ソウルの繁華街、明洞の一角


 韓国でもコロナ禍により消費者は財布の紐を締め続けている。

 7月30日に産業通産資源部(部は日本の省に当たる)が発表した2020年上半期、流通業の売上動向の資料によると、14.2%減少した。

 百貨店も全体的な売り上げでは、前年対比減少した。

 ところが、同期間に大手百貨店3社の高級ブランドの売上高は20〜30%ほど伸びていることが分かった。

 どうも消費も二極化が進んでいるようなのだ。

 韓国の百貨店では、高級ブランドとコラボしたポップアップショップを開くイベントが頻繁に開催されている。

 それらのイベントが高級ブランド品の購入にもつながっているようだ。

 それだけではない。オンラインショッピングに力を入れている百貨店が、さりげなく高級ブランド品のアピールも忘れず行っており、ネットでの販売も増えているという。

 少し前に、シャネルがコロナ禍とは関係なく数十パーセントの値上げを発表すると、オープンラン(店を開けるやいなや走って買い物をすること)をする人でごった返したという記事を書いたのを記憶している読者もいると思う。

(「販売急減と思いきや、韓国のシャネル店前に大行列」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60565)

 そうしたオープンランの中心は、いわゆるブランドマニアか、転売で利益を狙う「転売ヤー」なのだが、実は、高校生の約6割(54.6%)がブランド品を買ったことがあり、これからも買いたいという調査結果が最近出てきた。

 高級ブランド品購入者の予備軍と呼べるだろう。

 これまでにも韓国の高校生たちの間では、ナイキのスニーカーだったり、ノースフェイスのパーカーが流行ったりと、高校生にしては高価な商品の人気が高まったことがある。

 しかし、今回は高級ブランド、さらに高価な商品である。

 市場調査会社のユーロモニターによると、今年の高級ブランド市場の見通しは軒並みマイナスだ。

 対前年比で、米国・カナダはマイナス25%、ドイツがマイナス23%、中国もマイナス22%、フランス・イタリアがマイナス20%、英国・スペインがマイナス15%。

 日本はマイナス5%、韓国もマイナス1%。

 韓国市場もわずかながらマイナスと見ていたわけだが、現実には冒頭に述べたように20〜30%も伸びた。

 その原因として挙げられるのが、MZ世代のブランド消費だ。

 MZ世代とはミレニアル世代+1995年以降に生まれたZ世代である。

 こうした状況を踏まえ、百貨店各社も早速動き出している。MZ世代に向けたテナントのリニューアルを始めた。

 MZ世代が好みそうなブランドをもっと取り入れ、彼らが敬遠するブランドを排除しているのだ。

 また、MZ世代は、モバイルでショッピングにも慣れているので、各ブランドではオンラインショップをオープンしている。

 欧州の超高級ブランドであるエルメスやカルティエまでもが、公式オンラインショップをオープンした。

 シャネル、グッチなどに至っては、韓国内のECプラットフォーム(日本で言えば楽天のようなサイト)にも進出し始めた。

 こうしたオンライン施策が奏功して、コロナ禍の中でも巣ごもり消費が爆発的に増加しているのである。

 7月18日、最高級ブランドの一つであるエルメスが、韓国に公式オンラインブティックをオープンした。

 エルメスはこれまでプレミアムイメージを守るため、オンライン化を渋っていた。しかし、消費動向の変化に対応するためにはオンライン化が不可欠と判断したようだ。

 そして、いざオープンしてみると、1000万ウォン(約100万円)を超えるカバンも100万ウォン(約10万円)のスリッパも連日品切れ状態になるほど、バカ売れ状態だ。

 最初は30種類ほどのバッグが売り出されていたが、売れすぎたために現在では16種ほどに減っている。

 ブログなどを見ると、「とにかくクリック命で押しまくる」という報告が多くみられ、欲しいモノがショップに出るのを鵜の目鷹の目で狙っている人が多いようだ。

 最近、カルティエも韓国に公式オンラインショップをオープンした。

 世界的には16番目であり、アジアでは中国、日本、香港、シンガポール、オーストラリアに続き6番目である。

 ファッションブランドではない時計・ジュエリーブランドとしては、カルティエが初めてだ。

 韓国で展開するオンラインショップは、カルティエコリア支社が直接管理している。

 すべての商品は郵便局宅配で送料無料だが、500万ウォン以上だとセキュリティ専門配送業者を通じて安全にラッピングした商品を特別配送する。

 すべての商品は受け取り日基準14日以内に無料で返品・交換が可能だ。メッセージを添えられるロゴ入りカードを同封し、ギフトラッピングして配送される。

 また、オンライン注文が難しいと感じる人には、消費者センターを通じて電話での注文も可能だ。カルティエ関係者は、「店舗による対面販売と同等のサービスを行っている」と説明している。

 また、プラダも強化されたグローバルデジタル戦略によってサイトをリニューアルし、韓国に公式オンラインショップをオープンした。

 これまで超高級ブランドは、オンラインを嫌い、百貨店や免税品での販売にこだわってきた。

 偽物が多い市場だけに正品という信頼感を与えることでブランドへのロイヤリティを高めさせるというのが理由であった。

 しかし、コロナ禍によりアンタクト(非対面)トレンドの拡散とブランド品の消費者として浮上しているMZ世代のショッピング方法をこれ以上は無視できなくなっているともいえる。

 2011年にいち早く公式オンラインショップをオープンしたグッチや2018年にサービスを開始したシャネルは、今度は韓国のIT企業のプラットフォームにも進出して、さらに韓国消費者と親近感を増している。

 シャネルは最近、チャットアプリのカカオトークのギフトショップにシャネル専門館をオープンした。

 シャネルが韓国のオンラインショップに正式に入店したのは百貨店のオンラインモールを除くと初めてだ。

 グッチはネイバー(Naver)と手を組んでブランドストアを直接運営している。

 コスメだけのシャネルとは異なり、数百万ウォンに達するハンドバッグやシューズ、ウェアなど本格的な商品を見ることができる。

 また、今回のラグジュアリーブランドの売上増大には、もう一つ特徴がある。

 ブランド品購入では、女性より男性の方が伸び率が高いのだ。

 新世界百貨店によると、4月1日から13日まで4月の売上実績をみると、女性のブランド品消費は3.3%伸びた半面、男性の場合は11.1%上昇した。

 男性のブランド品の人気も30代を中心になっており、続いて20代男性の消費が多い。

 彼らは、結婚しない代わりに自分を着飾る文化活動を増やしている「男性For me族」である。

 そのため、先ほど百貨店のリニューアルでは、もっぱらグッチメンズやルイビトンメンズなどを充実させた。

 高級ブランド品に群がるこんな報道を見ていると、韓国はコロナ禍とは無縁なのかと思ってしまう。

 しかし、一方では飢え死にした脱北者のニュースもある。

 韓国社会の二極化が進んでいる状態を如実に示しているようで複雑な気持ちである。

筆者:アン・ヨンヒ