日本全国津々浦々に存在する「顔出しパネル」。

看板に開いた穴に顔をハメれば、地元出身の歴史上の人物やご当地ならではのキャラクター、特産品など様々なものになりきることができる愉快な看板だ。

しかし、そんな楽しい存在にも、新型コロナウイルスが暗い影を落としている。

顔出しパネルは不特定多数の人が触れるもののため、感染拡大を防ぐために使用中止になり、撤去されたり隅に寄せられたりしている場合があるらしいのだ。

そんな憂き目にあっている顔出しパネルたちの中でも、特に注目を集めているのが伊豆急河津駅(静岡県賀茂郡河津町)のパネルだ。

河津といえば、川端康成の小説「伊豆の踊子」の舞台として有名。そのため、河津駅では踊り子と学生になりきれる顔出しパネルを設置していたのだが、現在はこんな姿に......。


なんだか不気味だ...(写真は後藤カッツェさんのツイートより、編集部でトリミング)

踊り子と学生、それぞれの顔の位置に貼られた白い紙。上の方に赤い字で「使用中止」とだけ書かれており、半分以上が余白になっている。

人が使わないように紙を貼っているだけなのだろうが、ちょうど人の顔の部分を隠す形になって、何とも言えず不気味だ。固定の紐のようなものが貼り紙の下から出ているのもちょっと怖い。

ツイッターユーザーの後藤カッツェ(@katze510)さんが2020年8月1日、この写真を投稿したところ、

「現代アートチックな」
「横尾忠則感ある」
「なんかSFを感じる」
「横溝正史の小説でこんな表紙あったな」

などと話題になった。

わかりやすく伝えたかっただけ

Jタウンネット編集部は6日、伊豆急行に河津駅の顔出しパネルについて詳細を聞いた。

運輸部運輸課の担当者によると、このパネルは駅北口の出口付近に置かれており、新型コロナウイルスに係る事態宣言が発出されたころから使用を中止しているという。

中止の理由はやはり、「多くの人が触るものなので」とのこと。

大きなものなので収納することができず、壁際に寄せ、「使用中止」の紙を貼ることで対応しているそう。

なぜ顔の部分に紙を貼ったかというと、「使用中止だということをわかりやすく伝えるため」だという。

ツイッターでパネルと貼り紙について、まるで作品のようだ、と面白がる声が多く寄せられていることを伝えると、

「びっくりです!
面白いです、私たちから見るとふつうの『使用禁止』なので。
お客様が一番すぐに気が付いてくれそうなところに貼っただけなんですけど、そういう見方をしてくださる方もいらっしゃるんですね」

と話した。