欧州カップ戦(チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ)の直近5シーズンの成績に基づくランキング=UEFAクラブランキングによれば、ビジャレアルは25位だ。

 南野拓実が所属するリバプールが、マンチェスター・ユナイテッドと並び8位タイ。中島翔哉所属のポルトが19位なので、日本人がトップチームに所属するクラブでは、欧州で3番目にランクされる。

 そこで9割方、スタメン出場を飾ることができれば、そして南野、中島の出場時間が現状に止まるなら、久保建英は名実ともに日本人ナンバーワン選手になる。10月に再開予定とされているW杯予選で外せない選手になる。五輪チームではそれ以上の存在になるだろう。

 しかし五輪のサッカー競技は、本来、育成を目的にしたアンダーカテゴリー(U-23)の大会だ。それでは訴求力が弱いので、見栄えをよくしようと、オーバーエイジ枠を設けている。そこで金メダルを獲得したところで、世界的な評価は上がらない。U-19 W杯優勝の方が、遙かに重みのあるタイトルになる。

 日本サッカー協会が、なぜ強化に相当なエネルギーを費やすのか。理解できない僕は、これまで実際、久保を五輪に出すべきではないと、中田英寿や小野伸二などを引き合いに出しながら、ことあるごとに述べてきた。その時期、将来性豊かな若手選手が、所属チームを長期、離れるリスクは大きいのだ。欧州ランク25位のチームとなるとなおさらだ。

 代表チームでも、ミャンマー、キルギス、モンゴル、タジキスタンと争うW杯アジア2次予選レベルでは無理に招集することはないと述べてきた。マジョルカで今季前半、久保が出場機会に恵まれなかったこと、出場してもチームメイトからパスがなかなか回ってこなかったことと、森保ジャパン招集は密接な関係にある。つい忘れそうな話な話だが、大事な話なのでしつこくここに記したい。同じ過ちを繰り返すなと言いたいが、繰り返しそうで怖い。森保監督に問われているのは国際的な感覚に基づく常識だ。ビジャレアルの久保が、贔屓の引き倒しにならないことを祈りたい。

 五輪に話を戻せば、来年開催される可能性がどれほどあるか定かではないが、もし開催されることになった場合でも、規模は縮小される方向で検討されているという。実施される競技数が削減される可能性もあるそうだ。

 サッカーは削減の対象に値する競技だと思う。最優先されるべきは、五輪がまさに世界ナンバーワン決定戦の意味を持つ競技だ。過去2大会(ロンドン、リオデジャネイロ)、実施されていない野球は、サッカー以上かもしれない。4大メジャーなるビッグ大会が存在するテニス、ゴルフもしかり。五輪の金に水泳、陸上、体操……のような重みはない。

 その世界で、いま一番優先されなければならないものは何か。久保を五輪チームに招集することは、どれほど重要か。日本サッカーにとってプラスになることなのか……と、同じ目線で物事を見る必要性を感じる。

 大局的に見てどうなのか。バランス的にどうなのか。常識的にどうなのか。世界的にどうなのか。

 テレビをつけると、甲子園で行われている高校野球交流戦が目に飛び込んできた。コロナの感染拡大を受けて中止になった春の甲子園=選抜大会に出場が決まっていた32校を夏の甲子園に招き、各校1試合を戦うというものだが、気がつけば、その模様に目を凝らしている自分がいた。

 見始めると止まらなくなるのが高校野球だ。先日も東京ローカルのNHKが中継していた東京大会の決勝戦を粗方見てしまった。しかし、高校野球をテレビ観戦しながら、毎度湧いてくる思いは、なぜ「野球だけなのか」という疑問だ。高校には様々な部活動がある。運動部だけでも各校10ぐらいは普通にあるはずだ。