コロナ禍で、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスの自販機での販売数量は減少傾向にある(記者撮影)

飲料業界の成長を支えてきた自動販売機が、コロナ禍で岐路を迎えている。在宅勤務の浸透や移動の自粛により、オフィスや交通機関の利用客が減少。日本最大のボトラーズであるコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(以下、コカ・コーラBJH)は、2020年1〜3月の自動販売機での販売数量が前年同期比で3%減少し、緊急事態宣言が出た4月以降はさらに大きな影響を受けた。

採算性の悪化などを理由に自販機事業の見直しに踏み切る企業もある中、自販機事業への投資を進める同社は、飲料事業の粗利益の約4割を自動販売機事業が稼ぐ。

コカ・コーラBJHは2018年、西日本豪雨で広島の工場が被災し、供給体制が逼迫。2019年には統合時ののれん619億円の減損損失を計上し、最終赤字に転落した。構造改革に乗り出したカリン・ドラガン社長は、コロナ後の飲料需要をどう見ているのか。本人を直撃した。

自販機は進化を遂げている

――飲料業界は、外出自粛などを受け3月以降の販売数量が大きく落ち込むなど、厳しい状況が続きました。

現在起きている損失の最も大きな原因は、自販機やコンビニエンスストアでの売り上げが減少していることだ。これは自販機やコンビニに根本的な原因があるのではなく、外出自粛やテレワークによって人々がオフィスや駅に行かなくなり、客足が遠のいたことが大きい。つまり、新型コロナの感染収束後には戻ってくるもので、売り上げの減少はあくまで一時的なものだ。

外出自粛の影響では、都市部と地方の売り上げに違いが出ていることが明らかになっている。例えばコンビニでの売り上げを見ると、大都市と地方を比べると地方の来客数はそこまで減っていない。これらの結果をどう分析し、コントロールしていくかが今後の課題だ。

――そもそも自販機の需要はコンビニの台頭などで、新型コロナの感染拡大前から売り上げの減少が続いています。自販機への投資には慎重な姿勢を示す競合もありますが、コカ・コーラBJHは自販機への積極投資を貫いています。

自販機には進化の余地がある。コンビニの利用者が増えるように、消費者は便利なものを求めている。自動販売機はテクノロジーの力で、年々進化を遂げている。購入方法も硬貨を入れるやり方から、スマートフォンの画面上で商品を選べたり、さまざまな決済方法を選択したりすることができる。自販機はコンビニよりも数が多く行き渡っているし、近年、コンビニで問題となっている24時間営業も、自販機であれば関係ない。

日本には約200万台の自販機があり、そのうち約70万台を弊社が占めている。市場のトップとして、新しい自販機の運用形態を見つけなければならないという重い責任がある。長期的に持続可能な自販機事業の運用方法を見つけるため、コスト削減に焦点を当てて取り組んでいく。


カリン・ドラガン/1966 年、ルーマニア生まれ。1992年ティミショアラ工科大学工学部卒業後、コカ・コーラレバンティス入社。2012年にコカ・コーラウエスト副社長、2013年にコカ・コーライーストジャパン社長を経て、2019年3月から現職(撮影:今井康一)

同時に、業界で協力可能なパートナーも探している。投資をせず、ここで踏みとどまることはない。自販機事業への投資こそがわれわれの成長する道だ。

――具体的に、他社と提携する話は進んでいるのでしょうか。

市場で起きていることに目を向け続け、現時点で可能なすべての機会を模索している。特に今は、飲料メーカーの多くが苦しい状況にある。互いにメリットが生まれる案件に関しては、つねに前向きに検討している。

投資のスピードは緩めない

――ドラガン社長は2020年を「変革の年」と位置づけ、さまざまな投資計画を発表していました。

一時的なコスト削減は行い、2024年までの中期計画の見直しも視野にあるが、投資に関してスピードを緩めるつもりはない。

今こそ未来のために投資をするべき時期だ。コロナの影響は永遠に続くわけではない。今は生産ラインに投資しており、このコロナ禍でも2018年に被災した広島工場の代わりとなる新工場を、同県内の跡地近くに立ち上げている。


コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

広島新工場では2ラインを新設し、自動化や最新技術の導入で省人化を実現できている。自動化による人手の削減はコロナとの共存下でも役に立っており、今後の新たな時代にもよく適することができるだろう。埼玉でも約140億円を投資し、国内最大の物流拠点となる自動倉庫を建設中だ。

非常に重要なチャネルである、自動販売機のオペレーションも見直している。具体的には、ここ数十年大きな変化がなかった自動販売機への商品供給方法を変えていく。IT技術を活用し、自販機毎の販売状況をデータ化することで、荷積みや補充作業を効率化している。近畿地方でパイロットテストを行ってきたが、このモデルを当初より前倒しし、2020年6月までにすべてのエリアに展開した。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「コロナ禍における商品の売り方」「日本における将来の飲料市場」などについても語っている。