by YMS

コンパイラ最適化の第一人者として知られる女性計算機科学者のフランシス・E・アレン氏が、ちょうど自身の誕生日である2020年8月4日に亡くなったことを、IBMが発表しました。享年88歳でした。

Remembering Frances E. Allen | IBM Research Blog

https://www.ibm.com/blogs/research/2020/08/remembering-frances-allen/

アレン氏は1932年、ニューヨーク州ペルーの農場に生まれました。アレン氏はニューヨーク州立教師養成学校を卒業した後、1954年に数学の学士号を取得し、地元の学校で数学教師として働きました。その後、1956年にアレン氏はミシガン大学で計算機科学の修士号を取得しました。

1957年、アレン氏は奨学金返済のため、ニューヨーク州ポキプシーにあるIBM Researchにプログラマーとして入社。当時開発されたばかりのFORTRANをIBMの従業員に教える仕事についていたとのこと。IBM Researchには奨学金を返済するまで所属する予定だったそうですが、結果としてアレン氏は一生をIBMにささげることとなります。

アレン氏の業績には、コンパイラ最適化技術の基礎を築いたことが挙げられます。アレン氏は1957年からコンパイラの研究に携わり、1966年には「Program Optimization」を発表し、プログラム解析の基礎構築とコンパイラ最適化の体系化を示しました。これにより、アレン氏は高性能コンピューティングに大きく貢献したといえます。

IBMは「コンパイラ構成と最適化アルゴリズムのパイオニアとして、アレン氏はコンピューティングの世界に多大な貢献をしました。プロシージャ間分析と自動並列化に関する彼女の研究は、コンパイラ研究の最先端を進み続けています。また、IBM COBOLコンパイラ、IBM Parallel FORTRANなどにアレン氏の技術を導入することで、計算機科学を実践に移すことに成功しました」と評価しています。

さらにアレン氏は1950年代後半から1960年代初頭にかけて、アメリカ国家安全保証局(NSA)に納入されたシステム「IBM 7950」の開発に携わるデザイナーにも選ばれており、専用のプログラミング言語であるAlphaの設計と構築に関わっています。

そして、IBMのAdvanced Computing System(ACS)にも関わり、マシンや言語に依存しないコンパイラの最適化コンポーネントを設計・構築し、1972年に「(PDFファイル)A Catalog of Optimizing Transformations」という論文を著し、コンパイラ最適化変換を初めて体系化しました。なお、この論文は、IBMの同僚で「RISCアーキテクチャの父」とも呼ばれるジョン・コック氏との連名で発表されています。そして、コンパイラ最適化の体系化という功績が高く評価され、2006年にアレン氏は「計算機科学におけるノーベル賞」といわれるチューリング賞を女性として初めて受賞しました。なお、2020年初頭にIEEEは「フランシス・E・アレン賞」を創設し、2022年から授与を行うと発表しています。