな料理は作れません」となってしまったのです。

SNSでは多くの人が自分をすてきに、派手に、リッチに見せようとしがちです。しかし、婚活においては庶民的で質素な素朴な感じのほうがウケがいい。料理好きであれば卵焼きでいいんです。卵焼きに大根おろしを添える。そういうシンプルな写真のほうが、「経済感覚がきちんとしているな」「家庭料理が上手だな」という印象を与えるようです。

婚活をSNSで赤裸々につづっちゃダメ

そうやって婚活の戦略としてSNSを利用する方法はありますが、書いていいことと書くとマズいことの区別ができていない人があまりに多いため、本音を言えば婚活中はSNS自体、お休みしたほうがいいと思っています。書いたらダメなことをしっかりわきまえておかないと、非常識な人間に見えてしまいます。

さみしさからSNSに過剰に書く人もいますし、自己顕示欲が強い人は余計なこと、鼻につくことを書きがちです。例えば昔の恋愛など、言わなくてもいいことまで書くから、検索されて出てきてしまう。相手が見る場合もあるし、相手の親や知り合いが見る場合もあり、損をすることのほうが多いのです。

SNSはあくまでバーチャルな世界。婚活で大事なのは、1対1で目の前にいる人に素の自分を見せること。それ以外は秘めごとにしたほうがいいと思いますね。