■ Apple「iPhone SE(第2世代)」レビュー
コスパ抜群のiPhone SE(第2世代)を、約5ヶ月使い込んで見えてきたこと

2020年09月18日
TEXT:山口真弘(ITライター)

iPhone SE(第2世代)の登場から、早5ヶ月が経とうとしています。iPhone 8のフォームファクタの流用ということで、初代iPhone SEのようなコンパクトなボディを求めるユーザーの期待とは少々違ったわけですが、5万円前後から入手できるコスパのよさもあり、スマホの販売ランキングでは長期にわたって上位を独占するなど高い人気を誇っています。

発売と同時にこの製品を購入した筆者も、約5ヶ月間使い込んだことで、いろいろと新しい部分が見えてきました。今回は、この秋にも登場が見込まれるiPhoneの最新モデル「iPhone 12」シリーズのお目見え前に、第2世代iPhone SEのよかった点と、そうでなかった点について、約5ヶ月使い込んだ現時点ならではのレビューをお届けします。


外見は従来のiPhone 6/7/8と同一で、下部にTouch IDを搭載しています


背面。カメラ部分はわずかに突出しています。ワイヤレス充電にも対応します

まず、全体的には非常に満足のいく1台である、ということは最初に述べておくべきでしょう。外観の新鮮さこそ皆無ですが、ハイエンドモデルであるiPhone 11 Proシリーズと同じA13 Bionicチップを搭載しているだけあって、動作速度についてはまったく問題ありません。筆者は日常メインで使う端末として、非常に重宝しています。

筆者はゲームをしないため、そうした用途にみられる高い負荷をかけた状態での評価はできないのですが、一般的な利用において速度が遅いと感じることはなく、ストレスは皆無です。パフォーマンス面を理由に上位モデルに買い替えるという選択肢は、しばらくの間はなさそうです。

その中でネックがあるとすれば、やはり画面サイズでしょう。4.7インチという画面サイズはコンパクトで、使い勝手に優れていますが、現行モデルの多くを占める縦長スマホに比べると、ウェブページなど上下にスクロールするページにおいて、一覧性が低いのは事実です。

また、画面サイズ以上に、その上下にあるホームボタンやインカメラを収めた黒帯の面積の広さは、全画面タイプのスマホと比べると、やぼったく感じてしまいます。特につい先日発売されたGoogleの「Pixel 4a」は、本製品と同等の価格帯ながら、極細ベゼルで画面が広いとあって、並べるとその違いを痛感させられます。他のモデルに目移りする直接の動機があるとすれば、おそらくこれではないでしょうか。


同じ価格帯の「Pixel 4a」は指紋認証が背面にあり、前面は画面で占められています


iPhone SEは指紋認証センサーやフロントカメラにより上下に黒い帯があります

一方で、生体認証に指紋認証(Touch ID)を採用しているのは、新型コロナウイルスの影響でマスクの着用を余儀なくされている昨今、非常に重宝するのですが、顔認証(Face ID)に対応していないため、マスクをしていない時は顔認証、マスクをしているときは指紋認証といった具合に、使い分けることができません。

シチュエーションによっては顔認証のほうが素早くロックを解除できることは言うまでもなく、顔認証と指紋認証に両対応のスマホを使うと、機能の不足を感じてしまいます。10月発売の新型iPad Airに搭載されるのと同じ、電源ボタン一体型の指紋センサーを搭載したiPhoneが今後登場し、顔認証もどちらも使えるとなれば、魅力的に感じるのは必須でしょう。

また147gという重量は、170〜180g台が当たり前のスマホの中では軽量で、軽さこそが命というユーザーにとっては非常に魅力的ですが、ここにきて143gの「Pixel 4a」など、ほかの選択肢も登場しています。iPhoneというシリーズに限定すれば本製品より軽い製品は現状ありませんが、今後どうなるかは予断を許さない状況です。


Touch IDはiPhone 8以降で採用されたバイブレーションが返ってくるタイプ


4型の初代iPhone SE(右)ほどボディサイズはコンパクトではありません

ところで筆者はiPhone 11 Proシリーズの大画面モデル「iPhone 11 Pro Max」も所有しており、主に電子書籍ユースなどに活用していますが、この製品と併用していると、iPhone SEで物足りなく感じるのはダントツで「カメラ」です。

iPhone SEに搭載されているのは、広角レンズのみ。iPhone 11 Proシリーズにある超広角レンズ/望遠レンズはなく、機能的にはどうしても見劣りします。事前にわかっていた点とはいえ、メインの1台として使い込もうとすると、思ったよりも影響は大きいと感じます。夜景が撮れるナイトモードに対応しないのも、ライバルであるPixel 4aには搭載されているだけに、見劣りするところです。

また、このiPhone 11 Pro Maxと同じ感覚で写真を撮っていると、iPhone SEは手ぶれが起こる確率が、かなり高いように感じられます。撮影後にわざわざ写りを確認をしなくてもまず失敗がないiPhone 11 Pro Maxに対し、本製品はその場で確認しないと、あとで手ブレに気づいてガッカリ、といったことが少なからずあります。これも今後、新しいモデルへの買い替えの動機になる可能性があります。


超広角、広角、望遠の3つのレンズを備えたiPhone 11 Pro Max(右)と異なり、本製品が備えるのは広角レンズのみ。またナイトモードにも非対応です

このほか、発売前の時点では分からなかった細かいポイントとして挙げておくべきなのは、アクセサリの対応状況でしょう。本製品はiPhone 8とほぼ同じボディでありながら、共通のアクセサリが利用できないことがあります。

なかでも、画面を保護するシートについては、画面の端のラウンドカットが微妙に異なっているためか、従来の保護シートを貼ると端が浮き、横からホコリが入り込んでくるという問題が発生します。アクセサリメーカーも、iPhone 6/7/8向けと、本製品向けとで、型番を変えているくらいです。

一方でケース類については、ほぼそのまま流用が可能です。過去に発売済みのiPhone 6/7/8用ケースの中から選び放題というのは、ユーザーにとっては間違いなくプラスです。このような、製品のシェアの高さをそのまま継承した特徴については、前述の「Pixel 4a」などは、どう逆立ちしてもかなう部分ではありません。


iPhone 8用の保護シートを本製品に貼ると、すぐに端から浮いてきてしまいます


最初からiPhone SE用に作られた保護シートであれば、そうした問題もありません

このように、単体での評価は文句なしに高いものの、ほぼ同じターゲット層に向けた「Pixel 4a」が8月に登場したことで、それ以前とは微妙に評価が変わりつつあるこの第2世代iPhone SEですが、こうした中で注目されるのは、今年の秋以降に登場すると言われる「iPhone 12」シリーズです。

この「iPhone 12」シリーズでは、かつての初代iPhone SEシリーズとほぼ同じボディサイズで、側面がラウンドカットされておらず握りやすい、狭額縁デザイン採用の5.4インチモデルが発表されるのではと言われています。現時点ではあくまで噂であり確定情報ではありませんが、初代iPhone SEと同等に片手で持てるデザインを待望するユーザーにとっては、非常に魅力的な一台になることは間違いありません。

もちろん、本製品との価格差は相応にあるものと考えられますが、もし現在、第2世代iPhone SEを購入を検討しているのであれば、こうした新製品の動向にも目を配らせておくとよいのかなと、個人的には思います。

製品名:iPhone SE(第2世代)
実売価格:44,800円~
発売元:Apple

[筆者プロフィール]
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn