名作ドラマ『愛していると言ってくれ』再放送で、にわかに再燃している“トヨエツ現象”。ストイックな仕事ぶりに「気難し屋」「マスコミ嫌い」と煙たがられ、私生活では幾度もの愛憎劇を繰り返しながらも、世の女性たちを虜にし続けてきたミステリアス俳優の現在地──。

【写真】女性たちを虜にした、トヨエツの貴重な“丸坊主”姿!

トヨエツ現象が再燃! 魅力は「手」

 コロナ禍で4月スタート予定だった新作ドラマは軒並み収録ストップ&放送延期に。ぽっかり空いてしまったドラマ枠を埋めたのが、かつての名作ドラマの再放送だ。

 中でも反響を集めたのは、『愛していると言ってくれ』(TBS系)だろう。25年前に、最高視聴率28・1%を記録した“トヨエツ”こと豊川悦司(58)と常盤貴子が織りなす純愛ラブストーリー。

「豊川さん扮する青年画家の晃次は聴覚障害があって、聞くことも話すこともできません。彼のコミュニケーション方法は筆談と手話だけ。常盤さん演じるヒロインに自分の言葉で思いを語れないという切なさと苦しさ、すれ違うもどかしさ……。私を含め、日本中の女性が身悶えしながら見ていたドラマです(笑)」(テレビ誌編集者)

 この6月に“2020年特別版”としてリバイバル放送されるや、SNS上には、オールド・ファンはもとより、当時を知らない世代の女性たちからも、ため息があふれた。

《何度見てもキュンキュンする》《最終回泣ける》《トヨエツ、こんなにかっこよかったんだ》《母に勧められて『愛していると言ってくれ』見た。トヨエツ様かっこいい!》

 たしかに、当時のトヨエツ人気はすさまじかった。

「端正な顔立ちと身長190センチ近いスタイルのよさはもちろんなんですが、豊川さんの人気を決定づけたのは、なんといっても“手”。私の周りの女性たちは“手が大きくて指も長くてセクシー。あの手で手話をされるとたまらない”って(笑)。ドラマの放送後、手話の教本が書店から消えるほど爆売れ。全国の手話教室には入会の問い合わせが殺到したそうです」(制作会社関係者)

 主演映画を上映していた東京・新宿の映画館には“少しでもいい席で見たい”と連日長蛇の列が。小さな映画館にもかかわらず2か月間の入場者数は約6万人! その映画館の新記録を打ち立てた。

「もう“トヨエツ現象”なんて呼ばれていました。女性誌恒例の“抱かれたい男ランキング”では、あの木村拓哉を抑えて堂々の1位になって。業界内でも“キムタクよりもトヨエツ”と誰もが口をそろえていたのを覚えています」(同・制作会社関係者)

 人気を支えたのは女性たちだけではない。劇団から独立し、'89年に映像の世界へ単身飛び込むと、演技にかけるストイックなまでの姿勢と情熱が、業界人をも惹きつけた。

「『愛している〜』撮影中、“音のない世界”で生きる晃次を演じるため、実生活でも耳栓をして生活していたのは有名な話。件の手話もドラマ収録の2か月も前からプロの手話ニュースキャスターのもとに通って、ドラマでは覚えなくてもいい言葉や表現までも勉強したんです。撮影前には完全に自分のものにしていました」(テレビ局関係者)

 仕事を選ぶ際にも、お金は二の次。出演するかどうかは、俳優として“新しいチャレンジができるかどうか”だった。

「映画『釣りバカ日誌』に出たときは出番がたったワンシーンだけの小さな役だったのですが、“三國連太郎さんと芝居ができるなら”と、別の主演オファーを蹴ってまで出演したそう」(映画関係者)

 だが一方で、妥協しない姿勢を貫いたことで、周囲からは「気難し屋」「自分勝手」という声もあがった。『日本アカデミー賞』の授賞式では、先輩俳優から態度と礼儀に苦言を呈されたことも。

マスコミもビビる若かりしころ

「できあがった映画パンフレットの表紙写真を“おもしろくない”と変更させたりとか、撮影中に脚本を書き直させたり、なんていうこともたびたびね。まぁ、それだけ、どんな作品でもいっさい手を抜かない役者だっていうことでもあるんです。ただ、できあがった映画の宣伝に積極的じゃなかったのは困りましたけれど」(同・映画関係者)

 今でこそ、PRのために雑誌の取材やテレビ出演に応じることも珍しくないトヨエツだが、当時は大の“マスコミ嫌い”“インタビュー嫌い”として恐れられていた。

「若いころの彼は、宣伝マン泣かせで。主演映画でも、テレビに出たり雑誌の取材を受けたりしないんです。受けてくれても“同じことを語ることになるから”と、50件も舞い込んだ取材依頼の中の1社だけ受けるとか、全社合同の“囲み取材だけ”とかね」(同・映画関係者)

 当時、実際にトヨエツを取材したという貴重な経験を持つライターによると、

「豊川さん本人は、いたって気さくな人。普段は関西弁でカッコつけてもいないし、サンダルばきで取材スペースに来ることも。むしろ、サービス精神旺盛な人じゃないかなぁ。ただ話の端々から“役者は演技で客を呼ぶもの”というポリシーは感じましたね。それに“プライベートの質問はNG”という暗黙のルールはありましたけど(苦笑)」

 トヨエツが私生活を語らない理由のひとつには、数々の女性たちとの愛憎劇があったから、ともいわれている。

仕事にも女性にもウソがつけない男

「最初のお相手は映画で共演した女優の森口瑤子さん。ですが、翌年、'95年には14歳も年下の小島聖さんに乗り換えちゃって。彼女とは2年以上も同棲していた。ところが結婚直前、'97年の夏に破局すると、その年のクリスマスに別の女性と電撃結婚したんです」(スポーツ紙記者)

 1男1女をもうけ、平穏な家庭生活を送っていたと思われたのもつかの間、'04年には別居。そして新たな恋人の存在が発覚してしまうと'05年末、8年間の結婚生活に自らピリオドを打つ──。

「以来、11年間もその恋人女性と“事実婚”状態でしたが、'15年に娘さんが生まれると“男のケジメ”としてようやく再婚して。ある意味、常に自分に正直な人、ウソがつけない男なのかなぁ。仕事も女性も」(同・スポーツ紙記者)

 現在、トヨエツが暮らす神奈川県の湘南エリアの街を訪ねた。今では家族3人、すっかり街に溶け込んでいる。

「明け方、まだ暗いうちから海に入ってサーフィンしてたり、娘さんと一緒にコンビニに来たり、この間は駅前のラーメン屋にいたし。気さくで、道で会うと必ず会釈してくれますよ」(近所の住民)

 若い住民女性も言う。

「町内会の役員もやってくれるフツーのおじさん(笑)。ただ、ときどき近くのカフェで海を眺めながらひとりでコーヒーを飲んでることがあって。黙っていても、めちゃくちゃカッコいいんです。“やっぱり俳優だなぁ”って」

 スクリーンデビューから30年余、トヨエツは今も、私生活を語らない。だが穏やかな日々に見せる姿は、紆余曲折の末に彼が手に入れた幸せを、静かに物語っていた。