新型コロナで大きく変わったもののひとつが飛行機の機内清掃です。普段の清掃フタッフの業務はどのようなものなのでしょうか。また、新型コロナで加わった作業による影響も。ANAと現場スタッフ、それぞれに変化や工夫を聞きました。
平時1日平均15機の清掃作業を行う機内清掃スタッフ
新型コロナウイルスの影響で航空各社はこれまでより一層の衛生対策を講じています。その中で大きく変わったもののひとつが、機内清掃でしょう。
ANA機の機内清掃の様子。新型コロナの影響で国内線は夜間駐機時に毎日消毒されている(2020年6月、乗りものニュース編集部撮影)。
ANA(全日空)によると1機当たりの人員を特に定めているわけではないものの、国内線は1班8人程度、国際線は20人程度で清掃作業に当たることが多いといいます。そして平時であれば、飛行機のモデルによる差はあれど、国内線は約15分、国際線は約40分程度の時間があれば、機内を搭乗前のきれいな状態に戻せるのが一般的とのこと。
実際に2020年6月15日(月)に行われた報道公開では、1席あたりをものの数秒で元通りにきれいにするという「職人ワザ」が見られました。
ANA機の機内清掃も手掛ける東京オペレーションパートナーズのファム ティーさんによると、清掃スタッフは1日平均で15機もの清掃作業を実施するといいます。また、いわば「一人前」である作業責任者になるまでは、約3か月を要するとのことです。
ファム ティーさんが「限られた時間のなかで品質をいつも大事にして作業しています」という機内清掃作業は、ANAの場合、新型コロナの影響で国際線は便ごとに、国内線は夜間駐機時に毎日消毒を実施するようになりました。以前と比べて作業量や内容、所要時間はどのように変わったのでしょうか。
新型コロナで飛行機の機内清掃 どう変わった?
ANAグループによると、新型コロナの影響で機内清掃の時間は、これまでより1機あたり20分程度増加しているといいます。
また、ANAエアポートサービスの中嶋貢義さんによると、飛行機の客室は壁と座席のあいだにわずかな隙間があるなど、ロボット清掃では対応しづらい空間であることから「人の手」での作業が必要不可欠とも。時間内に効率よく、かつ丁寧に終了させることが求められる、とその現状を話します。
なお機内清掃における役割分担として、ANAエアポートサービスは清掃手順の変更点や人員配置などを管理する業務にあたり、実際の作業は先述の東京オペレーションパートナーズなどが行います。ANAエアポートサービスの中嶋さんは、人員を配置する際は効率良く作業が進められるよう作業エリアを割り振るなどしているといいます。
左が東京オペレーションパートナーズのファム ティーさん。右がANAエアポートサービスの中嶋貢義さん(画像:ANA)。
一方、実際に清掃作業を行うファム ティーさんは、新型コロナ後の作業や心境の変化について、「意識していることは普段と変わらない」としながらも「作業量が増えた分、よりスタッフ間のコミュニケーションを大切に作業しています。お客様に安心してご搭乗いただけるよう一席一席をしっかり消毒しています。快適なフライトを提供できるようにこれからもがんばります」と話します。
なお中嶋さんは「新型コロナで過去にないほど、機内清掃業務に注目いただいている」とし、「再びお客様にANAをご利用いただくためにも、私たちの業務を通してお客様に安全、安心を感じてもらえるよう消毒含め機内品質の向上に努めます」としています。
このほかANAでは、2020年6月から「ANA Care Promise」の名のもと、空港や機内での衛生対策について新たな方針を打ち出しています。機内消毒はその一環で、そのほか空港から機内までの場面それぞれで、利用者の不安を払拭すべく様々な取り組みが行われています。
【動画】衛生対策向上のANA機 空港や機内の様子は?