サガン鳥栖の竹原稔代表取締役社長が12日、緊急記者会見を開いた。チーム内の選手・スタッフ合計10人から新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたのを受け、当面の間は全体トレーニングなどの活動を行わない方針を明かした。15日のJ1第10節ガンバ大阪戦をはじめ、公式戦への影響は避けられない情勢だ。

 鳥栖では今月10日、発熱などの症状がみられた金明輝監督の感染が判明し、11日に追加のPCR検査をチーム内の89人に対して実施。結果が12日に判明し、うち80人が陰性だったが、選手6人とスタッフ3人が「陽性疑い」で再検査へ。そのうち選手・スタッフ1人ずつは11日に発熱していたため、12日に抗原検査を受けて陽性が確認された。これを受けて同日午後、ルヴァン杯広島戦の中止が決定。夜には再検査の結果が分かり、9人全員から陽性判定が出た。発熱した2人以外は全員が無症状だった。

 竹原社長は会見の場で、佐賀県からクラスターとしての指定を受けたことを明かし、「クラスターを起こしたという認識はある」と説明。保健所から14日間をめどとした活動自粛を求められているといい、「感染がこれ以上広がらない」というお墨付きが出るまでは「グラウンドを開放する予定はない」と述べ、練習場を使ってのトレーニングを行わない方針を示した。

 もっとも自粛期間中にも過密日程が続いており、15日にJ1第10節G大阪戦、19日に第11節仙台戦、23日にJ1第12節札幌戦を控えている。竹原社長は試合開催の可否について「Jリーグが対応していく案件だと思っている」とリーグ側に一任。「濃厚接触者の洗い出しを行政とともに進めていきたい」と述べ、まずは感染拡大の経緯究明に全力を注いでいく構えを見せた。

◆クラブの感染防止対策は?

 竹原社長はクラブ内の感染防止策に関して「不備という言い方が正しいかはわからないが、近距離でいるとき、ご飯を食べた後に少しマスクを外していたりといったことが、少なからず起きることがあったとは認識している」と説明。一方で、金監督が体調面で「微妙な違和感」(クラブ発表)を抱えたまま8日のルヴァン杯鹿島戦で指揮を取ったことについては「試合前日の中、微妙な体調変化を認識するのが難しい状況であったことをご理解いただきたい」と述べた。

 その上で感染対策の難しさを指摘。「結果から見れば起こるべきして起こってしまったというところがあるのかもしれないが、選手においてはクラブハウスと家以外は一切どこにも行っていないという者も実在する。監督もかなり厳格な行動を取っていた中での発症だった。フットボールファンに対して申し訳ない思いもあるが、コロナに対応する難しさもある。私たちのチームしか出していない現実もあるが、どこのチームに起きてもおかしくないのではないかということを思っている」と述べた。

 またJリーグのプロトコルで定められているロッカールームでのマスク着用については徹底して行っていたという。竹原社長は「厳格な濃厚接触者の洗い出しをしている。選手たちもマスクを外していた時間が長かったというわけではなく、ロッカーでも100%マスクを着用していた。またロッカーを3か所に分けている。しかしながらクラスターが起きてしまった。全力で情報開示をしながらJリーグ、行政と感染拡大を抑え込みたい」と強調した。

(取材・文 竹内達也)