2019年10月に蒲田でオープンした「かけラーメン まさ屋」。立ち食いそばのような低価格と手軽さが魅力の"かけラーメン"と、ラーメン店には珍しい"キャッシュレス"オンリーという料金システムが話題を呼び、早くも行列ができる人気店の仲間入りを果たしている。

オープン間もない頃に取材をさせてもらったのだが(現金払い不可、かけラーメンのみ - 革新的すぎるラーメン屋に行ってきた)、なんと蒲田店オープンからたった半年後の2020年4月には渋谷に、さらに7月には池袋に新しい「まさ屋」が開店したとのこと。

渋谷・宇田川町にオープンした「まさ屋 渋谷店」


コロナ禍、どの飲食店も苦しい今の時期。どうして多店舗展開ができたのだろうか? しかもたった半年で。渋谷店に足を運んで店長のひろきさんに話を聞いてみた。

○久しぶりの「かけラーメン」はやっぱり旨い

宇田川町の路地にある雑居ビルの2階に「まさ屋 渋谷店」はある。蒲田店も路地裏という立地だったがこちらもヒケを取らない隠れ家的な立地。お店に入ると、厨房には2人のスタッフが! 蒲田店を取材した際には、朝から晩までひろきさんがひとりでお店を切り盛りしていたことを考えると進化が著しい。 蒲田店に比べると店内も広々。大勢のお客さんに親しんでもらえそうな明るい内装の空間になっている。

真新しい看板。蒲田店と同じく、親しみやすい手書き文字も残っていて嬉しかった


黄色を基調とした明るい雰囲気の店内。厨房の中にはスタッフの方々の姿が!


まずは、取材の前に"かけラーメン"で腹ごしらえ。蒲田店同様、メニューは"かけラーメン"オンリーなのだが、定番の太麺「A麺」に加えて、渋谷店限定の「C麺」もオーダーできる。「C麺」は「A麺」に比べると細くて食べやすいのが特徴。確かに、ツルツルでコシのある麺がスルスルと喉を通っていく。渋谷という土地柄、若い女性のお客さんも多いそうだが、これなら女性でもスムーズに食べ進められそうだ。

かけラーメンは並が380円、大が480円と安定の低価格


キャッシュレス決済も、もちろん健在


久しぶりに食べた「かけラーメン」は、やっぱり旨い。相変わらず、チャーシューもメンマも入っていない(※トッピング注文は可能)、ほぼ"素ラーメン"なのだが、まさにシンプルイズベスト。とんこつ醤油の二郎風スープの旨味がダイレクトに舌を喜ばしてくれる。

久々に食べた「かけラーメン」はやっぱり旨い


細めのC麺は食べやすいので女性にもおすすめしたい


○コロナ禍、人気衰えない「かけラーメン」の秘密

久しぶりに再会した店長・ひろきさんは、人気店の仲間入りを果たしている今もなお、とても低姿勢で気さく。以前と違うのは、きびきびとスタッフたちに指示を出していることだ。以前はたったひとりで朝から晩までお店に立っていたが、なんと今ではアルバイトのスタッフが、30人近くもいるのだという! 驚きだ。

店長のひろきさんは、まだ20代半ばで超ヤング


「1月からアルバイトを雇い始めて、4月の渋谷、7月の池袋と新しい店舗をオープンするにあたってスタッフの人数を増やす必要があったので、今では大勢のスタッフたちが働いてくれています」

80年代後半のバブル時代ならわかるが、今はどの飲食店も先行き不安なコロナ禍。なぜ、半年という短期間で多店舗展開をすることができたのだろうか。

「去年、蒲田にお店を出した当初から、"いつか都心にもお店を出そう"ということをオーナーと決めていたんです。"かけラーメン"や"キャッシュレス"といったお店のノウハウは、フランチャイズも見越したうえであえてシンプルに設定していたものでしたし、実際に今こうしてお店を増やすのもスムーズに進めることができました」

2020年7月にオープンした3店舗目となる「まさ屋 池袋店」


どの飲食店も苦しんでいるコロナの影響だが、「まさ屋」では"あるサービス"が功を奏したのだという。

「今はどの飲食店もテイクアウトを始めていますが、もともと『まさ屋』では"お弁当"の通信販売にも力を入れていましたので、4・5月の自粛期間中は大勢のお客様が自宅で注文してくださり、とても助かりました。毎日お店でスタッフたちとひたすらスープづくりや仕込みに励んで過ごしましたね(笑)。正直、あんなにたくさん注文してもらえたことはなかったので、最初は戸惑いもあったのですが、そのおかげで今ではチェック体制や発送手配などのシステム面もしっかり整えることができました」

コロナによる自粛期間中は、通信販売の仕込みや発送に注力していたそう


ウェブサイトから通信販売で購入できる「お弁当」


また、"キャッシュレス"という決済システムも、まるでコロナ禍を見越していたかのよう。今ではお客んから喜ばれることも増えたのだという。

「キャッシュレスなら、お客様も僕らスタッフもお金に触れることなくラーメンを提供できますので、このご時世とあって衛生面で喜んでくださる方も多いですね」

以前、取材した際には「お客様に美味しいと言ってもらえるのが嬉しい。充実してます」と話していたが、今は心境に変化はあったのだろうか?

「今もまったく変わっていないです。充実してます。以前と違うところと言えば、今はスタッフがいますので責任感が増したことですね。だからこそ、スタッフたちのためにもお店をもっと良くしていきたい、という気持ちも強くなりました。飲食業は奥が深くて、経営の部分ではまだまだ至らない点もありますので、もっと自分の力を磨いて、より大勢の方にかけラーメンを食べてもらえるように頑張っていきたいですね」

以前取材した際は、たったひとりでお店を切り盛りしていたが、今は心強いスタッフたちとお店に立つ


わずかな期間でお店を3店舗に増やしたことに留まらず、今後もまだまだ企画を考えているとのこと。これからも、若い店主の快進撃は続いていきそうだ。

●Information

・蒲田店

東京都大田区西蒲田7-63-1

・渋谷店

渋谷区宇田川町11-1 松沼ビル2F