在宅勤務が一気に普及しましたが、慣れない働き方に戸惑う人も。自宅で生産性を落とさない働き方のヒントを紹介します(写真:Fast&Slow/PIXTA)

緊急事態宣言下で一気に普及した在宅勤務。これからの新常態として企業も積極的な取り組みを見せるが、慣れない働き方に戸惑う人も少なくない。第1回の「「在宅で仕事がはかどる」環境作り5つのコツ」に引き続き、自らも在宅勤務者であり、『在宅HACKS! 自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方』を上梓した著者が、自宅で生産性を落とさない働き方のヒントを紹介する。

在宅勤務が普及した今、「部下たちは在宅でしっかり仕事ができているだろうか」と心配する管理職も多いと思います。たしかに、自宅で気がゆるむ人もゼロではないでしょう。

しかし、実は在宅勤務は、怠けてしまいやすいと思われがちですが、意外にもオーバーワークになりやすいということをまず知っておいてください。これにはふたつ理由があります。

意外に難しい自己マネジメント

ひとつは、スキマ時間がないこと。オフィスでは移動や休憩など、自分で思っているよりも実は仕事をしていない時間があります。しかし在宅勤務ではそうしたスキマ時間がありません。つねにネットでつながっていることも、小さなスキマ時間を奪っていきます。


例えばオンライン会議を立て続けに入れてしまうと、トイレにも行かずに何時間も続けて仕事をしているなんて状況が、簡単に生まれます。営業職の知人は、「移動がないのは楽だけど、お客さんとの打ち合わせが連続してつらい」とこぼしていました。

もうひとつは、パーキンソンの第1法則です。これは、公務員の仕事を分析する中で発見された「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則ですが、そのまま在宅勤務にも当てはまります。自宅にいる気安さから、ついダラダラと集中力を欠いてしまい、結果的に残業が増えてしまう。通勤がなく、プライベートも含めた「与えられた時間」が長いがゆえに、その時間をすべて満たすまで仕事が膨張してしまうのです。

このように在宅勤務では、怠けてしまうにせよ、逆にオーバーワークになるにせよ、労働の生産性が低下する危険をはらんでいるのです。これを回避するコツを3つ紹介します。

1.毎朝、きちんと身支度をする

大切なことはオンオフの切り替えです。その第一歩として重要なことが身支度です。在宅勤務でも、毎朝男性であればひげを剃り、女性であれば軽くお化粧するなど、最低限の身支度はしましょう。そして、仕事が終わったらさっさと部屋着に着替えてリラックスする。そうすることにより、気分にメリハリをつけ、仕事とプライベートの区切りをつけるのです。

パジャマのまま仕事できるのが在宅勤務のいいところでもあります。しかしそれだと逆にオフの時間まで仕事に侵食され、ダラダラと長時間労働になってしまう危険性があります。それを避けるためにもオンとオフは分けたいところであり、そのためのトリガーが服装や身支度なのです。

休憩と運動の時間も入れることが重要

2.時間割をつくる

在宅勤務では時間割を作ることもおすすめします。学生の頃を思い出してください。長時間の勉強を毎日繰り返し行う学校では、曜日ごとに時間割が決まっていました。これはもちろん、先生のスケジュールの都合ということもありますが、生徒たちにとっても、毎日新鮮な気分で勉強ができる仕組みにもなっているのです。

在宅勤務でもこれに倣って時間割を作り、時間帯に合わせて、仕事の内容も調整するといいでしょう。例えば頭のスッキリしている午前中は、アウトプット中心の仕事。ちょっと疲れの出る午後は打ち合わせ。夕方は、頭を使わない作業など、時間割の組み方も工夫できます。

そして大事なことは、休憩と運動の時間も入れることです。私は、とくに休みを取らずに長時間労働になりがちな午後、リフレッシュするために午後3時にはしっかりとした休憩を取るようにしています。コンビニに行き、おやつを買って食べるという時間です。体調によっては、シエスタと呼ばれる長めのお昼休憩をとって、短い昼寝をしてもいいでしょう。

また運動不足になりやすい在宅勤務において、運動の時間を決めておくことも重要です。例えば仕事終わりの夕食前に任天堂のリングフィットアドベンチャーを楽しむというルーチンを作ると、オンオフの区切りにもなるでしょう。

3.仕事をする場所を変える

在宅勤務と呼ばれていても、ネットにつながったパソコンさえあれば仕事はできるのだから、ずっと家にいる必要もありません。例えばカフェや公園、時には旅行先で仕事をすることだって可能です。旅行しながら働くという新しい働き方はワーケーションと呼ばれ、世界的に広がっています。同じ所で仕事をし続けるより生産性が上がるのなら、適度に場所を変えることはぜひチャレンジすべきだと思います。

私の場合、午後4時からは外出して仕事をするというのがルーチンになっています。確実に仕事の効率が下がる夕方に、あえて場所を変えるのです。そうすると気分も変わり、生産性を落とさずに仕事ができます。

自宅の中でも場所は変えられます。書斎からリビング、それからベランダなど、ちょっとした移動で気分が変わります。キッチンのカウンターでスタンディングで仕事をする、なんてこともできます。

場所を変えることで環境も変わり、また自分の姿勢も変化することで、気分がリセットされるのです。

サボって時間制約をつくる

昼寝をしたり、公園で仕事をしたりすることは、従来の仕事観からすると「サボり」になりかねないものです。しかし、在宅勤務においては、自分で時間を管理し、最大限のパフォーマンスが出せる最適な工夫を試行錯誤していくことが求められます。仕事の時間を短く区切り、「与えられた時間」を短く制限することで、仕事の効率は上がり、同時にオーバーワークを避けることができます。

在宅勤務においては、うまくサボる人ほど、成果を上げるのです。