盗まれた人の多くは、朝、ない事に気づく

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

日本で盗難されたクルマがJ-Spec Auto Sports Inc.など海外の日本車専門店で販売されている例が続々と発覚している。

クルマを盗まれた人の多くが登録する自動車盗難情報局によると、これまで同サイトに盗難車として登録された1500台のうち、現在までに13台がJ-Spec Auto Sports Inc.のサイトで販売されていることが確実となっている。

日本で盗難されたクルマが海外の日本車専門店で販売されている例が続々と発覚している。    shutterstock

筆者のところにもAUTOCAR JAPANで記事(【クルマ盗難で大炎上】日本で盗まれた車体やパーツ、バラバラの状態に アメリカの日本車専門店で続々発見 防止策は)を書いたあと同じ体験をした方々10名以上から直接ご連絡をいただいた。皆さんが盗難された時の状況をこのように書いてくださっている。

「早朝、会社に行こうと駐車場に向かったのですが、自分のクルマが見当たりませんでした」

「一瞬思考停止になり、昨日どこに停めたっけ?など考えたりもしました。ですが、すぐに盗まれたと気づきました」

「その日は夜勤で会社の駐車場にクルマを停めていました。勤務が終わって駐車場に向かうと、あれ? クルマがない」

「間違って別の場所に停めたのか? クルマで会社まで来た? など瞬時に色んなことを考えました」

「朝、妻が起こしに来ました。『駐車場にクルマがない! ない! 昨日はあったよね?』という声でびっくりして起きました。昨夜のことを思い出そうとしました」

「会社に置いてきたのか? 飲み会はなかったよな。いや、合いかぎを持っている弟が乗って行った可能性もある? いや、弟が夜中に無断でそんなことするはずない。もしかして盗まれた?」

盗難されたかどうか、わからなくても

盗難されたことはだれしもすぐに認めたくないだろう。しかしその後の行動によって発見される確率を左右することもある。

盗難に気が付いたら一刻も早く警察と自動車盗難情報局に登録することをお勧めする。

自動車盗難局のウェブサイト    自動車盗難局

自動車盗難情報局とは、2016年にスタートした自動車盗難に関する専門のサイトで運営者の撹上(かくあげ)氏は自動車セキュリティシステムのプロで、メディアにもこれまで何度も登場している。

登録すれば瞬時にサイトに情報が公開される。その後、SNSでも拡散されるので、信頼できる目撃情報が多数寄せられて発見に至った例も少なくない。

警察より先にこちらに登録すべきだという体験者もいるほどだ。

ちなみに、盗難を経験した皆さんは口をそろえて「警察は頼りにならない」という。

R34を盗まれたブルマグさんは、盗難届だけではなく「告訴状」も出して受理させている。

なぜそこまでしたのか?

「全国の警察がそうだとは限りませんが、捜査捜索に掛かる時間的余裕と人的余裕の無さでまともに捜査が出来ないんだろうと実感しました」

「人気のない深夜の犯行が多く、遺留品等も少ないので犯人逮捕への手掛かりの少なさもあると思います」

「盗難届を出しただけでは捜査義務が無いことも警察の腰が重い原因の1つだと考えましたので、捜査義務のある告訴状を被告訴人不明として受理させた経緯があります」

税関の密輸ダイヤルに電話という手も

日本で盗難されたクルマが海外に密輸出される例も多数あることから、横浜税関では密輸ダイヤルなるものを設けている。

24時間対応で番号は、0120-461-961(しろい-くろい)。今回取材に応じてくれた方、十数名が全員この番号に連絡をしていた。

密輸情報提供サイトの例    財務省

こちらの番号で盗難を告げる場合は、
・盗難されたと思われる日時と場所
・車名やクルマの特徴
・車台番号(フレームナンバー、車体番号)やエンジンのシリアル番号等 個別の情報はできるだけ詳細に
・クルマのナンバー(車両番号)
等を伝える。

このうち最も重要なのは言うまでもなく車台番号である。自動車メーカーからの届け出を受けて、国土交通省が車両一台に1つ付与した個別の識別番号となるため、所有者や住所が変更されても変わることはない。

この車台番号が打刻されている場所はクルマによって異なるが、多くはボンネットを開けたエンジンルームの奥にある。

また、車検証にも記載されている。クルマが車検証ごと盗まれた場合は、以下の方法で調べることができる。

1 任意保険の証書を確認する。証書がなければ保険会社に確認

2 運輸支局で「車両番号」「所有者の身分証明書」で車台番号の情報が得られる。

盗難されないことが一番だが、発見された時の確認に重要な情報となるため車台番号、エンジン番号などを控えておくことをお勧めする。

ネットオークションや海外の日本車販売サイトを確認

これは盗まれたらすぐに、というわけではないが、盗まれてから2か月経った頃にチェックしてみてほしいことである。実際、この方法で今回も多くの人が自分の愛車のパーツを見つけている。

そもそも、自動車盗難はなぜ行われるのか? と言えば、盗まれたクルマや部品をお金に替えるためである。つまり、プロの窃盗団の仕業である。

日本で盗難されたクルマが海外でバラバラになった状態で販売されている例。    @AxRxPxUxS

車両本体では密輸がばれやすいため、解体して部品としてコンテナに載せて海外に出される。事情通によると、

「国内で販売される場合は盗まれてからだいたい2か月後くらいにネットオークションに出てきます」

「また、海外の場合はだいたい3か月で日本車専門店などのサイトで売りに出されますね。人気が高い部品はすぐに売れます」

「また、現場のスタッフはそれが盗品だと知らずに販売しているケースも多いのです」という。

とくに古い日本車は価値がわかる人にとっては非常に貴重な商品となる。なので、海外ではとくに専門店での販売に注目するべきだそう。イーベイなどのサイトで販売されていることもある。

最後に。盗難にすぐに気づいて自分のクルマが持ち去られるシーンに遭遇してもどうか落ち着いて110番して警察の到着を待ってほしい。

追いかけたくなる気持ちも十分にわかるが、盗難車を追いかけて危険な目に遭うこともある。

まずは自分の身の安全を確保して落ち着いた行動をとって欲しい。