音量規制をクリアするために左右出しマフラーが採用される

 かつては大型モデルでしから見られなかった左右出しマフラーを、割合に小型のモデルでも見かけるようになった。最近の例でいえば、GRヤリスは左右出しマフラーとなっているし、スイフトスポーツは伝統的に左右出しとなっている。

 近頃はマフラーのテールエンドを隠すようにデザインするのもトレンドだが、そうしたケースでもバンパーから覗き込むとマフラーが左右にレイアウトされていることは珍しくない。

 その理由のひとつとして、いまどきの自動車は騒音規制が厳しくなっていることが挙げられる。

 排気音を抑えるためには消音装置であるサイレンサーの容量を確保したいが、必要なサイズを収める場所を確保するのも難しい。そこで左右に分割してみたり、またリヤエンドに大きなサイレンサーを置き、その左右からテールパイプを出してみたりといったデザインが必然となる。

 つまり、年々厳しくなる騒音性能を満たすだけのサイレンサー容量を確保した結果として左右出しマフラーが増えてきていると考えることができるのだ。

 こうした手法は、大排気量エンジンを持ちつつ、静粛性も求められる大型サルーンでは常套手段といえるものだった。そのため、左右出しマフラーというのは高級車のアイコン的な意味も持っている。

大口径マフラーは時代遅れの象徴となっていくと見られる

 結果として、左右出しマフラーは、サイレンサーの容量を稼ぎつつ、高級感も演出できる一石二鳥の手法となったことでCセグメント以下のモデルにも採用が多く見られるデザインになっていったといえる。

 ただし、冒頭でも記したようにマフラーの左右出しというのは、高級感だけでなくスポーツ性のアピールにもつながる手法だ。そこにはテールエンドが大きいほど排気を大量に吐き出す能力があるように見え、ハイパワーを期待させるという部分が大きい。

 大筋でいうと、マフラーカッターなどでスマートに処理した左右出しは高級に感じさせ、いかにも排気効率が良さそうな大口径をアピールするとスポーツ性を感じさせるといえる。

 いずれにしても、こうした背景から左右出しマフラーは、ベーシックモデルとは一線を画した上級感がある差別化アイテムとして認知されている。

 とはいえ、環境対応していることがスマートであり、ゼロエミッションに近いほど高級というマインドも市場には生まれている。それが前述したようなマフラーのテールエンドを隠したスタイリングにつながっている。

 電動化が進んでいく時代において、大口径マフラーをアピールするというのは内燃機関を感じさせるものであり、時代遅れの象徴となっていくことだろう。その意味ではGRヤリスという「うるさくてガソリン臭い」スポーツカーにふさわしいアイテムとして左右出しマフラーが認知されるようになっていくかもしれない。