様々な体験取材でおなじみの“オバ記者“ことライター・野原広子(63才)が、気になる時事問題にゆるくツッコミを入れる! 今回のテーマは「自粛で長いこと家にいたであろう女性たちを見て思うこと」です。

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 これもコロナ禍のひとつかしら。県をまたいだ行き来ができるようになって2週目の週末のこと。幼友達のE子(63才)と入った銀座の老舗洋食店のカフェは、少しずつ間隔を空けてはいるものの、ほぼ満席。

「だから、それよ、それッ! ぎゃははは」「うそだぁぁぁぁ」「ほんとだってばぁぁ」

 すぐ隣の座席から耳をつんざくような大声が聞こえてきたの。4人グループは見たところ私たちと同じアラカンか。いや、最近では「同年代」と見込んでも3つも4つも年下だったりするから、50代後半かもしれない。いずれにしても数分ごとに「ぐぁあああ」。絶叫とも笑いともつかない声が聞こえてくるんだわ。

 見たところ、天上天下唯我独尊の大声は1人だけだけど、あまりの大音量にE子も眉をひそめ、会話どころじゃなくなった。で、何度目かの大波のとき、反射的に私の体がグイッと彼女たちに向き合っちゃった。

「…えっ、何?」と、向こうの誰かが言ったと同時に、戦闘開始。

 壁の一部が鏡になっていたから、背を向けていた2人も鏡越しに私をニラんできた。すわ、4対2の女の闘い?

「やめなよ」

 E子に止められて体を戻したものの、不愉快ったらない。大声の張本人は謝るどころか、その後ずっと、私をニラみっぱなし。そして、15分くらいしてようやく、「帰ろ、帰ろ」と席を立って帰って行った。

 これがドリンクバーのあるファミレスならスルーするよ。でも、ドリンクとケーキのセット2000円也の気取った店だよ。マスクを外しているぶん、みんな小声で話しているというのに、その空気をぶち壊していいと思ってる? もしこれでコロナに感染したら、あぁ、もう、どうしてくれよう。

「まあ、そう言うなって。あの大声を出した眉の太い人は、日頃、人と話していないのかもよ。きっと久しぶりに家から出て、はしゃいじゃったんだよ」

 なかなか怒りが収まらない私を、E子はそう言って慰めてくれた。そのときはそれで収まったけど、思えば最近、同世代の不作法が許せなくなることが多い。

 しばらく前にこんなことがあった。

 ある日の夕方、バスに乗ったときのこと。キチンとした着物姿の、白髪まじりの年配の女性(年の頃なら70才くらい)が乗り込んできて、最後部座席にいた私のすぐ横に座ったの。女性の着物は素人目から見ても、いい感じの着付け。植物のつるで作ったバッグも着物の柄にピッタリで、昨日今日、着物を着始めたんじゃない。着付け師か、茶道の師匠か。

 と、そのときよ。つるのバッグから携帯の着信音が聞こえ、慌ててそれを取り出した。

 で、「あ、いま、バスの中だから」と言うから、すぐに切ると思うじゃない。ところが、「うんうん、そう、そうなのよ。いま帰るところ」と言いつつ、切らない。「わかった。家に着いたら電話するけど、うん」とまだ切らない。「あはは、それで?」って、だんだん切る気配すらなくなってきた。

 バスの中は私と彼女のほかは、女子中学生が2人と勤め人らしき男女が4、5人。みんな“師匠”の声を否応なく聞かされているわけよね。と思ったら私、「19、20才じゃないんだからさぁ。いい加減にしてよッ」と、吸い込んだ息を吐いたと同時に、口に出して言っちゃった。

 そのとき、「あ、すみません」と言われれば、それで終わったのよ。でも、“師匠”が謝ったのは私にではなく、携帯で話していた相手に対して。それにしても、「ごめん、ごめん。怒られちゃったから、またね」はないって!

 思わず私は、「バスの中の通話はマナー違反ってこと、着物着ると忘れるのかしら」と、言わなくてもいいことをまた口に出してしまった。もちろん“師匠”はプイと横を向いたまま、終点で降りるまで窓の外を見っ放し。口を真一文字に結んだまま開かなかった。

「日本文化の象徴である着物を着ながら、そんな無様なことをしていいと思っているワケ? 高級カフェで飛沫を飛ばして雰囲気をぶち壊すのも許せないって」

 後日、ひと回り年下で介護職をしている女友達のS子相手に、そう怒りをぶちまけた。すると、「あはは。ああ、おかしい」と笑われたの。ムッとしてワケを聞くと、「だってどっちもどっちじゃん。年寄りって、“しまった”と思うと謝らないよ。あと、自分は正しいと意味づけて怒るのも年寄りだよ」だって。

 それだけじゃない。S子いわく、事実を自分の都合のいいようにネジ曲げて記憶するとか、問い詰められると話をはぐらかすとか…他人の立場は考えずに、自分の気持ちや都合だけ主張するのも年寄りの特徴なんだって。

 コロナの第2波は怖いけれど、コロナが明けたとき、たちの悪い年寄りが世の中にあふれ、自分もそうなっていたら…。そうならないために、若い人の話をよく聞き、わが身を振り返る真摯さを持ち続けたいと思うけど、できるかなぁ。

※女性セブン2020年7月23日号