「セレナe-POWER」は静か?うるさい?

 燃費や高い静粛性から人気の日産の電動パワートレイン「e-POWER」は、「ノート」や「セレナ」、「キックス」といったモデルに搭載されていますが、特筆してセレナe-POWERのエンジン音を気にするユーザーがいるようです。e-POWER搭載車にはどのような違いがあるのでしょうか。

セレナe-POWERのエンジン音はうるさい? その理由はなんなのでしょうか。

 セレナは1991年に発売されたミニバンです。2016年8月にフルモデルチェンジを果たし現行の5代目モデルとなりました。2018年3月には、電動パワートレイン「e-POWER」搭載モデルが追加され、直近の2020年7月には7686台を販売、ミニバンとしてはトヨタ「アルファード」に次ぐ販売台数を記録しており、いまだその人気が高いことがうかがえます。

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 そのセレナのエンジン音に関するして、実際にセレナe-POWERを所有するユーザーなどからは、エンジン音がうるさいことを気にする声があるといいます。

 セレナのエンジン音や静粛性について、日産の販売店スタッフは以下のように話しています。

「セレナを語るうえでe-POWERによる走りや静粛性はやはり外せません。ほとんどのお客さまがe-POWER搭載車を購入されます。

 セレナe-POWERの車内における静粛性については高い評価を承っています。静粛性を高めるため、車体のあらゆる箇所に吸音、遮音対策として、ロードノイズの侵入を防ぐため、ホイールハウスに遮音材を張るなどして対策をおこなっています。

 ただ、信号待ちや停車中などで突然エンジンが始動する際の音に関して、気にされる人は一定数おります」

 e-POWERをはじめとするハイブリッド車は、モーターで駆動する際に静粛性に定評があります。ハイブリッド車のエンジン音について、国産車のエンジン開発を担当するA氏は次のように話します。

「恐らくセレナのエンジン音が気になる要因として、意図しないタイミングでエンジンが始動するからではないでしょうか。

 基本的に、ハイブリッド車はモーターのみで駆動するときとエンジンで駆動するふたつのパターンがあります。

 ただ、ハイブリッド車の場合はモーターとエンジンの両方で駆動するためにエンジンの回転数(エンジン音)は加減速に比例しています。

 しかし、e-POWER搭載車の場合、エンジンは発電機、駆動はモーターでおこなうモデルのため、停車や低速時でもバッテリー残量が不足した場合には、それを補うべく充電するためにエンジンが始動します。

 そのため、運転手や同乗者が意図しないタイミングでエンジンが始動するので、余計にエンジン音が気になるのではないでしょうか。

 また、セレナの静粛性は高いと聞いています。そのため、エンジンの始動有無のギャップが大きいことから、ほかのe-POWER搭載車よりうるさく感じる可能性があると思います」

※ ※ ※

 対してキックスは、2020年6月に投入された新型モデルということもあり、静粛性がセレナやノートより向上しているほか、e-POWERのシステムをキックスに合わせて改良を実施したことで、エンジンフィーリングを運転手の感覚とズレの無いように制御しているといいます。

 キックスのe-POWERについて、開発担当者は次のように話します。

「キックスはノート、セレナに続く3車種目のe-POWERということもあり、かなり洗練されています。なかでも今回力を入れて改善したのが静粛性です。低速域でエンジンをかけないことにとことんこだわっています。

 ただし、中間加速においてはバッテリーのパワーもアップしたことで、加速フィールに合うようにエンジンの回転上昇を上げています。この静粛性と加速フィールの良さがキックス最大の魅力といえます」

 そのため、e-POWERを相対的にみるとセレナの意図しないタイミングでのエンジン始動が目立ってしまう形となってしまうのかもしれません。

エンジン音だけじゃない!? ヒュイーン音も気になる人がいる?

 エンジン音以外にもe-POWER搭載車では、別の音が気になるユーザーもいるといいます。

 前出の日産販売店スタッフは以下のようにも話しています。

「セレナの車内がうるさいと感じる人は、おそらくe-POWER特有のヒュイーンといったモーター音が気になるのではないでしょうか。あるいは発進の際に生じる音のことを仰っているのかもしれません。

 セレナe-POWERが発進する際、エンジンの回転数は大体2000rpmに達します。これにより走り出しがスムーズになるのですが、走行時より発進する時の音が気になるという人もいらっしゃいます」

セレナe-POWERに搭載される「マナーモード(左)」と「チャージモード(右)」

 エンジン音に関してはさまざまな意見があるものの、セレナには「マナーモード」と「チャージモード」というふたつのスイッチが設定されています。
 
 マナーモード時には、エンジンの始動を極力抑えて走行することができ、日産は「バッテリー電力だけで走行するので、早朝や深夜の住宅街など、静かに走行したいときに使用するモードです」と説明。

 一方のチャージモードは、強制的にエンジンを始動し、リチウムイオンバッテリーの充電をおこなうもので、日産は「マナーモードによる走行距離を長くしたいとき、あらかじめリチウムイオンバッテリーを充電するモードです」といいます。

 そのため、当初からほかのe-POWER搭載車よりもエンジン音を気にするユーザーに対した配慮が施されていたようです。

 このような細かな配慮もセレナが売れている要因のひとつといえます。